"Tommy LiPuma had the best ears in the record industry" (Phil Upchurch)

彼が手掛けた音楽のジャンルはジャズ~ロック~ソウル~ボサノバと幅広い。ミュージシャンの音楽性を大きく変えることなく洗練された良質な音楽に仕上げるのが彼の作風。「おしゃれな音楽」と言われることもありますが、べたな高級感があるのではなく、例えば居心地のいいカフェとか着心地のいいシャツのようなカジュアルな感触、日々の生活が少しだけ高まるような音楽なのです。

音楽ファンの間では"Produced by Tommy LiPuma"とクレジットされていれば中身は保障されていると言われていました。さらにエンジニアがアル・シュミット、アレンジャーがニック・デカロだったら完璧とされていました。それだけ音楽ファンに信頼されていたのですね。

リピューマは流行に左右されないエヴァーグリーンでクオリティーの高い良質な音楽を半世紀に渡り僕らに届けてくれました。彼の作品は33回グラミー賞にノミネートされ、5回受賞しています。

ストーリー

トミー・リピューマは1936年オハイオ州クリーヴランドで生まれました。幼少の頃は病弱で、ベッドで聞いたラジオからジャズやR&Bなどの音楽と出会います。

 

10代になると地元のバンドでサックスを演奏するようになります。一方で父親の仕事を継ぐために理容師の勉強もしていました。バンドがツアーをする機会があり、その時に出合った様々な音楽が彼を音楽業界にはいるきっかけになったようです。

最初は地元でレコードのプロモーターを始めます。1961年、ロスアンゼルスに出てリバティレコードに入社、プロモーション業に従事後、ソングライターのデモテープ制作のプロデューサーになります。その時に後年名を馳せる事になるソングライター達に出会います。また後にリピューマにとって重要な人物となるアル・シュミットにも会っています。

1965年、A&Mレコード(後にカーペンターズを輩出)にスタッフ・プロデューサーとして雇われます。サンドパイパース、クリス・モンテス、クローディンヌ・ロンジェをプロデュース、ヒットさせています。当時ヒットこそしませんでしたが、現在ではソフトロックの名盤中の名盤と評価されているロジャー・ニコルスの作品もこの頃です。アレンジはクリーヴランド時代のバンドメイトであったニック・デカロに依頼しています。

1969年、時代の変化もありA&Mの制作スタイルに窮屈さを感じていたリピューマはブルー・サム・レコードを設立、自由な発想で音楽を制作します。ベン・シドラン、ジャズクルセイダース、デイブ・メイソン、フィル・アップチャーチ、ダン・ヒックスなど個性的なミュージシャン/バンドが所属していました。

リピューマはレコード会社に所属していながらフリーランスでも仕事をしていました。信頼のある彼ならでは事なのかもしれません。

1974年、ワーナー・ブラザーズに移籍。この時期に多くの名盤・ヒット作を作ります。ジャズ~ポップス~ソウル、ジャンルを繋いだ作品は音楽界に大きな影響を与えました。マイケル・フランクス、スタッフ、ビル・エヴァンス、ジョアン・ジルベルトなどを手掛けます。1976年のジョージ・ベンソンの「ブリージン」は大ヒット、リピューマは初のグラミーを受賞しました。

1978年、再びA&Mに戻り傘下のホライズンレーベルを担当します。シーウィンド、ニール・ラーセン、ドクター・ジョンなどをプロデュース。またYMOと世界を繋ぐ役割を果たし、アル・シュミットのリミックスを施し同レーベルよりリリースしました。

1979年、ワーナーブラザーズのジャズ部門の副社長に就任。ランディ・クロフォード、イエロージャケッツ、マイルス・デイヴィス、パティ・オースティン、アル・ジャロウ、アズテック・カメラ、エヴリシング・バット・ザ・ガールなど多数の作品をプロデュースします。

1990年、エレクトラ・レコードの副社長になり、ナタリー・コールの「アンフォゲッタブル」の内8曲をプロデュースします。これは彼の最も成功した作品になりました。

1994年から2011年にかけてはGRP/ヴァーヴ・レコードで活躍し、その後フリーランスになっています。ダイアナ・クラークに出会い、諸作をプロデュース、現代ジャズを代表するシンガー/ピアニストに育て上げました。5月にリリースされるダイアナの新作がリピューマの遺作になるようです。他にはポール・マッカトニー、ウィリー・ネルソンもプロデュースしています。

音楽以外では、20世紀のモダンアートのコレクターでありました。収集した作品はアメリカのギャラリーや美術館で展示されています。 また、2012年にはクリーヴランドに芸術や音楽を学ぶための施設"Tommy LiPuma Center for Creative Arts"が作られています。

レコード会社や立場が変わっても、生涯に渡り良質な音楽を届けてくれたリピューマ。彼の作品の数々はいつまでも愛され続けることでしょう。

改めて感謝と共にご冥福をお祈りします。


Tommy LiPuma 1936-2017

  • Tommy LiPumaの表記はトミー・リプーマ(またはルプーマ)が正しいようですが長年日本で使われてきた"リピューマ"を使用しています。
  • 作品リストには販売終了の物が含まれています。ご了承ください。
  • ここに挙げた作品以外にもリピューマ氏の作品があります。