今宵の出席者

チャーリー チャーリー:50代。最初に買ったLPはディープ・パープル『マシン・ヘッド』。その後なぜかプログレに走る。今は何でも聴いてる。最近は日本のインディポップかな(おっさんのくせに)。

東風平 東風平:40代。コレクターではないが、好きなアーティストが手掛けたジャケットならCDだけでなくLPも買ってしまう派。7インチも大好物。ゆえに万年B組 金欠先生。

オーヌキ:今宵の司会・進行役。20代。今年に入りスラッシュ・メタルに心酔中。レコードを買った事はおろか見た事もない世代。ちなみに初めて買ったCDはTHE BEATLESの赤盤。

先鋒戦:ジョン・レノン vs. アッシュ

――今回のテーマは「変り種レコード」。というわけで、お2人には、ジャケットや盤、インナースリーヴなど、パッケージのどこかが普通とは異なる珍しいレコードをいろいろとお持ちいただきました。それではさっそく、先攻のチャーリーさんからご披露いただけますか?

チャーリー チャーリー:それじゃあ僕は、ジョン・レノン『WALLS AND BRIDGES(邦題:心の壁、愛の橋)』から行こうかな。この作品の変り種ポイントは、ジャケットの横にくっ付いている短冊状の紙。これをジャケットの表裏にパタパタ重ねたり外したりすることで、ジョンの表情やイラストを変えられる仕組みになっている。



東風平 東風平:お~、PATTO『HOLD YOUR FIRE』と同じような感じですね。

チャーリー チャーリー:そうそう。ちなみに、このイラストはジョンが11歳の頃に描いたものなんだよ。上の方に「John Lennon June 1952 AGE 11」と書いてあるでしょ? それからこの写真だけど、パタパタで変わるジョンの表情は、どうやら当時の彼の心情を表わしているらしい。おどけているけど、オノ・ヨーコと別居した頃に作られたアルバムだからね。

――なるほど、実は意味深な仕掛けなんですね。では、続いて後攻の東風平さん、どうぞ。

東風平 東風平:僕の先鋒はASHのEP「Numbskull」です。ぶっちゃけ変り種ってほどでもないんですが、7インチなのにゲートフォールドってところがちょいと珍しいかなと。



チャーリー チャーリー:しかも真っ赤なカラー・ヴィニールで。

東風平 東風平:そうなんですよ。おまけに片面1曲ずつ収録の2枚組で、NIRVANA「Blew」とMUDHONEY「Who You Drivin' Now?」のカヴァーも入っている。グランジの影響を受けているバンドなので当たり前と言えば当たり前なのですが、例えばNIRVANAは『BLEACH』の1曲目を選ぶとか、にわかではない本物のファンらしいこだわりも窺われるなと。

――わかりました。では、判定。ジャカジャカジャカ~ジャン♪ 勝者、チャーリーさん!

チャーリー チャーリー:やった!(笑)

――ジョンのあんな表情はあまり見たことがなかったので、フツーにレアだなと思いました。

東風平 東風平:ま、天下のジョン・レノンには叶わんわな。

次鋒戦:ザ・ローリング・ストーンズ vs. サウンドガーデン

――では、続いて次鋒戦と参りましょう。先攻のチャーリーさん、お願いします。

チャーリー チャーリー:次はこれ! THE ROLLING STONES『STICKY FINGERS』!



東風平 東風平:出たっ! これはもう、決定版ですね。変り種ジャケットの代名詞。

チャーリー チャーリー:ズボンのジッパーが本物で、開けて出てくる内袋の方はちゃんとパンツ姿になっているという。(笑) さすがアンディ・ウォーホル。(笑) 「Brown Sugar」から始まる中身については・・・もう言うことありませんって感じだよね。(笑)

東風平 東風平:本当に本当に、名盤中の名盤ですよ。THE ROLLING STONES未体験の人が最初に手に取るべきレコード、という意味でもこれは最適だと思います。

チャーリー チャーリー:そうだよね。僕も彼らのレコードの中ではこれが一番好きかも。「Wild Horses」も「Bitch」も入っているし。ライヴで必ず演奏される曲がたくさん入っている。

――確かにそのとおりですね。・・・名盤すぎてもう「何も言えねえ」という感じになっちゃっていますが、後攻の東風平さん、めげずに次の作品、お願いします。

東風平 東風平:は、はい。で、では、僕からはSOUNDGARDENのEP「Outshined」を。



チャーリー チャーリー:ん? その外袋って透明なの?

東風平 東風平:そうなんですよ! ピクチャー盤で外袋が透明というのはよくあるんですが、この作品の場合は、外袋にバンドの名前と曲のタイトルが印刷されている。シールやステッカーを貼って処理するのではなく。そこがちょっとした変り種ポイントかな、なんて思いまして。ちなみに、EPの盤面に描かれている渦巻きみたいな不思議な図形は、この曲が収められている3rdアルバム『BADMOTORFINGER』のジャケットにあるのとほぼ同じものです。

――わかりました。それでは、判定。ジャカジャカジャカ~ジャン♪ 勝者、ブチャラティ!

東風平 東風平:おっ、『ジョジョの奇妙な冒険』第5部!(笑) ちょっと前からそれ言おうって決めてたろ? 即答しすぎだって。ちょっと被ってたぞ。(笑)

――いや、実際そうですけど、これはもう仕方ないでしょう。(笑)

中堅戦:アクア・フラジーレ vs. マカバー

――ではでは、中堅戦に参ります。例によって、先攻のチャーリーさんからお願いします。

チャーリー チャーリー:はい、次はイタリアのプログレです。ACQUA FRAGILEのデビュー・アルバム『ACQUA FRAGILE』。この作品の変り種ポイントは、ジャケットが折りたたみ式になっていて、開くと1枚の大きなポスターみたいになるところですね。



東風平 東風平:おお、ジャケット4面分だとさすがに大きいですね。サウンド的にはやはりヨーロッパ的というかユーロっぽいというか、メロディ/ハーモニーが綺麗で・・・。

チャーリー チャーリー:よく言われていることだけど、GENESISやGENTLE GIANTに通じるところが確かにある。歌い方もなんだかピーター・ガブリエルを意識している風だし。イギリスのバンドなんかと比べるとあまり重たい感じはしないんだけど、そこがまたイタリアのバンドっぽいというかさ。個人的に、例えばイギリスのプログレには哲学書とか小説みたいなイメージがあるんだけど、イタリアのバンドは・・・なんとなくメルヘンチックというか、そういった絵本とかおとぎ話みたいな感触があるんだよね。

東風平 東風平:そういう世界観を具体的なヴィジュアルとして大きく見せたかったから、こういう折りたたみ式のジャケットにしたんでしょうね。

チャーリー チャーリー:これって何年か前にCD化された際にもちゃんと再現されていたんだよ。愛を感じるよね。(笑) ちなみに、ここのヴォーカリストのヴェルナルド・ランゼッティが後にPFMに加入して、バンドは解散。で、僕はそのPFMを日本で観た、と。(笑)

――それはすごい! かなりの有効打と言っていいんじゃないでしょうか。素晴らしいエピソードです。それでは、対する後攻の東風平さん・・・って、なんなんですか、それ?

東風平 東風平:MACABRE「Drill Bit Lobotomy」ですけど、何か?



――もう勝手にプレーヤーに乗せて針落としちゃってますけど・・・うわっ、サウンドの方もこれまた・・・一体なんなんですか、これ!(笑)

東風平 東風平:ん? “マーダー(殺人)・メタル”ですけど、何か? 音楽はいま聴いていただいているとおり、こんな感じですが、この作品の変り種ポイントももう見たまんま、盤が丸いのでジャケットも丸型ってところです。中に入っている紙まで丸いんですよ。(笑)

――・・・よくわかりませんが、なんかすごいですね、これ。とりあえずインパクトだけは十分すぎるほどありました。というわけで、このラウンドの勝者は、東風平さん!

東風平 東風平:よっしゃ! ありがとう、MACABRE!

副将戦:ジョン・ケイル vs. ザ・クリムゾン・カース&ザ・フェスティヴァル・オブ・ザ・ディア

――かろうじて東風平さんの首がつながったところで、続いて副将戦と参りましょう。今回も先攻のチャーリーさんから、ご披露よろしくお願いします。

チャーリー チャーリー:そうだなあ・・・それじゃあ、これ行きますか。ジョン・ケイル『THE ACADEMY IN PERIL』。THE VELVET UNDERGROUNDでは基本的にベースを弾いていた人ですが、他にもヴィオラをやったり鍵盤をやったり、もちろんギターも弾くしというマルチ・プレイヤー。その彼がソロ名義で作った2枚目のアルバムがこれ。ジャケットを手掛けたのはもちろん、アンディ・ウォーホルです。



東風平 東風平:ジャケットの表面が窓枠みたいにくりぬかれていて中面が見えるという形式は、LED ZEPPELIN『PHYSICAL GRAFFITTI』なんかを思い出させますね。聴くところ、音楽の方もかなり不思議な感じですが。

チャーリー チャーリー:ほぼインストなんだよ。このアルバムで彼は、自身のクラシック音楽の素養を出そうとしていたらしい。ヴィオラを弾いたり、ピアノの独奏をやってみたり・・・あ、そうそう、なぜかロン・ウッドもこの作品にギターで参加しているんだよ。

東風平 東風平:へえ~・・・それにしても、曲調は全体的にかなり前衛な感じですね。

チャーリー チャーリー:そうそう。ジョン・ケイルって、こういうモードと、いわゆるシンガー・ソングライターのモードがあるんだよ。といっても、やっぱりTHE VELVET UNDERGROUND出身だけあって、そっちもかなり風変わりなんだけどね。他にもブライアン・イーノと一緒にやったり、ルー・リードと2人名義でやったり、映画音楽をたくさんやったりもしている。

――ジャケットのくりぬかれた枠のところに『Kodak』と書いてありますね。

東風平 東風平:これってフィルムのマウントを模してあるんでしょう?

チャーリー チャーリー:そうそう、ポジフィルムのね。スライドマウント。

――アートワークという言葉がありますが、これはまさしくアートと言うべき作品ですね。強力です。東風平さん、相手は強敵ですが、大丈夫でしょうか?

東風平 東風平:お、おう! それじゃあ僕は・・・これ! さっきは盤が丸型なのでジャケットも丸型というパターンでしたが、今度はその逆、ジャケットが四角形なので盤も四角形ってやつ。行きますよ・・・せ~の、ジャン♪



――お~っこれはこれは!(笑) 強いの来ましたね~。

チャーリー チャーリー:ぜんぜん盤に見えないんだけど。(笑)

東風平 東風平:しつこく7インチで攻めますよ~。THE CRIMSON CURSEとTHE FESTIVAL OF THE DEERのスプリットEP、アメリカ西海岸のアンダーグラウンド・ハードコア・バンドによる対決盤です。これはCDじゃあ絶対に出来ない形でしょう。

チャーリー チャーリー:トレイに入らないもんね。(笑) いや、ターンテーブルの上で回ってる様子がもうおかしい。(笑)



東風平 東風平:この作品、THE CRIMSON CURSEのメンバーが主宰している『Three One G.』というレーベルからリリースされたんですが、彼は他にもヘンテコな形や仕様のレコードをいろいろと出しているんですよ。もう完全に確信犯。(笑)

――これは正直・・・出落ち感がハンパない! というわけで、勝者、東風平さん!

東風平 東風平:よしよし、これでイーブンだ!

大将戦:ジェファーソン・エアプレイン vs. ブルータル・トゥルース

――さて、いよいよ大詰め、大将戦です。これまでの対戦成績は2勝2敗の五分と五分。それでは雌雄を決する最終戦、チャーリーさんはどのような攻めを見せるのでしょうか?

チャーリー チャーリー:最後はやっぱり、これかな。JEFFERSON AIRPLANE『LONG JOHN SILVER』です。これはね、ジャケットがペーパークラフトみたいになっていて、手順どおりに組み立てると葉巻箱になるんだよ。・・・と言いつつ、組み立てたことはないんだけどね。組み立てちゃったら元に戻らないんじゃないかと思って。



――あ~、よく見るとキリトリ線とか入っちゃってますもんね。

チャーリー チャーリー:そうなんだよ。ちなみに、葉巻が並んだ写真の内袋をどけると、その下にイケナい葉っぱが隠されているという仕掛けが・・・。



――あっ、本当だ! これっていわゆる、ヘンプってやつですか?

東風平 東風平:マリファナだね。サイケデリック・ロックとマリファナって、切っても切れないから。とはいえ、聴こえてくる音楽はそれほどサイケサイケした感じではないですね。

チャーリー チャーリー:そうそう、1972年のリリースだからね。フツーのロックというか・・・ただ、彼らの作風としてはわりとハードなんだよ。前作『BARK』から加わったパパ・ジョン・クリーチというヴァイオリニストを含む、バンド最多の7人編成で制作されているし。

 でも結局、オリジナルのJEFFERSON AIRPLANEとしてはこれが最後になっちゃったんだよね。この時のツアーの模様を収めるライヴ盤『THIRTY SECONDS OVER WINTERLAND』も後に出たけど、スタジオ作としてはこれで一旦、打ち止め。この後、バンドはJEFFERSON STARSHIPへと発展、ヨーマ・カウコネン(ギター/ヴォーカル)とジャック・キャサディ(ベース)の2人は既に動かしていたHOT TUNAを本格的にやり始めることになる、と。

東風平 東風平:そういう流れだったんですね。僕が洋楽に興味を持ち始めた頃にはもう、STARSHIPになっちゃってましたけど。

チャーリー チャーリー:そうだよね。STARSHIPはいかにも80年代的なサウンドだったけど、でもJEFFERSON STARSHIPの最初の頃は、確かに洗練されていたとはいえまだスピリチュアルな感じだった。70年代の真ん中頃まではね。

――なるほど。音楽も含めて、大将戦に相応しいなかなか強力な作品でしたね。さあ、それでは東風平さんにも期待しましょう。最後に相応しい強力な一手をお願いしますよ。

東風平 東風平:東風平チームの大将はこちら、BRUTAL TRUTH『NEED TO CONTROL』です! CDもLPも普通に1枚で出ていますが、このボックス・セットはなんと、5インチ、6インチ、7インチ、8インチ、9インチのアナログ5枚組! これはスゴいでしょ?


チャーリー チャーリー:お~、おもしろいね~。(笑)

東風平 東風平:中身の音楽の方もおもしろいんですよ。前作『EXTREME CONDITIONS DEMAND EXTREME RESPONSES』ではデス・メタル要素の強い堅牢なグラインドコアをやっていたんですが、続くこのアルバムでは、ノイズ/インダストリアル・ミュージックの影響を取り入れてさらに前衛的に進化している。このバンド、そういう懐の深さがとにかく尋常じゃないんです。PINK FLOYDとCELTIC FROSTとGERMSを1枚のレコードで同時にカヴァーしちゃえるセンスって、ちょっとありえないでしょう。

――ただ、彼らがやると、「あなたがここにいてほしい(原題:Wish You Were Here)」のカヴァーも最後はこんな風になっちゃうと。(笑)

東風平 東風平:そうそう。“だって、俺たちだよ? 最後までそのまんまカヴァーするわけないだろ?”って感じでね。(笑) 「Wish You Were Here」の後に「Now Go Away」ってサブタイトルをわざわざくっ付けちゃってるわけだし。(笑)

――なるほど! オチが付けられているわけですね。こうなると、う~ん、判定が難しいな・・・。わかりました。では、判定! この勝負、引き分けです!

東風平 東風平:きれいにまとまったね。(笑) それじゃあ、勝負は持ち越しってことで。

チャーリー チャーリー:そうだね、機会があればまた次回ってことにしときますか。(笑)


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