1974年Red
Larksクリムゾンの最後のアルバム「Red」のリリース直前にロバート・フリップは解散宣言をした。デヴィッド・クロスは脱退はすでに発表されていた。今度のアルバムはメル・コリンズ、マイク・マクドナルドが参加していて、一緒に新しいクリムゾンを続けるらしいなんて噂してたファン達は思いっきりショックだった。「なぜ今?」予想外だった。結局一度も来日しなかった。
そして、バンド消滅後、トリオになったクリムゾンのニューアルバムが届く。内容はご存知の通り、最後に相応しい素晴らしい作品。解散を知ってしまったからかどこか悲壮な感じも。Starlessの壮絶なエンディングの余韻の中で僕らはクリムゾンの終焉を感じたのだった。星も見えない漆黒の闇の中へ。
1975年 USA
クリムゾンのライブ盤が出るとアナウンスがあった。「へっ?」という感じだった。我々はStarlessで永遠のサヨナラを言ったのじゃなかっけ?それに解散後に出すなんてなんとなく企画物臭い。すでに僕らは「Starless and Bible Black」の元音源であるアムステルダムのライブをブート(スミマセン)で聞いていてライブの凄さを十分知っていた。
このアルバムは「Red」レコーディング直前の最後のアメリカツアーから録られている。うち3曲はデヴィッド・クロスのヴァイオリンとエレピがエディ・ジョブソンによって差し替えられている。フリップもひどい事するなと思ったけど、後々わかったことだけど感情的な理由より物理的な理由があったみたいだ。
レコーディングされた場所のクレジットはないがご当地インプロ(笑)「Asbury Park」が収録されていることから74年6月28日アズベリーパークだろうと予想できた。
その「Asbury Park」と「Easy Money」はなんとフェイドアウト。この先どうなってんのよ?と誰もが思ったことであろう。まぁ、アナログLPなので収録時間に制限もあったんだろうけど6曲ってなんとなく中途半端な感じが。かといって2枚組だとさらに企画物度がアップするように感じるのは僕だけだろうか。制作側は1枚物にしたかったんだろう。
しかし、やっぱり演奏はもの凄い。このテンションと緊張感。破壊力と構築力。この高い演奏レベルで彼らはまだ20代なのだ。
賛否両論ありつつもキング・クリムゾンの2枚目のライブアルバム、通算9枚目のアルバムはリリースされたのであった。
USA 1975
Side A- Larks' Tongues In Aspic Part II
- Lament
- Exiles
- Asbury Park
- Easy Money
- 21st Century Schizoid Man
2002年 30th Anniversary Edition
その後、クリムゾンは80年代に復活~解散、90年代に再び復活。その間に各アルバムはCD化及びリマスターされ何度もリイシューされているが、2枚のライブアルバム「Earthbound」「USA」は一向にCD化されないままだった。フリップは「USA」の出来にあまり満足していないようで、新たに楽曲を追加し「USA 2」を出すという話もあった。
2002年、30周年シリーズで「Earthbound」と共に遂にCD化された。しかし、すでに1973-74年のライブ音源から4枚組ボックスセット「The Great Deceiver」、先述のアムステルダム・ライブの正規盤「The Night Watch」がリリースされていたので、「USA」の存在意義があやふやなものになっている。「The Great Deceiver」には「Red」に収録されているインプロ「Providence」が演奏された74年6月30日のプロビデンス公演が完全収録されている。
「USA」の変更点は、冒頭の入場時間に会場で流れていたFripp&Enoの曲が独立した、フェイド・アウトしていた「Easy Money」の後半部分が収録された(が、完全ではなくやはりフェイド・アウト)、そして「Fracture」「Starless」の2曲が追加された。
ジョブソンのオーバーダブはそのまま採用されている。音響的には各楽器のバランス、エフェクトを調整してあり、LPでは取って付けたようなジョブソンのバイオリンがバンドに溶け込んでいる。「Easy Money」「21CSM」のジョン・ウエットンのボーカルのエフェクトは取り除かれているが、「21CSM」は新たにボーカルにディストーションをかけている。
録音場所はほとんどが74年6月28日のアズベリーパーク公演で「21CSM」だけプロビデンス公演と判明。つまり「The Great Deceiver>」に収録されている「21CSM」が元ネタというわけでこちらはデビッド・クロスの演奏が聞くことができる。ますます。「USA」の意義が薄らいでくるような気がする。
「Starless and Bible Black」の半分はライブ音源を加工したものだったことから、「USA」もただのライブアルバムと考えてはいけないのかもしれない。「Starless and Bible Black」より軸がライブ寄りになっているだけで本質は変わらないのかもしれない。
長い間廃盤だったので新しいファンにとっては待望のリイシューだったようである。
USA 2002
- Walk On... No Pussyfooting
- Larks' Tongues In Aspic Part II
- Lament
- Exiles
- Asbury Park
- Easy Money
- 21st Century Schizoid Man
- Fracture
- Starless
2013年 40th Anniversary Edition
40周年シリーズで「USA」も新ミックスでリイシュー。
サブタイトルが「Casino Arena, Asbury Park」となっている。プロビデンス音源の「21CSM」もアズベリーパークのものに差し代わり、全編アズベリーパーク音源になった。しかしコレクターシリーズでアズベリーパークのライブがすでにリリースされている。これはそれの新たなミックスということなのか。オバーダブされていたデビッド・クロスの演奏も復活している模様。曲順が当日の演奏順に並び替えられ、インプロ「Asbury Park」と「Easy Money」がついに完全収録された。
「Asbury Park」のフルバージョンを聞くと収束点が2ヶ所あることに気づく。フリップの「F!」の声と共に一気に緊張感を増したバンドは演奏を展開しつつ最初の収束点を目指す。フリップのギターが残り、やがて3人もそれぞれ音を出し始めるが混沌とした状態がつづく。カッティング・ギターが提示されるも3人は無視。やがてバンドがまとまって来るもすぐに次の収束点がやってくる。後半部分が冗長なのだ。オリジナルと2002ミックスでカットしていたのは正解だったかもしれない。「Easy Money」の後半のインプロパートは「Improv :」として別トラックに分けられた。
例によって楽器のバランスやエフェクトが細かく調整してある。全体的にオン気味だった音像はライブ感が増したようだ
やはりこのラインアップのライブは凄まじい。同じ曲でも同じ演奏は二つと無い。フリップは当時のインタビューでクリムゾンの音楽について「アレンジ20%、アドリブ80%」と答えている。とても象徴的な言葉だ。曲が完成に向かっているのか破壊にむかっているのか。物凄いエネルギーを放っているのは間違いない。
この驚異的なライブバンドをもう一度俯瞰し音源をまとめたいというフリップの気持ちはわかるような気がする。それが「The Road To Red」となってリリースされたのだ。
こんな激しい演奏をし次の演奏地に移動なんていう生活は相当なプレッシャーだろう。フリップの日記にもそれが現れていて御大もメンバーもなんだか機嫌が悪い。おまけにホテルはポンコツ。演奏になるとそんな疲れを忘れてしまうようで日記には「ギグを楽しんだ」と記されている。デビッド・クロスがこのサイクルに最初に耐えられなくなったのだった。
「修繕屋」として呼ばれたエディ・ジョブソンはスタジオでのオーバーダブの作業にもかかわらずこのセッションにとても感激しているとライナーに記されている。そして同じバイオリン奏者としてクロスに同情するとも。凶暴なトリオに繊細な楽器で渡り合うのはかなりヘビーなようだ。後にジョブソンはこの強力なリズムセクションの二人とUKを結成している。
解散後とはいえリアルタイムにリリースされ、素晴らしいライブパフォーマンスが記録された「USA」は9枚目のオリジナルアルバムであることには変わりはない。たとえ大量のアーカイブ音源がリリースされようとKing Crimsonの歴史に堂々と存在し続けているのだ。
キング:クリムゾンは80年代、90年代に復活し現在は休止中。だが、今年2014年9月には新たなクリムゾン復活が予定されている。フリップは僕たちにどんな音楽体験をさせてくれるのだろうか。
USA -Casino Arena, Asbury Park- 2013
[CD]- Walk On...No Pussyfooting
- Larks' Tongues In Aspic ( Part II )
- Lament
- Exiles
- Improv : Asbury Park
- Easy Money
- Improv
- Fracture
- Starless
- 21st Century Schizoid Man
LPCM Stereo (24bit / 96khz)
2013 mix
- Walk On...No Pussyfooting
- Larks' Tongues In Aspic ( Part II )
- Lament
- Exiles
- Improv : Asbury Park
- Easy Money
- Improv
- Fracture
- Starless
- 21st Century Schizoid Man
LPCM Stereo 2.0 (24bit / 48khz)
2005 mix
- Walk On,,,No Pussyfooting
- Larks' Tongues In Aspic ( Part II )
- Lament
- Exiles
- Improv : Asbury Park
- Easy Money
- Fracture
- Starless
- 21st Century Schizoid Man
LPCM Stereo 2.0 (24bit / 48khz)
USA : 30th Anniversary Remaster
- Walk On...No Pussyfooting
- Larks' Tongues In Aspic ( Part II )
- Lament
- Exiles
- Improv : Asbury Park
- Easy Money
- 21st Century Schizoid Man
- Fracture
- Starless
USA : Original UK Vinyl Transfer
- Larks' Tongues In Aspic ( Part II )
- Lament
- Exiles
- Asbury Park
- Easy Money
- 21st Century Schizoid Man
#音楽性の変遷云々と書いているがExilesとCadence & Cascadeのアコギは繋がるんじゃないかと筆者は思っている。