江夏の21球 山際淳司/著

1979年の日本シリーズ広島vs近鉄の第7戦で江夏豊が9回裏に投げた21球に的をしぼり、その1球ごとに刻々と変化する心理状況、投手と打者の駆け引き、監督と選手の意識の乖離等を丁寧に綴ったスポーツノンフィクションの大傑作。

こんな簡潔で完璧なタイトルありますか。この着眼点、まさに神は細部に宿る。野球は奥が深すぎます。

28年目のハーフタイム 金子達仁/著

1996年アトランタ五輪。28年ぶりの五輪出場を果たし、史上最強の呼び声高いブラジル代表にまさかの勝利をおさめ世界中を驚かせていたサッカー日本代表は、実は決して一枚岩の団結した集団ではなく、ほどなくして崩壊の足音がおとずれる運命にあるのだった…。

このとき五輪代表を率いていた監督こそ、誰あろう、22年後の2018年ロシアで躍進をとげた日本代表監督・西野朗その人であります。ドラマは続いていたのか。

電子版

知と熱 藤島大/著

第二次世界大戦から生還後、早稲田大学ラグビー部、そして日本代表を指揮し、飽くなき探究心に裏打ちされた独創的な創意工夫とありったけの熱情があれば世界と伍すことも可能だと、日本のみならず世界に証明してみせた戦後ラグビー界伝説の指導者・大西鐵之祐の生き様に迫ります。

「100の理屈を教えこんで、101番目に理屈じゃないと断言する」指導者ってスゴくないですか?それでも納得させちゃうカリスマの迫力と覚悟とはいかに。その答えは是非とも本書で。なお、著者・藤島大の流麗な筆致に魅せられるファンも多し。

甲子園が割れた日 松井秀喜5連続敬遠の真実 中村計/著

事件は1992年夏の甲子園、星稜vs明徳義塾戦で起こりました。高校レベルをはるかに超越した松井秀喜に対する5打席連続敬遠が生んだ、両校の選手・監督・関係者の様々な葛藤。

言われてみれば、松井の次を打つ5番打者の気持ちって当時は考えもしませんでした。明徳バッテリーをはじめ18歳の球児たち(とその指導者たち)の情動をここまで揺り動かす甲子園という舞台って一体何なんでしょうかね。

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか 増田俊也/著

戦前戦後で15年間無敗を誇り、ブラジル遠征ではあのエリオ・グレイシーにも勝利した伝説の柔道家・木村政彦が、プロレス転向後にむかえた力道山との国民的大一番で、なぜあんなにも無残な敗北を喫することになったのか。

タイトルとテーマからして読まずにはいられません。柔道時代とは違いビジネスに翻弄される格闘家の悲哀といっては浅薄すぎますが、言葉もないくらい人生の難しさを痛感します。

オシムの言葉 木村元彦/著

サッカー元日本代表監督・イビチャ・オシムの名言集と思いきや、さにあらず。

祖国ユーゴスラビア代表監督時代に経験した、自国の内戦と分裂による代表チームの国際舞台からの追放という屈辱は、オシム御大の思考に何をもたらしたのか。

そして悲劇は突然に。世界中から尊敬を集める名伯楽が、日本を愛し、日本人を信じて「日本サッカーの日本化」を邁進させていた矢先、病魔に倒れ無念の監督退任へ。

志半ばで指先から零れ落ちたワールドカップ。オシムさんが監督のままだったら今ごろ日本サッカーはどうなっていたんでしょうか。

争うは本意ならねど 木村元彦/著

サッカー日本代表にも名を連ね将来のエース候補ともいわれた、川崎フロンターレの我那覇和樹に突然襲い掛かったドーピング冤罪事件に迫った傑作ドキュメンタリー。『オシムの言葉』木村元彦著。

同じ経験をする選手を今後出さないためにスポーツ仲裁裁判所での争いに奮闘する我那覇選手とドクター、サポーター、地元沖縄の仲間たちの奮闘。そして巨悪として描かれている権力側としてのJリーグ。

名著『心を整える。』以来、殺到する帯の推薦文や宣伝などの依頼を一切断っていた日本代表元キャプテン・長谷部誠も思わずブログで紹介したほどの力作です。

1985年のクラッシュ・ギャルズ 柳澤健/著

かつて一世を風靡した女子プロレス界のアイドル、クラッシュ・ギャルズの実像とはいかに。

長与千種とライオネス飛鳥はいかにして「クラッシュ・ギャルズ」になるに至り、彼女たちに憧れをいだく少女たちを熱狂させたのか。壮絶な生い立ちから、狂騒の後に待ち受ける二人の歩み、女子プロレス界で生き残る苛烈さなど、読み進めていくうちに胸に迫る重たいものを感じずにはいられませんでした。

電子版

弱くても勝てます 開成高校野球部のセオリー 高橋秀実/著

東大合格者No.1の開成高校が、平成17年夏の甲子園・東東京予選でベスト16に進んだ快挙の裏にはどんな秘策があったのか。

個人的に高校時代バレー部に所属しており開成高校と何度か対戦した経験がありますが、これ、わかります。妙に緊張するんです。だって相手は「ペンは剣よりも強し」の開成ですよ、運動よりお勉強で育ってきた方たちですよ。まず負けるワケがないと思うじゃないですか。

実力は明らかにこちらが上なんですが、ひょんな1プレーで開成に点でも入ろうものなら妙な緊張感が生まれ、失敗できないプレッシャーが余計にこちらを萎縮させるんです。

そんなはずはない、そんなはずはない、と。

それこそ開成高校野球部がねらったセオリー。もっとも強い打者を2番に起用する意味とは。常識にとらわれない勝つための創意工夫が痛快な一作です。

まとめ

この他にも、佐瀬稔『敗れてもなお 感情的ボクシング論』、海老沢泰久『F1地上の夢』、沢木耕太郎『一瞬の夏』、後藤正治『スカウト』など、数多の著名な作家がスポーツノンフィクションの傑作を残しています。

スポーツを知ることは、つまり人間を知ること、生き方を知ることだと思います。真っ直ぐな感動もあれば、薄汚い面もある。いいときもあれば悪いときもある。人生に迷ったときや勇気の一押しが欲しいときなど、スポーツは何かしらの答えを与えてくれるはずです。

みなさまも是非、スポーツノンフィクションの世界に足をふみいれて大切ないろいろを感じ取ってみてはいかがでしょうか。