晴れやかな青空の下、佐野元春から4年半振りのニューアルバムが届けられた。
そのタイトルは「THE SUN」。

太陽という言葉の指し示すとおり、力強く開放的なまさに傑作と呼ぶに相応しいアルバムだ。そしてデビュー以来、長年所属して来たEPIC Recordsを離れ、独立レーベルDaisyMusicからの第一弾リリースとなるこのアルバムは、佐野元春自身にとっても新たなる一歩を踏み出す記念すべき作品となる。

アルバムの幕開けとなる1曲目、初期作品を思わせるチャーミングさとポップさを兼ね備えたナンバー「月夜を往け」。
かねてから「Sail on」というタイトルで演奏されて来た、新たな船出を思わせるスケールの大きなロッカバラード「君の魂 大事な魂」。
軽快でシンプルなRock'n Rollに、ポリティカルなメッセージが込められた 「国のための準備」。
そして「夢を見る力をもっと」という一節が象徴的な、このアルバムの中核をとなる「太陽」。アルバムに収められている14のロック短編集達、そのどれもが個々の輝きに満ちている。
メロディーメーカーとしてのセンスは言うまでもなく、4年半という、決して短いとは言えないインターバルを置いてリリースされたアルバムにも関わらず、うれしいくらいに佐野元春のロック･スピリッツは健在だ。

大人のためのRock'n Rollアルバム。

このアルバムで特筆すべきなのは、作品の中に今ではあまり登場の機会がなかった30代以降の主人公達が登場することだ。
一日中働きづめで、終わりがないような気がして空を蹴ってしまう、ヘビーな状況の主人公に対して、「我が道を行け」と語る「恵みの雨」。
ありふれた男の日常と希望の行方が語られる「希望」。
バツイチながらも、強く生きる女性との恋愛を描いた「レイナ」。
どの主人公達も人生の機微を知りつつも、前向きであらんとする姿勢は何よりもリアルなRock'n Rollを感じさせる。

10代で佐野元春の音楽に触れた世代も今は30代、このアルバムは佐野元春の音楽と共に人生を歩んで来た世代の心の琴線に触れる、大人のためのRock'n Rollアルバムに仕上がっている。ロックを聴いて育って来た10代もいつかは大人になる。しかしそんな風に成長した大人達が聴く為のRock'n Rollアルバムは、残念ながら今の日本ではとても少ないのが現状だ。大人になった今だからこそ、Rock'n Rollが必要なのだと思う。そんな時代に佐野元春は「THE SUN」というアルバムを届けてくれた。
いくつになってもRock'n Rollを愛する大人達に、そしていつかは大人になって行くティーンネイジャー達にも手に取ってほしい一枚だ。

2004年10月から約4ヶ月間の長期間に渡るコンサートツアーが予定されている。様々な街で佐野元春が、飛びきりのナンバーを聴かせてくれることだろう。

再び路上に立ち返った佐野元春の快進撃は続く、
鳴り止むことのないRock'n Rollと共に。