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ホーム >ミュージック >特集 >槇原敬之 「LIFE IN DOWNTOWN」特集
槇原敬之
デビュー15周年という記念すべき年、槇原敬之から1年半ぶりのアルバムが届けられた。
タイトルは「LIFE IN DOWNTOWN」。

アルバムのテーマはその名のとおりズバリ「下町」。
前作「EXPLORER」の流れを汲みながらも、日常の中で日々失われつつある「思いやり」、「人情」、「やさしさ」、「ぬくもり」、そんな大切な気持ちのあり様が描かれている。

HOME MADE 家族のMC KUROとのコラボレーションによる、アルバムのリードシングル「ほんの少しだけ」を初めとして、ダウンタウンへの楽曲提供で話題となった「チキンライス」、「いつでも帰っておいで」、「尼崎の夜空を見上げて」など、14曲の楽曲の中では下町に暮す人々の生活が脈々と息づいている。
そしてそこには忘れかけていた幸せの風景が存在しているのだ。

特筆すべきは6曲目に収録されている「月の石」、エレクトリカルな打ち込みのサウンドに乗せて響く郷愁を誘う篠笛の音という、一見、違和感を感じそうな組み合わせにも関わらず、マッチングの妙を実感させるアレンジと、槇原敬之の真摯なボーカルに何とも心打たれる1曲に仕上がっている。

こんな殺伐とした時代だからこそだからこそ、人の世の理を見つめ続ける槇原敬之の歌はより心の奥深くに響いてくるのだと思う。

忘れてはいけない気持ちがきっと誰の心にもある。
まずはこのアルバムを聴いて思い出してほしい、そしてあなたの大切な人にこのアルバムを聴かせてあげてほしい。


LIFE IN DOWNTOWN [初回限定生産] LIFE IN DOWNTOWN [初回限定生産] 槇原敬之
発売日: 2006/02/22 | アルバム CD 試聴あり
販売終了(購入不可)
3204円(税込)
ほんの少しだけ ほんの少しだけ 槇原敬之 feat. KURO from HOME MADE 家族
発売日: 2006/02/01 | アルバム CD 試聴あり
製造中止(購入不可)
1100円(税込)
LIVE ALBUM cELEBRATION 2005〜Heart Beat〜 LIVE ALBUM cELEBRATION 2005〜Heart Beat〜 槇原敬之
発売日: 2006/03/15 | アルバム CD 試聴あり
製造中止(購入不可)
3562円(税込)
LIVE DVD cELEBRATION 2005〜Heart Beat〜 LIVE DVD cELEBRATION 2005〜Heart Beat〜 槇原敬之
発売日: 2006/03/15 | DVD
製造中止(購入不可)
6076円(税込)

★MAKIHARANORIYUKI.COM★
http://www.makiharanoriyuki.com/

★東芝EMI内 槇原敬之サイト★
http://www.toshiba-emi.co.jp/capitol/makihara_life/index_j.htm

◆槇原敬之 プロフィール◆

誕生日:1969年5月18日(牡牛座)
出身地:大阪府高槻市
血液型:O型

槇原敬之 「LIFE IN DOWNTOWN」特集
☆槇原敬之 インタビュー☆
――今回のアルバムのテーマは「下町」ということですが、このテーマでアルバムを作ろうと思ったきっかけを教えて頂けますか?

槇原:僕はこれは生い立ちに影響するアルバム、あからさまに自分の生い立ちとか絡んだっていう、そんな大層なものではないとは思うんですけど、僕は高槻市っていう所に住んでて、高槻市っていうのは大阪でも北摂地域って言って、最後まで手が付けられなかった場所で鹿が住んでるような田舎だったんですけど、そこをバーッと切り開いて団地が出来て、うちはその団地の電気屋さんだったんですね。

いわゆる万博のせいっていうのもあるんでしょうけど、まさに万博開催地の側かなんかだったものですから、昭和40年代の総とっかえ感が非常にある、技術の進歩とか、人類の調和みたいな、そういうスローガンの元、何か空虚なニューライフみたいなのがスタートしてる中の僕達は丁度その時期の子供だと思うんです。

僕は夏とか冬になるとそれと全く正反対の世界に行ってたんでですよ。
そこは尼崎っていう所なんですけど、ずっとそこに住んでる家があって、隣の家の音なんか聴こえるのなんか普通で、風呂とかないけど、でも近所の人ともみんなすごく仲良くて、どこのお家の人も余所の家の子供のことをちっちゃくて可愛かった時から、ヤンキーになって、それからそこそこのところに所に勤めてみたいなのを、キッチンの食器洗うところの窓からずっと見守っているような町だったんです。

口が悪いんだけれども、相手のことを「お前生きてたのか?」とか思いやる優しさだったりとか、そういう下町ならではの良さというものもあるわけですけれど、全部捨ててこっちに来ちゃう人達は、そういうのまで非常に忌み嫌うんですね。

高槻って言っても、今行くとものすごい田舎で、せいぜいそんな話を比べてしまうんだけども、独特の下町の雰囲気を敬遠するというか、そういう下町というかちょっと貧乏な町のギスギスしたところがイヤで、なんとか私はそういう所から脱却してやるって言って住んでる人も結構、多かったんですよ高槻とかって。

僕は尼崎にいて、これは毎回、インタビューの時に言うんですけど、うちの従兄弟はヤンキー“だった”って言えって最近は言われるんですけど、一応、硬派だったらしいんですけれどボーズでね、斜めのちっちゃい眼鏡を掛けて、それでジャージ着て、ちっちゃい女の子のサンダルみたいなのを履いて、足をピーンとさせながら歩くわけですよ(笑)。

それでちっちゃい文化住宅のコンロのところでおばちゃんがご飯作ってる時に、「こら、オバハン!金くれや!」って言うんですけど、まずおばちゃんが金くれということに対して怒るんじゃなくて、"オバハン"っていうのは誰に向かって言ってるんだっていうことをガーッ!っと怒るわけですよ。

(一同笑)

槇原:それを夏休み中、毎日やってるんですよ。
え?ちょっと待って!たまには違うことで怒れば?っていう。
言葉もものすごく悪いし、激しいんですけど、それを僕はちまっと座ってコタツのとことかで見てながら、決してイヤな感じがしないんですよね。

でも僕が一度帰って、わけわかんないことで怒られたり、大人同士が言ってたりしてるのを見ていると、なんかギスギスした感じがしたりするんですよね。

この決してものがあるわけではないんだけど、“ある”感じがこっちにあって、僕が住んでいた所には“ない”という感じって何だろうというのが、子供の頃にずっとあったんですよ。
最近、都会とかってお年寄りの一人で亡くなって、部屋で発見されるまでの間っていうのが非常に時間が経ってたりとかするんだそうです。

それを聞いた時にハッとそのことを思い出して、人が人のことをすごく気にし合って生きてれば、もうちょっと安心して死ねるよなと思ったんですね。
なんか安心して生きてられるどころか、安心して死ねないなみたいな、死んで腐っちゃってどうしようもないような自分っていうのを発見されることに怯えて死ねない人生なんてくだらないって思った時に、別に尼崎が良しというわけではなくて、自分の中で一度モノポリーじゃないけれど、そういう自分的下町シミュレーションみたいなものを歌の中でやってみたら良いかなぁと思ったんです。

そのきっかけになったのが、今回のジャケットの絵を描いて下さっている山口晃さんなんですよ。

この方は日本画の手法で面白い絵を描かれるんですよね。
「ほんの少しだけ」のジャケットなんかそうなんですけど、おばあちゃんが階段を降りれるハイテクな車椅子に乗ってるんだけど、でもうどん屋さんのところでチョンマゲ結った人が挨拶してたり、昔の日本と今の日本が戦争が終わった後に捨てなかったものが全部残ったら、こんな感じかなみたいな。

山口晃さんの画集をうちの会社の者がこれは絶対好きだろうって見せてくれたんですけど、それにかなり影響を受けて、ありとあらゆるもの、その人のインスピレーションが入ってて、この人の絵の中ではすごく自由じゃないですか、その自由さが“アーティスト”と呼ばれるならば、歌を歌っている人もアーティストではないと。

何か自由に表現をして、今自分が思うことを提案して行けることがアーティストなのだったら、僕もこの人と似たように自分の中での“人懐っこいダウンタウン”を表現したいなと思って、よし!僕の中でのこういう町を描こうと思ったんです。
それで一年以上ずーっと悶々と考えながら。

――じゃあ、構想にかなり時間が掛かったんですか?

槇原:掛かりましたね。結構「SAYURI」ぐらい掛かってるんじゃないかな(笑)。

――(笑)

槇原:今回、映画を作るのに似てたんですよ。
自分の中に細かい設定を作って、だから面白かったのがディレクターさんに詞とか見せるんですけどどんどん変わるんだよね。
最初は設定が書いてあるような感じの詩が多いんですよ。

「星の光」って曲は、最初のタイトルが「みんなで幸せになろう」っていうタイトルで、しかも福引でハワイ旅行が当たって、家族にナイショで当たったのコッソリ持って帰って、自分の彼女とハワイに旅行に行くっていう話だったんですよ。

――そうなんですか(笑)。

槇原:それは何でかって言うと僕はハワイ島に行ってすっごい綺麗な星を見たんですよ。
その時に感じたことを何か歌いたいなと思った時にそのモチーフにしようと思ったんです。

何かおかしな繋がり方なんですけど、今回そこから歌の中の人達の、一家族、一家族を見ながら歌を書いてる感じなんですよ。
だから時間が経つと自分の中でその二人が今度、結婚することになったりとかするわけですよ。

そして結婚して、今度は新婚旅行に行ったことにしようってことになって変わったんです。
そういうような書き方したりかして、結構、長く時間が掛かりましたね。

――あー、それを言われて今、ちょっと分かった気がします。最初に例えば「店じまい」はどうしてこう中に入っているんだろう?って思ったんですよ。

槇原:うんうん、そうですよね。

――すごい考えて、トータル的に見て「人情」っていうのは良いことも厳しいことも言わなきゃいけないってことからなのかなとも考えてたんですね。でもお話を伺うと、このアルバムの中にいろんな町の人の生活が入っているってことですよね。

槇原:そういうことですね、本当に。そういう地図みたいなアルバムなんですよ、時間軸とかがないし一つの国の感覚もないんですよね。
武器商人ってどっちかって言うとアラブっぽいじゃないですか、でもそういうアラビアの人も僕のその世界の中では一つの地域に住んでるみたいな感じなんです。
「もし世界が100人の村だったら」みたいな世界ですよ。

――なるほど(笑)。

槇原:例えば子供が可愛いと思うのもどこの国の人も一緒だろうしとかね。
そしたら見事にそれを山口さんが歌詞カードの挿絵で見事に描いてくれてるんですよね。今回その挿絵も見ながら歌を聴けちゃうのでわかりやすいよね。
各自その家の中に抱えているものと、それに対する僕ならこうしたいなっていうのの提案が詰まってるアルバムですね。

――初期の頃の槇原さんの歌に出てくる男の子って、都会に住んでてすごい贅沢じゃないけどそこそこスタイリッシュな・・・。

槇原:あー!わかるそういう感じだよね。

――流行は一応ちゃんと。

槇原:チェックしてみたいな。(笑)

――そういう男の子が出て来るイメージが多かったので、今回、「下町」っていうテーマを聞いた時にちょっとビックリしたんですよ。

槇原:そう、だからみんなが思ってる「下町」とは違うね。明らかに違うと思う。

――「下町」っていうテーマで、でも人の心とか。

槇原:そう、「人情」だね。
いくらお洒落な格好してても、いくらハイテックなものを作ってて、宇宙に飛んだとしても、愛がないと、あまり僕は魅力がないと思うんですよね。
僕、年寄りになればなるほど、可愛らしくいてほしいと思うですよ、うちの親なんか見てても。
もうだってそしたら誰もほっとかないじゃん、その人達を。

だから僕も絶対、可愛いおじいさんになると思ってるんだけど。
なんかそういう可愛らしさとかって「人情」から始まるような気がするんですよね。

――(笑)

槇原:特に自分みたいなこういう、いわゆる若い子が憧れる商売として、アーティストとしてやってる時に、なんかみんなの憧れの像みたいなものに、いつしか僕が自分でそっちにならなくちゃいけないのかなって思うようなことって、ほとんどのアーティストの人があると思うんですよ。

ただそうじゃなくってアーティストである前に人間としてなんか可愛らしいところ、特にこういう本末全部転倒しちゃってるような世の中だったら、それを言うのが一番、人間として僕はやりたいことだし、それがアーティストだろ!みたいに勝手に自分で定義付けてやるとね、ほら盛り上がるじゃないですか(笑)。

――(笑)

槇原:そう、楽しくてまだ終わってない感じなんですけど。ほんとなんか作り続けたくなっちゃうぐらいのアルバムでしたね。
自分の中でこの町はずっと見て行きたいような感じというか。

――この中の人達も変わって行ったりして行くんでしょうから、それをどんどん歌にしてほしいですね。

槇原:そうですね、本当に。だからちょっと山田洋次監督的になって来てるというか、老いて行く人、生まれて来る人達を含めて全部、形がこのダウンタウンっていう形じゃなくなっても、これからそういう歌を歌って行きたいんだろうなって思いますね。

――「ハチミツとクローバー」っていうコミックがあるんですけど、その作者の方が言うには登場人物の一生が自分の中にあって、年表が書けるくらいなんだそうですよ。

槇原:なんか面白いですよね。僕の場合はその年表っていうよりも、僕の中にある一瞬一瞬の僕の気持ちがそれぞれの主人公に割り当てられてるんですよね。
例えば今こうやって僕達が生きてても、一瞬一瞬で心がすごく変わるでしょう?喜んだり、悲しくなったりとか。
その悲喜こもごもを仏教でいうと、一念三千って言って、一回思うことに人間、三千通りの気持ちがあるって言われてるんですよ。

そうするとやっぱりその一瞬一瞬の自分の、ある一つの自分っていう形を一つの人格に見立てて書くことが僕の場合は多いですよね。
それが今回「EXPLORER」ぐらいからその主人公達にもっとリアルな息吹が込められてるっていうか、人形を作る感じに似てて、僕が生きた分だけ、その子達も過ぎて行くような感覚がありますよね。

だから詞もある程度、見切りつけなくちゃいけないのが、書き始めてから僕の考える分だけその子達も考えてる時間も過ごすので変わって行くんですよ。
ちょっと聞いたら変な話なんですけど、今はその時に一番良い考え方になった時の、詞を書こう書こうとするんですよ。
だから全体的には同じ詞なんですけど、一ヶ所良くなってるとか、一ヶ所この人が活路を見出している感じとか、でも最近それがすごく大事な気がするんです。

というのは、これって正解がないんですよ、例えば「このパンはおいしい」というのは全く持って正解じゃないんですよ、なぜならおいしくないと思う人もいるかもしれないから。

だけどおいしい、おいしくないとは関係なしで、僕はこれを食べておいしいと思ったことを伝えるのは、すごく良いことじゃないですか。
その時にどう伝えて行くのが一番良いかみたいなことって、日々変わって行くわけですよね。
その主人公が「ねぇねぇ、槇原君、こういうふうに伝えるのはどう?」みたいに言って来る感じで、それを僕がまた書き起こして行くんですけど、僕が彼であり彼が僕でありみたいな、そういうような日々がずっと続いてますね。

――そういうふうに詞は書かれるんですね。

槇原:最近はそうですね。前まではもっと私小説的だったと思うんですよ。
いわゆる生きるというよりは何か一つ伝えたいことがポーンとあって、それを脚色して書いて行くという。

でも最近は書きたいと思うテーマの人と一緒に僕も「そうだね、それわかんないね、難しいね」って言いながら、「果たしてこうやってみたらどうなんだろうかとか、こういう言い方だったら傷つかないじゃないかなとか、こういう言い方の方が冗談交じりに大事なこと言えるかね。」とか、こう話し合いながら書いてるとこがありますよね。

――そうなんですね。

槇原:だからこう悶々とオタクな人生を送ってるわけですよ。

――そうなんですか。(笑)

槇原:このアルバムは上手く説明できないんだけど、僕の中で何か大きく変わって行ってるんですね。

――あぁ、でもそれは感じますね。

槇原:うん、もっと生活感があると思うし。

――ターニングポイントな感じなのかなっていう。

槇原:うん、しますね、自分ではっきりと。

――前作とはまたやっぱり違うんですよね。

槇原:そうですね。言ってることは一緒なんですけどね。ポイント・オブ・ビューが違うというか、カメラの置きどころが違うんでしょうね。
前作はもうちょっと俯瞰で、割と全体的な分布図みたいなものを見せるんですけど。
今度それが具体的にどういうものなのかっていうのを伝えたい衝動っていうのを抑えられなかったんですよ。

例えば心の中を前回の「EXPLORER」で言うと、宇宙とか外とか、何かの原因を自分の体の外に求めるのではなくて、自分の中に求めて行こうっていう。
例えばまさか自分の中に悪がいるとは思ってないから、自分が悪になった時にこれは絶対誰かの仕業だと思うんですけど、でも悪も善も自分の中にあるじゃないですか。

それが「EXPLORER」の全体的に言いたいことだったんですね。

それをもっと細かくかみ砕いて、まず町内レベルな感じにしたかったのが今回のアルバムです。
ただ言ってることは全く一緒なんですけど、感じ方が全然違う。

でもそれが実は大事でそこに「EXPLORER」を作った後にすごく僕が感じたことだったんですよ。
生い立ちって人それぞれ違うので、その人にこれは素敵なんですってことを伝えるには、その人に合った伝え方をしなくちゃいけないじゃないですか。
ともすればその人に合ってないと、すごいイヤなものとして捉われてしまって、せっかくあなたが大好きで、私はあなたにこれをわかってもらいたいと思って言ったことが、相手からこれを遠ざけてしまうようなことになってしまうっていうことがほとんどじゃないですか。

だから「EXPLORER」を書いた後に人間の数だけ歌がいるなって思って、それで今回がその内の一つなんだと思うんです。だから長い旅だよね。

――今回って詞とかは人間臭い感じなんですけど、エレクトリックなサウンドアプローチの曲もありますよね。これはどうしてなんですか?

槇原:僕はYMOが大好きだったんですね。理由が2つあって1つは僕が多感な頃、70年代、80年代にYMOと出会って今の仕事をやってるんですけど、もともとピアノをやっていたもので、ピアノに出ない音があると。
今やシンセに出せない音がピアノなんだけど、その頃は「わ!こんなピコピコした音が出る!」みたいな(笑)。

でもその中でもクラフトワークもいたし、いろいろいたけど、YMOに惹かれたのはやっぱりYMOの中にあるお茶の間感と、YMOの中にある様式美というかクラシックをちゃんとやっている人の独特の曲の構成の美しさ。
いわゆるただ単にテクノロジーに任せて何か反復材料を集めて作ってるのではなくて、何て言うのかな、いい加減であろうが明確であろうが、言いたいことが様式美の中に乗せられているのがYMOだと思ってて、僕はすごく好きだったんです。

それをずっと自分の中でなぜこういう音楽が大好きなんだろうと思った時に、その真ん中でいつも高橋幸宏さんの歌とかが乗ってる時にものすごく揺れて聴こえるんですよね。

デジタルの正しいビートの上に置くと人間の声って、すごく揺れて聴こえるんですよ。
ナット・キングコールとかの昔の曲を聴くと、割と全体が揺れてるので気がつかないんですけど、テクノ・ミュージックって正確なリズムに合わせて人間の声が乗るので、逆に曲全体の仕上がりが温かい感じがするんですよ。

だから同級生とかがYMOの歌を聴いて、「ピコピコした音楽だから嫌い」とかって言うんだけど僕はその湿気とか正しいリズムと揺れてるもののそのバランス感が、すごく好きだったんですよ。
ただ今まではライブとかいろいろ自分でやる上で、やっぱりあまり電気的に全部作り過ぎると、ライブの構成上、舞台の上に3人位でラップトップパソコンで終わっちゃうみたいな感じになってしまうのが、見た目的にどうかなとかっていうのもあったので、とりあえずバンドメンバーを意識して割とフォーリズムみたいな感じの作りにはなってたんです。

でもそれが最近、素晴らしく上手いミュージシャンの方と一緒にやって、特にこの間の「cELEBRATION 2005 〜Heart Beat〜」で、僕は「この人達ってやっぱり天才的に上手いんだ」っていうことがわかって、この人達とならばどんなな表現をしてもライブでやって行けるかなと思ったんですね。

それで久しぶりに自分の大好きな世界をそのままやってみたっていうのが1つの理由と、もう1つははっきりと「人情」とかそういう揺れるものを正しいビートの上に乗せることでより揺れ感っていうのを出すっていう、それはあくまで自己満足的なものなんですけどね。

――いやいや(笑)。

槇原:でもすごいそれが気づくと結構割とビートに乗ってるやつの方が揺れてるんですよ。
そこが良いんですね、温かかったりして。

――冷たい感じはしないですよね。

槇原:しないんですよ。僕はもうちょっとキテレツな感じで仕上がりたいなとさえも思ってたんですけど。
今まで以上にポップじゃんみたいな(笑)感じになって。

――際立ったんでしょうね、きっと。

槇原:際立ったんですね、たぶんね。だから自分でそう思いながら作って改めて歌を乗せたものを聴いた時に、歌が生々しいですよ。
「月の石」なんかすごい人間人間した部分が出ちゃって、すごい楽しいと思う。
だから反応がもっと変わったアレンジですねとかって来るのかって思ったら、逆の返事が多くてそれもビックリしちゃいますね。

――きっとファンの方も聴いたら楽しめると思いますね。

槇原:うん、だと思いますね。いろいろやると思います、これからも(笑)。

――なるほど(笑)、今回シングルでも出ている「ほんの少しだけ」でHOME MADE 家族のMC KUROさんとコラボしてるんですけれど、これはどんな経緯で一緒にやられたんですか?

槇原:夜中にMTVを掛けながらずっと仕事をしてた時に、HIP HOP TIMEみたいなのがあったんですよ。
それでジャパニーズ HIP HOPがずっと流れてて、面白いなぁなんて思いつつ小耳に聴いてたんですけど、その中でポーンって矢を打つように飛び込んで来たのがHOME MADE 家族で、うわー!すごい!この人達のラップって言いたいことがちゃんと伝わるぞって、すごい好きだなと思って、ライブに行ったり、CDを買ったりして、久しぶりにちゃんと自分達の足でアプローチして行って、最終的に会うことが出来たんですよ。

喋ってみても思ったとおりの真面目で、思ってるより年がいってて(笑)、っていうのがポイントだったんですけどね(笑)。
良かった、ちょっとホッとした、あぁ、ある程度やっぱり生きて頑張ってる子達の感じだなと思って、何よりすごく素直でひたむきで一緒に仕事したいなーと思ったんですね。

――じゃあ、お誘いした感じなんですね。

槇原:そうですね。僭越ながら(笑)。

――(笑)

槇原:もうドキドキだったんですよ、僕は基本的にコラボはあんまりしないので。

――そうですよね、なので意外だったんですよ。でもHOME MADE 家族って歌詞が例えばお母さんとかにありがとうって言ってたりして。

槇原:あの歌「サンキュー!!」ってサイコー!だよね。

――えぇ(笑)。

槇原:ごめんね、これじゃあ、ただのファンだよね(笑)。

(一同笑)

――そう言われて、あぁいう歌を作ってる人達だからなのかなと思ったんですね。

槇原:まさにそうです。その方が必然性があるなと思って。
ラップという手法に関してはどちらかというと僕はネガティブな人だったんですけど、でもHOME MADE 家族を聴くお陰で、ラップって面白もんだなぁっていうふうにわかって来て、僕達は一から曲を書いて詞を書いてってあるけど、彼らはあるリズムの上に言いたいことを乗せて行く、その乗せて行くってことにまた妙があったりするんですよ。

とってもじゃないけど僕に真似出来ないことなんだっていうこともわかって、僕、お経とか好きだから、そうすると何かお経とかにも近いかなと。
KUROちゃんともいろいろ話してたら、彼はアメリカ育ちなんだけど、宗教学を専攻した時に、バイブルって全部韻を踏んでるんだそうで、ラップもたぶんそこから来てるんだろうと、僕は思ったんですけどって、二人してなるほど実はラップって歌うの前の形なのかみたいな感じに思ったりとかして。良い交流させてもらってますね。

――そうなんですね。

槇原:インターネットで曲を作ってやりとりしてね。

――そうなんですか(笑)。

槇原:はい、彼らは名古屋なんで。

――えー!そうだったんですか。

槇原:はい、すっごい楽しかったです。

――ネットだから出来ることですよね。

槇原:そう、本当に。このアルバムもそうだし、「ほんの少しだけ」もそうだし、今だから出来るアルバムですよね。

――どんなふうになるかは想像が付かなかったですよ。

槇原:うん、ただAメロが歌で、Bメロがラップとかはそういうのは絶対イヤだったので、それだったらもっと作るのは簡単だったと思うんですけど、歌とラップが共存している感じにしたかったんです。

――これはアルバムを通してまた聴いてほしいですね。

槇原:アルバムに入ってその中で聴くとまた良いと感じで聴けると思います。

――また違って聴こえますよね。

槇原:全然違うと思いますね。

――この曲の中で“君”はどんな理由で泣いたんだろうなとか、この間歌詞を見て考えていたんですけど。

槇原:うん、考えてほしいよね。あるんだけどね僕の中に、敢えて言わないけど。

――後で出て来るのかと思って読んでたんですけど、この中に書いてないんですよね。

槇原:そう、なんかあるじゃない、たまにさみんなが笑ってるシーンで突然泣いてる子がいて、でもそれは悲しいことがそこであったわけでも何でもなくて、
そこに来るまでのことで泣いてたりする子がいたんですよね、昔。そういう時に何て言うのかなぁ、何とかしてやりたいなと思ったよね。
そんなみんなが笑ってるところで泣いちゃダメだよねと思って。

――これはじゃあ、リスナーの方が一人一人考えてほしい・・・。

槇原:うん、よく考えてほしいですね。というか想像してもらえる枠は一応除けてありますね。あと男の子に聴いてほしい。

――あー、そうですね。

槇原:これぐらい男気がある。僕、こういう曲を自分の中で鶴田浩二楽曲って言ってるんですけどね(笑)。
わかんないけど俺が守ってやる的なぐらいのしゃかりきな感じがあっても良いんではないかと。
何か最近の子って・・・・最近の子って言ってるけど、その時点でもうダメ!

(一同笑)

槇原:良いじゃん、もうー年取ってくんだよ!みたいなね(笑)。

――男の子がこう言ってくれればって思いますよね。

槇原:思うよね。そう思うよ男でさえも。

――でも言わないんですよねー。

槇原:いろんな場面を見ててさ、こんな時にあたふたしてて頼りなくなるのやめてくれる?みたいなさ(笑)。
どうやってやるのよって女の子に聞かれたら、それはわからんけどって言うぐらいのなんか男気があっても、そこから男の子って強くなって行くものだし。

――そうなんですよねー。やせ我慢じゃないですけど言ってほしいんですよね。

槇原:あのね、実は「人情とやせ我慢」っていうのが僕の中での「下町」のテーマなんですよ。

――あっ、そうなんですか。

槇原:はい、それは前回の「EXPLORER」の「武士は食わねど高楊枝」からずっと続いてて、うちの会社の者が実は下町出身で、そこのおばあちゃんが「男の子はね、何忘れても良いけど、人情とやせ我慢だけは忘れちゃダメだよ。」って、ずっと言われてたんだけどっていう言葉がずーっと心の中に残ってて。
自分の家にも年寄りはいたんですけど、そういう男の子はねっていうふうに話してくれる存在がいなかったんで、すごく自分の言葉として勝手に捉えてずっと持ち続けているんですよ。

人情とやせ我慢って何だろうって。

でもすっごいカッコ良く感じるんだよね、それが僕の中での下町の象徴でもあったんで、KUROちゃんには是非、一緒に歌いたいのも“やせ我慢”の方、それをポンと先に置くことで、人間って優しくなれたり、強くなれたりするんだろうと。

――最終的に出来なくても良いんですよね、言ってくれるだけで良いんですよね。

槇原:そう!そうなんだよね!やろうとしてる姿が美しいんだよね。ロダンの「考える人」が、なんで考える人を作ってるんだと思ってこないだ話してたら、考えている人間の姿ってほんと美しいんだってことがわかって、その彫刻家が考えている人の姿を見た時に、何か直感的に人間が考える姿って美しいんだって思ったんだろうなぁと思ったんです。

苦悩している人間っていうのが、実はそれこそが答えなのかなと思うんですよね。
このアルバムを通していろいろ考えてほしいなと僕は思って作って、自分も今だにずっとその曲と一緒に考えているから、みんなで考えてディズニーランドみたいな感じで聴いてもらえたら良いなと思って、なんかアトラクションの中に入って行くような感じで。

――きっと聴いて考えることってすごい大切で、考えると人の優しさとかぬくもりとか改めて再認識することになりますよね。

槇原:そうだよー、僕なんかも書きながらこういう人に実は支えられてたんだなとか、今回、一人でアルバムを作ったからこそ、周りの人の協力とかも見えたりしたんですよ。
あぁ、今までもアルバムを一人で作ってたんじゃないんだって。
だから一人でよく考えることで周りの人が見えることもあるし、そこでまた関わり合いが変わって来るじゃないですか、一人で大丈夫だと思えば、一人で生きて行くんだろうし。

でも自然に本当は一人で生きて行くんだ!って言っても、こうやって歩いてる人を、いろんな人が見守っているわけじゃないですか、それって俯瞰で見るとちょっと滑稽じゃん?
でもそれをわかって歩いて行ける時に僕は人間って、人間らしさが出て来ると思うし、そのいわゆる歩いている人みんなを敵と思えみたいな世界もなくなってくると思うんですよ。

だから根本改善を自分の中でもやってみようかなみたいなものも含めてのアルバム作りです。
変な感じだよね、夢もないし、でもすごくそこに僕は夢を感じるんです。

――このアルバムは出してもらって良かったなって思いますね。

槇原:ありがとうございます。これから始まりますんで、またこの次からいろんな曲を書いて楽しんでもらいたいなと思います。

――今回は「チキンライス」も収録されるんですよね。これって松っちゃんの詞なんですよね、ビックリしたんですよ。

槇原:歌いながらほんとハッピーになって行くんだよね。松っちゃんの詞はすごいよ!

――他の人の歌詞で歌うのは初めてですよね?

槇原:はい、オリジナルでは初めてですね。ほんとにこう心が突き動かされたね。

――最後にチキンライス“が”いいやって言うじゃないですか。

槇原:あそこで何だろう、ブワーって来るんですよね。良いよね、幸せってそういうもんだよねとか思うよね。
この曲は歌を家で録ったんですけど、風邪引いて倒れちゃったんで、マイクを持って帰って家で録ったんです。
だから人がいないところで歌えたので、詞をよーく聴きながら歌ったんですけど、良い歌詞だなーって。
「赤坂プリンス押さえとけ」だけがどうしてもあの感じが出なくてねー(笑)、そんなこと言ったことないんでね(笑)。

(一同笑)

槇原:でもすごい楽しかったですね。松っちゃんの歌詞はハリウッド映画みたいだと思うな。

――それではライブのことをお伺いしようと思うですけど、4月からアルバムを引っさげてのライブなんですよね。ライブの意気込みを語って頂けますか?

槇原:とにかく間に合うように頑張ります!みたいな感じかな(笑)。
タイトでねー、でもお陰様で一年間以上掛けて、いろいろ自分の中で温めて来たテーマなので、ライブもそのテーマに溢れたよりフォーカスになった楽しいライブになると思います。
ミュージシャンの人達に時には町工場の職人さんのような気持ちになって1曲1曲をみんなで紡ぎ出して行こうということだけしか決まってないんですけど。

――かなり長期間やるんですよね。

槇原:そうなんですよ。でもねー上手いミュージシャンとやってる魔法に掛かっちゃうんだよね、楽しくて。
楽しみに待ってて下さい、「cELEBRATION」とは全然違う世界なので、レギュラーの槇原もお楽しみ下さい。

――それでは最後にみなさんに向けてメッセージをお願いします。

槇原:これからきっと今までカッコ悪いと言われてたものが、カッコ良くなるので、いよいよみなさんの得意分野がやって来ると思います、だって僕がそうだったからさ。
僕がそうであり、いよいよみなさんの得意分野がやって来ましたよって僕は思ってるんです。
それはどの人に対しても、いわゆる人間味じゃないものが、すごくカッコ良いと言われてた時代はもう終わって、多少なりとも汗のにおいのする湿った温かいものが絶対に流行って来るというか、流行るというよりも、これが良いんだっていう真の価値観をこれから感じて行く時代が来ると思うので、一緒に仲良く長屋気分でやって行きましょう。

何か最近、リスナーっていうよりそういう感じなんですね。
「ゥンチャカ」のように僕は歌担当で、良かったらじゃあ、歌いましょうか?みたいな、そういう感じでいるんで、いつでも呼ばれれば歌いますんで、よろしくお願いします。

――ありがとうございました。


(Text By Takahashi)


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