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![]() なぜ彼は全力疾走で走り続けることが出来るのだろうか。 今回のアルバムは2004年4月から新曲をMP3オーディオ形式のみで発表されて来た楽曲を、リアレンジ、リミックスを施した上で1枚のアルバムに収めるという、かつてない方式がとられている。 −立ち上がることに意味なんかない− ヘヴィネスでアグレッシブな前作「天真爛漫」とは一変して、立ち上がることに意味なんかないというテーマを持つ今作「NO REASON TO START」は、まさに始まりの一歩を踏み出さんとする瞬間のポジティブなパワーに溢れたアルバムだ。 力強いパンキッシュなナンバー「旅立ち」を初めとして、押さえきれない恋の衝動を爽やかに描いた「恋愛白書」、染谷俊自身の人生観が語られている「僕の道」と、そこに描かれた10篇のシーンのどれもが、前に進まんとする力強い希望と熱い情熱を聴き手に感じさせてくれるのだ。 染谷俊というアーティストの発するメッセージは、彼自身が迷いや葛藤も抱えつつも歩みを止めず、前に突き進んで行こうとする姿勢から生まれて来るのものだ。 今まさに新たなスタートを切ろうしている人にも、前に進むことに躊躇しているという人にもきっと染谷俊の歌声は君を勇気づけ、ポンと肩を押してくれることだろう。 季節も春を迎え、始まりに相応しい季節、このアルバムと共に軽やかに始まりの一歩を踏み出そう!
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――今回のアルバムはオリジナルとしては10枚目のアルバムとなるわけですが、1stアルバムを作っていた頃は、今の自分というのは想像していましたか?
染谷:いや、全然してないですね。
――10枚アルバムを作るだろうっていうのはあの当時は全然考えてなかったですか。
染谷:なかったですね、デビューの時はデビューアルバムが出るかどうかもまだわからない状態で。一年前に契約をして、ほんとに出会う人、出会う人、例えば宣伝の人とか、ディレクターやプロデューサーとか、そういう人達に「どんな音楽をやりたいの?」とか自分も聞かれるんだけど、向こうからも例えばこんな音はどうだろうとか、その頃ブライアン・アダムスとかHEARTとかあの辺が好きだったんで、それから、アレンジの部分とか、こんなのもあるよ、あんなのもあるよと言われながら、じゃあアレンジャーを探してみようとか佐野元春さんのアレンジャーと会ってみようとか、そういうのを一年前からちょこちょこやってたんで、それでようやくデビューアルバムが出来た時、マスタリングルームっていうところで50人位かな、社員の人達が来て一緒に聴いたんですけど、その時は、一枚目なのに(笑)、あーやり遂げたみたいな感じがありましたよね。ただその時にはもう、1stツアーが決まっていたんで、2枚目に入れる「危険に自由を犯せばいい」とか、そういう曲作りも始めていたんですよ。
だから10枚先ってとこまではなくて、1枚作ったら次みたいな感じでした。それはメジャーの時もインディーズになってからも、今回も作り終えた時には、もう次こんなことをやりたいなっていうのはあったりするんですよね。それを積み重ねて来たら結果的に10枚になったっていう感じですよね。
――当時と今で作品を作る上で変わったなって思うことと、変わらないなってことはありますか?
染谷:前はもう少しカッコつけるというか、これを作りたいってなった時にそれを作品として作る時には、もうちょっとデコレーションした方が良いんじゃないかとかは考えたりしてました。今も作る時にこうやったら面白いんじゃないかなとか、こうやったらもっと響くんじゃないかとか出ちゃうんですけどね。それを最初のプリミティブな部分というか、この歌を何で自分は作りたかったんだろうっていうのが最終的に表面に出るように、より削ぎ落として本質をキチンと伝えたいっていう気持ちがありますね。
――ある意味では逆になったってことですよね。
染谷:そうですね、今は自分はより裸の部分とか赤裸々な部分とか真っ直ぐな部分を伝えたいなっていうがあるので、そこを求めてるっていうのはすごいありますよね。ただ一番最初の頃っていうのは何もわからないから、よりカッコ良いものとか、音楽的に優れているとかそういうものに憧れたり、手を伸ばしたりとかしてたと思うんですけど、今はあまりそういうのはないですね。
――本質をよりダイレクトに伝えたいってことですよね。
染谷:人がどうとか、他の音楽がどうとかっていうよりは、自分が生きてる中でがどれだけ自分自身を詰め込めるかだと思うんですよね。それが自分にとって装飾するっていうことではなくて、より自分の赤裸々な部分が詰め込めて、生きている間に作品を残せれば良いなっていう気持ちはありますね。
――今回のアルバムのタイトルを「NO REASON TO START」と題したのはどうしてですか?
染谷:何にしようかなって思っていて、プロデューサーの人達と喋っている時に「響きが良いものが良いよね」っていうのと、前回『天真爛漫』ってタイトルのアルバムを出してたんで、四文字熟語とか漢字っぽくないものが良いなと思ってたんです。そのまんまですけど立ち上がって行くことにとか始めることに、理由とかそういうことはないんだよなぁっていう、意味合いのものが何個かあって、その中でこれが一番良いかなと思って決めました。
――今回の収録曲を最初にリリースした時はMP3の形式で出して行ったわけですが、その時はこういうテーマにしようと思って作っていたわけではないんですよね?
染谷:全然ないですね。2004年の4月に「きみに逢えて、僕は」っていう今回のアルバムの中に収録されている曲で、一番最初にMP3を始めたんですよ。それまでは今まで出してきた曲をMP3としてリリースするって形でやってきたんですけど、その4月位の時にそういう形がMUMIXっていう近いところであったんで、じゃあ、MP3で出してみようかなって思ってて、本当に弾き語りみたいな感じで最初に出して、そこからどんな形でキチンとやって行こうかなってことで考えたんですよね。ポンッと生まれてポンッと出すっていうのも良いんだけど、それだと自分自身がすごく揺らいでしまうから、例えば2週間に1回とか、1ヶ月に1回とかペースを決めたかったんですよ。続けて行けばそこにもしかしたら何か道が出来て行くからと思って。その時に途中で歩き出したら躓く、歩き出したら悩むっていうのはイヤだったんで、エンジニアの人とか周りの人に相談をして固まるまでにちょっとかかっちゃったんですけど、それで夏ぐらいにその形でやって行きましょうってことで、表には出さないんだけど自分の中では2週間に1曲、浮かばなくてもとにかく作って行ってみようと思って、9月位から製作を始めました。
でも始めてみるとやっぱり出したい曲とか、挑戦してみたい曲がいろいろ出て来て、止まることなくやって行けましたね。さっきの作品の作り方の違いってところに行くと思うんですけど、そのMP3を作って行く上で、自分の内的な部分って言うんですかね、より自分って何なんだろうとか、今、自分が思う部分って何なんだろうって、何かそこを突き詰めて1曲1曲作って行ったら、こういう始まりを意識するものだったり、新しい何かに向けて踏み出してみるって言うようなものに自然になって行ったんですよね。
――最初にMP3でリリースされた時はそれぞれが独立した楽曲という印象があったんですね。でもアルバムになってアレンジが変わったのもあるのかもしれないんですけれど、ちゃんと流れで聴いて行くと1枚のテーマになって収まっているっていうのがすごく印象的だったんですよね。
染谷:自分も最初はアルバムとしてまとめるって気持ちはなかったんです。最初に決めた2週間に1曲作るっていう、その時浮かんだもの、その時突き詰めたらこういう言葉になったっていうものを出して行って、最終的に例えば行き着くところそれが貯まったらパッケージとしてCDを出そうっていう気持ちも全然その時はなくて。貯まって来たものを1つパッケージとしてまとめてみようかなとか、あとアレンジであっち行ったりこっち行ったりとかした部分をもしパッケージにするんだったら、もう一度リアレンジしてリミックスして歌も入れなおしたりとか、そういうのを考え始めたのが年明けになってからですね。
――前作の『天真爛漫』を出した時にある意味突き詰めてしまっている部分があったので、次のアルバムはどういう方向性で行くのかなっていうのと、MP3で楽曲をどんどんリリースして行ってというところで、これからどうことをするんだろうっなっていうのが見てる側ではあまり予想がつかなかったところもあるんですが、ここで一本に繋がった印象はすごくありますね。
染谷:『天真爛漫』の時は2ヶ月半位で集中して作っていく中で、内的な部分と外に目を向けたひずみの部分というんですかね、社会の中の自分みたいなところとか、社会の中で壊れている部分にセンチメンタルになるんではなくて、所謂レジスタンスして行くというところのテーマがあったと思うんですよね。
今回はその時その時でテーマ決めてなくて作って来たんだけど、アルバムとして自分が今聴くと、自分の道をこれから歩くために全部壊すんだとか、『天真爛漫』のように吹っ飛ばせとか、疼いている闘争があるとか、言葉のキーワードとしてはそういうものもあったんですけど、でもそこを越えて次を考えた時に、時代の中でもそうだし、自分の心の中でもたぶんそうなんだけど、自由っていうのはいろんなやり方があって、どう自由に生きて行くんだろうとか。
よくあるじゃないですか、40歳とか30歳位までバーッと働いて、その後はゆったりと船とか買っちゃって暮らすみたいな。そういう社会から離れてというか、社会の流れとはまた全然別の部分でのんびりゆったりと自分のやりたいように暮らす生き方もあると思うし、もう一つは社会の中での自分の道とか自分のやり方というものを一度壊した後に、それぞれが自分の生き方とかやり方を見つけて、そこに踏み出して行くという生き方があると思うんですよ。
たぶん自分が選んだのは最後の方のジョン・レノンのように社会を離れて、ゆったりと二人の世界を作って行こうじゃないかではなくて、自分というものを壊して、今まで負けてたかもしれないけど、今度は鍛え上げてまた新たに社会の中で、自分の道とか自分っていう確固たるものを作るために始めてみようかなっていうメッセージが自分の中であったんでしょうね。
そこに行く時に、これはテーマとはまた全然違うとこで自分がいつも思っていたことなんですけど、より自分らしくとか自分らしさとか、それって何なんだろうとか。そういうものを今すごい求めてるんですよね。それで今回アルバムを作り終えて、4月3日のワンマンの“自分探しという名のmy
road”もそうなんですけど、より今、自分が行こうとしているものは、自分の道を作っていくためには自分っていうものを持たなきゃいけないじゃないですか、誰が何であろうと、周りがどうであろうと、自分っていうのは何なんだろう、そこに傷ついても全然オッケーですよ、いろいろ言われてもオッケーですよ、でも自分っていうものは突き進んで行きたいみたいなところは今すごくあって。で、次どういう音にしようかなって、今、考えているんですけどね。アルバムを出したばかりですけど(笑)。
――もう先のことを考えて(笑)。
染谷:そうですね、それはすごくありますね。
――今回のアルバムは最初に聴いた時にニュートラルな感じだなって思ったんですよ、『天真爛漫』の時は行くぞー!って駆り立ててる部分っていうのがあって、今度のも肩を押してくれてるアルバムではあるんだけれど、決して無理やり手を引っ張ってることではなくて、自然に肩を押してポンと押してくれてる感じ。
染谷:はい。
――楽曲もこうやって聴くとバラエティに富んだ作品になってるんですよね。楽曲のタイプはいろいろあって楽しい感じのものもあったり、攻撃的なものもあるんですけど、トータルで見るとテーマに沿ったものになっていますよね。
染谷:そうですね、例えばこんな曲があるからこんな曲をっていうバランスもその時は考えてなかったですよね。
――結果的には良い感じになってるなって気がしますね。
染谷:うん、バラエティっていう部分では確かにそうだなと思いますね。
――ただだからと言ってバラバラでは全然ないという。
染谷:MP3リリースのための曲を作っている時にその時その時ってアレンジも考えて、だけどどっちに行っちゃうのかなっていうのはイヤだったんですよね。一つ周りの人やエンジニアの人にも言っていたんですけど、詞の部分しかないんですよね、しょうがないんですけど。音がいろいろ変わって、でも揺るがないものをもし突き詰めるんであれば、何を言いたいのか、何を芯に持って引っ張って行くのかっていう時に、詞の部分しかないなと、そこはエンジニアの人に僕を信じてくれれば良いから、お互いアイデアを出していろんなタイプのアレンジをやって行こうよっていう話し合いをしたんですよ。
その芯の部分って狙って出来るものじゃなくて、そこを揺るがないものにするっていうのも自分を正直に書いて行くしかないみたいな、自分を正直に書いて行けば、よっぽどジキルとハイドみたいじゃなければ(笑)、あっち行ったりこっち行ったりはしないというか、価値観というか自己っていうものは悩んだりしてたとしても、きっと2004年から2005年の自己っていうものがしっかり書き綴ってあれば揺るがないと思うんですよね。そこはすごく意識してはいたんですけどね。
――今回こういう風にMP3でどんどん出して行ってまとめるって形は結果的に自分で良かったなと思っていますか?
染谷:うん、何か新しい挑戦ではあったなと思って、それは自分の中では新しかったんですよね。メジャーの時とかでもアルバムを作っていく中で、その中からシングルカットっていう感じを考えていたりとかはあったんですけど、インディーズになってアルバム作りってなると、1曲1曲を聴かせるって意識はあんまりなかったんですね。それよりもアルバムトータルで例えば『LIVIN' ON THE ROAD』とか、『KISS THE WORLD』とか、そのテーマがある程度あって、その中でどれだけその世界を伝えられるだろうかって作り方をして来て、今回は何のテーマもなくて1曲1曲、だけど揺るがないようにっていうところの緊張感とか張り詰めた感じは結構あったんで、ま、疲れるっちゃあ、疲れるんですけど(笑)、それはでも今回やってみて良かったですね。
――アルバムの1曲だけMP3出すとかはあると思うんですけど、こういう風に立て続けにどんどん新曲を出してアルバムにまとめるっていうのは新しい感じがしますね。今回の形は結果的に良かったという事ですね。
染谷:そうですね。
――今回のレコーディングで一番、制作時間がかかったのはどの曲なんですか?
染谷:すごく歌い直したり、やり直したりとかリミックスとかリアレンジの部分でかかったのは「僕の道」なんですよ。「僕の道」はMP3で出して5曲目になると思うんですけど、ちょっと自分が揺らぎそうな時に、1曲1曲作って行くとアレンジの面白さとか、あんなこともやりたいなとかいろいろ出て来るんですよね。その中でいやいや違うだろう、詞だろう、自分自身をキチンと書かなきゃいけないだろうっていうのを、リセットして書いたのが「僕の道」だったんです。タイプ的には「きみに逢えて、僕は」とかピアノを弾いて語るように歌うっていうところは結構、似てるんですよ。それで似てるんだけどどうしようかなと思ったんだけど、いや、これはキチンと出すべきだと思ったんですよね。
そして今度リアレンジした時にその時は弾き語りとストリングスっていう感じでイメージがあったんだけど、もっと語りかけるように「俺ってこうでさ」というようなものを音楽でやってみたかったんですよね。その時にどうしても弾き語りになると今までやって来た歌としての弾き語りになってしまって、それをどうやったら崩せるかなって言うので結構、何回もやりましたね。
――今回のアルバムの中で新しくチャレンジしてみたことはありますか?
染谷:『天真爛漫』の時は音の部分でクレイジーなギターというのがあったんで設楽君というギタリストがいるよってことで紹介してもらって、スタジオの中で自分がデモ的に録って、設楽君にこんな感じってやってほしいんだけどってことでお願いするという感じがあったんですけど。今回はタームも短かったし、浮かんでこれだって思ったら即、レコーディングに入らなきゃいけなかったんです。その中でっていうとこでベースにしてもギターにしても結構、自分で弾いてるものが多くて、今までも自分でやって来たんですけど、今まではアルバムで作ってたから、自分とエンジニアの計画の中で、この辺は差し替えようというようにレコーディングの仕方とかも考えたんだけど、今回は差し替えとか考えられなかったんで(笑)、もう録る時から自分で弾く、自分の音で入れるっていうのでベースとかも含めて、最初から一個人で作って行くっていう気持ちで挑戦したところはありましたね。
――すごいですね。全部自分でってことですよね。
染谷:そうですね、最初からそれは腹を括ってやるしかないなってとこはありましたね。例えば『The Eternal Sun』とかだと、みんなでワイワイと仲間達で作ってるような感じにしたい、それで作り出した時にいろんな人に「来ない?」とか電話かけておいて、みんなでワイワイやって「ついでにギター弾いてかない?」とか、そういう風に作りたいなっていう時と、『LIVIN' ON THE ROAD』の時もそうだったんだけど、この時はメジャーからインディーズになって一人で立って行くんだっていうのがあったんで、一人でやるんだ!っていう気持ちがすごくあったんですよね。だけど結果的にいろんな人に助けられた部分もあったんだけど、今回に来て『天真爛漫』の後の反動もあったんですけど、一人でやるんだというのがすごいあって、ベースとかそういうところまでも最初から考えてましたね。
――今回、収録曲で先程出て来た「僕の道」っていうのは歌詞がミュージシャンとしての染谷さんの生き方がリアルに語られているなって思ったんです。「Mind Flag」も確かにそうなんですけど、ここまでダイレクトに語られているのはなかったなって思うんですよ。ある意味それは真の染谷さんを歌に出してるのかなっていうのがあったんですよね。
染谷:自分の中で全般的に3回書き直すっていうのはあんまりないんですけど、大体ダーッと書いてあるものが、最初にイメージとしてあって、最初に書き始めた時にはある程度もう大体出来ていて、そこから言葉を変えたり、行を変えたりという形の詞が多いんですけど、「僕の道」が最初にあった時にまんま歌っちゃうと聴いた人が入り込めないんじゃないかと思って、歌を歌うっていうとこではなくてっていうことが1番の歌詞では書いてあったんですよ。だけどその仮歌を歌ってみた時にすごく違和感があったんですよね。
「僕の道」って言ってるのに向こう側を考えて書いていることがすごい伝わらないなと思ってそれで書き変えて。「僕の道」って歌をライブハウスを回って歌ってそれを誰かに届けたかったり、Diaryとかライブとかで書けなかったところも実は裏側にはあって、そういうのを抱えていて歩けない日もあって、あとは望みとしてまだ夢を達成したわけでもなく、お世話になった人にお返しもしたいしっていうところとかも、キチンともっとそういうところもリアルに書いてみようかなと思って、最終的にはあの形になったんですよね。
それで変な話ですけどもう一回仮歌を入れた時に、あぁこれはもし違う人が歌ってもこの気持ちわかるなぁって、例えばライブハウスとかでイベントで一緒になった人がいても、あぁ、そっかそうやって生きてるんだなぁってなった時にじゃあ、自分だったらどういう風に道を作って行こうかなとか、幸せって何なんだろうとか考えるだろうなって、自分で考える事が出来たんであの詞にしたんですよね。
――あの曲はある意味、アルバムの核になる曲だなって思いますね。
染谷:結構、面白いのは「命」とかもそうなんですけど、逆に歌っているとその時その時っていうのはシングルっぽく考えるから、アルバム全体でこっちでこれを言っていたから、これを違う形でこっちで言おうみたいなのは全然考えられなくて。その時に突き詰めて考えるじゃないですか、それは結構良かったと思いますよね。『天真爛漫』や他のアルバムでもそうですけど、やっぱりアルバムの中でテーマに対してピラミッド的になるんですけど、その時に例えば「命」、命ってどんなことかなって考えたりとか、「僕の道」ってさっきみたいに考えたりとか「Dreamer」、夢って何だろうなとか考えたりとか、そういう部分ではこのアルバムは自分のアイデンティティって言うか、アイデンティティの粒ですよね、血の中に流れている粒が入って行ってる感じがあるんですよね。
――作り方としては今までの普通のアルバム製作とはかなり違った形で来てると思うんですけど、でもこうやって収まったら違和感がないなぁって、却って良かったんじゃないかなっていう気がしますね。
染谷:一つのやり方として良かったと思いますね。
――今回、結構アレンジを変えたりしていると思いますが、逆に変えなかったというのはどれだけあるんですか?
染谷:変えなかったのは4曲ですかね。「恋愛白書」「Dreamer」「命」「旅立ち」。その中では「旅立ち」だけライブっぽくリアレンジするのもありだなと思ったんですけど、エンジニアさんとこれは変えた方が良いかなどうかなって1曲ずつ聴いて行くわけですよ、でも無理やり変える必要はないじゃないですか。大体こういう風に変えたいってあったものは最初の6曲。「旅立ち」はそういう風に思っていたんだけど、始まりの部分を聴いた時にこれはこのままで行きたいなって、そういう感じで変えないものは変えなかったですね。
――逆に一番、すごい変えちゃったものは。
染谷:聴いた感じでは「僕の道」はそんな変わってないような印象があるかもしれないんですけど、自分の意識の中で「僕の道」はすごく変わってますね。あと「問答無用」はMP3の時には言葉とリズムっていうところで作り出して、言葉がダーッとあって、その言葉をどうやって乗せて行こうかっていう作り方をしたんですよ。なのであんまり細部に渡ってどんな音で装飾しようかとかいうのは考えてなかったですね。
「僕の道」を出した後に、今度やる時にはもっとこの中に入っている感情っていうのは割とロックな感情で、軽いものではないんだっていうのがあったんで、そこからそのままロックテイストをもっと出したいっていうことでギタリストを呼んで来てやったっていうのはありますね。それで何かよりロックな物語性みたいなのを付けたかったなっていうのがあって。「問答無用」と後は「オレンジ道」ですかね。
――あぁ、あれはテンポも結構変わりましたよね。
染谷:そうですね。「オレンジ道」は以前ライブで歌ったことがあって、その時は3ピースで歌ったんですよ、僕とベースとドラムで。その時は割とロックなテイストで歌ってたんですけど、その後に弾き語りのライブで何回か歌った感じが良かったんで、詞を聴かせたいっていうので、MP3でリリースする時は弾き語りでやったんですよね。だけど弾き語りで出してすぐくらいの時に、しんみりセンチメンタルに昔を思い出してっていうアレンジも良いんだけど、今回、このアルバムの中に入れる時にはほがらかにこの道を歩いている時に聴く感じが良いなと思って、それでリズムとかも変えてみようかなと思ったんです。
――今回のアルバムはどんな人達に聴いてもらいと思いますか?
染谷:もちろん全ての人にって思いますよね。さっき言っていた良い意味でリタイヤをして自分のワールドを作ってる人達もいると思うんですけど。例えばもう始まっている人とか歩き出している人の励ましとか支えになる歌っていうのでも良いなと思うし、くすぶっていてどうして行こうかなとか、そういう人達の中にもくすぶりがあるってことは、始まりの核みたいなのがあると思うんですよね。そういう人達にはすごく聴いてもらいたいと思いますよね。
――スタートしたいんだけど、でも今更かなって思っている人って多いですよね。
染谷:もちろんアグレッシブに今現在を一生懸命生きてて、精一杯やってて傷つきながらも前に進んで行こうっていう人達にもすごく響くと思うんですけど、頑張るんだって思って、頑張れてる自分もいるんだけど逆にすごい頑張れない日もあるじゃないですか。何だかウザイなーみたいな(笑)。でもそういう時にもヘッドフォンで聴いてくれれば良いなというか。頑張ってるヤツがこの中の主人公としているな、じゃあちょっとやってみようかなとか。そうやって考えてあっち行ったりこっち行ったりしながらくすぶってたり、諦めてたりしてない人達には是非聴いてもらいたいなと思いますね。――頑張れない人の方が多い気がするんですよね。頑張りたいとは思っててもなかなか上手く行かないから頑張らなきゃと思うわけですよね。それでは次の質問なのですが、シンガーソングライターというのは自分の中からゼロからものを作る仕事じゃないですか、それは少なからず身も心も消耗させたり、すり減らしたりして行く作業だと思うんですね。その中で染谷さんはすごいハイペースで作品を作り続けている思うんですが、どうしてそこまでして作品を作り上げようと思うのか、それは何が作らせようとしているのかなってすごく思うんですよね。
染谷:何ていうかあんまり「うわー、自分てすげーハイペースだな」とか「やってるやってる」とは思わないんですよね。どっちかって言うと作り上げた瞬間って氷山の一角じゃないですか、氷山の水面の中の方が多くて、すごい煮詰まったりとか考えたりすることの方が、日々多いんですよね。でもステージも作品もそうなんですけど、見えない部分をどれだけ何回も繰り返してやって行けば、人前に立ったり、人に対して伝えることに自信があったりとか。例えば「答えがわかんないんですよ、答えがないんですよ。」っていう最終的な答えがそれでも、人より倍、悩んで出した答えが「わかんないんですよ」だったら結構重いと思うんです。
自信を持って「わかんないんです。」って言えるっていうか、だけど考えてなくてテキトーにその場のノリで「わかんないんですよ。」っていうのはイヤなんですよね。それはいつも思ってて、例えば作品を作って、作ってっていうのがあったとしても、それはその流れの中でいろいろやってみて出来たら出来た、出来なかったら出来なかったっていう、自分の中ではその繰り返しなだけなんですけどね。でも今はその流れの中で作品として生まれているものがある、書き綴るものがあるっていうのがあったりしますね。これは染谷俊ってアーティストとかクリエイターとかそういうとこの意識ではなくて、一人間として生ききりたいみたいなのがあるんですよね。それは何でそういう生き方になったのかとか、自分ではわからないんですけど。
――何だかわからないんだけど・・・・。
染谷:(笑)何だかわかんないけど、何かこう生ききりたいみたいなとこはありますよね。どんどんダチと会う時間とかも少なくなったりとか、人と会う時間もなかなかなかったりとか。それは何でないかっていうと、たぶん自分が求めている時間がその倍以上、勉強したいなとか、ピアノに触れてたいなとかいうところもあるんですけど、でもダチと会ったりする時にやっぱりすごい貴重だったり、時間っていうもの、大きく見れば人生っていうものがやっぱり大切だな、かけがえのないものなんだなっていうのは、今すごく思うんですよね。そこでどれだけ生ききるか、生ききりたいなっていうところがあるんですけどね。
――それは腹を決めちゃってるんですかね。
染谷:まだそのやり切れてない部分とか憧れる部分とか、例えば坂本龍一さんとか後は名前も知らないけれど思い浮かぶのは、音楽というものを身にまとって絵を描きながら世界中を子供達のところに渡り歩いたりとか、音楽っていうものがないようなところに行って音楽を奏でたりとか、そういう人達に憧れたりとかするんですけど、でもそこまではまだ到達出来てないし、その人達もすごいけど、自分が今やっている渋谷とか四谷とか、場所はどこでも良いんですけど、そこで30分ステージとか2時間ステージとか、MP3で発表とかそういうところで精一杯やっていれば、感情とか生き方っていう部分では一緒になれるかなって思うんですよね。そこをどこまでやれるかいうのはいつも思ってますよね。
――きっとまだ途中っていうことですよね。
染谷:そうですね、まだいろいろやってみたいことはいっぱいありますよね。
――染谷さんにとって歌うということはズバリどういうことですか?
染谷:うーん、まぁ、息しているようなもんですよね。
――じゃあ、なくてはならないものですか?
染谷:あんまり意識なくっていうか、たぶん生きてることの一歩、顔を洗うとかものを食べるとかと一緒で、何を歌うかっていう、その「何を」っていうのがすごい大事ですね。
――今回のアルバムのタイトルと繋がるところで、染谷さん自身が今、スタートしたいと思っていることはどんなことですか?
染谷:“自分探しという名のmy road”っていうライブがスタートしたばっかりで、あれなんかほんとそうですけど、新しくなんかやりたいんだけど何しようかな、そして自分探しっていうキーワードが出て来て、おっきいキーワードだし始まったばかりだから、これからどういう風に内容を変えて行こうかなって思ってますね。
あとね、自分らしさを突き詰めて行った時に作品としてやりたいのがピアノなんですよね。そこに弾き語りでも良いし、リズムが入って来ても良いしっていうとこで、そのピアノのパターンでしょうね。クラシックとかクラシックが入っているポップスな感じとかジャズとかコード感とか、そういうピアノをより血にしてくっていうことで、今、毎朝弾いているんですけれど、そこが今からスタートっていうのがすごいありますね。
――それは染谷さんにしか出せないピアノ。
染谷:うん、ジャズ、クラシック、ポップスって分けるんではなくて、全部融合して自分の中から出したものが染谷のピアノってなれば良いんだけど。それにはそこにミックスジュースみたいにぶっこんで行くテイストとしてジャズもほしいし、クラシックもやっぱり古典から近代まであるから、そこの部分を一回さらってみるとか、コード感も今まで俺が知らなかったコードとかもいろいろあると思うんで、そういうのも勉強してみるっていう。いろいろ勉強してぶっこんでみて、今度は血として肉としてオリジナルというものに反映して行くもの、考えずにそれが出来ちゃうっていうようなピアノの勉強を始めてる感じですね。
――それはきっと原点という事で『Anthology』とかにも通じることですよね。
染谷:そうですね。
――それでは最後に皆さんに向けてメッセージをお願いします。
染谷:アルバムを作る上で毎日、何かDiaryに書き綴ったりとか手紙をもらったりしてて、目に映るものとかで最近よく感じるんですけど、何かしらやっててみんな頑張ってるなと思うんですよね。
それぞれのやり方があると思うんだけど、きっとダメになりそうな時の方がたぶんいっぱいあって、自分なんかもそうなんですけど。でもバランスをとって何とか生きてるじゃないですか、なんかそれがすごいなとか思うんですよ。
ここに来る時も駅の階段上った時にすれ違う人とかも、何か怒ってるのかなみたいな顔をしてる人もいれば(笑)、何も考えてないなって人もいるけど、でもそれぞれがそれぞれの暮らしの中で頑張ってるなと思ってて、そんな中でみんなが声にはならないけど心の中にどっかにひっかかってるような気持ちや生きてるっていうことの破片みたいなことを、自分の中で綴ってこれからも歌って行きたいなって思うんです。
生きているんだよなぁってことをフッと感じたいなって時には、自分はそういう部分を意識して歌を書いているのでアルバムを聴いてもらいたいし、迷ったり、そういう迷いも全て浄化したいなと思った時には、そこに生きてる人間として自分は精一杯ステージに立ってるから、そのステージの歌を聴きに来てもらっても良いし、歌が響かなくても、ここに生きてるヤツがいるんだなっていうのを確かめにライブに来てもらいたいなと思いますね。
――ありがとうございました。
◆プロフィール◆
(Text By Takahashi)