商品説明
ノーベル賞候補だった日本社会のスーパースターは一九七〇年、自衛隊に乗り込んで派手な自決を遂げる。この事件のもつ意味を、どうすれば理解できるのか?その最大の鍵は、自伝的作品『太陽と鉄』にあった。「これがわかれば、僕のやっていることが全部わかる」と三島自身が評した本作に基づいて、本書は、「言葉」と「現実」の関係の必然的な展開として、作風の変遷と作家の「思想」の構造を精確に描き出す。衝撃の「三島事件」から半世紀後にようやく登場した、気鋭の批評家による簡明かつ本格的な三島由紀夫論。
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収録内容
1 | 序章 「本当のことを話して下さい」(三島由紀夫のドッペルゲンガー―「荒野より」 |
2 | 三島由紀夫の「秘められた思考」―『太陽と鉄』の弁証法 |
3 | 三島由紀夫の「思想」を読むということ―本書の方法) |
4 | 1 「椿事」を夢見る少年(「女の部屋」から生まれた文学―三島由紀夫の幼少年期 |
5 | 白蟻に蝕まれた白木の柱―『太陽と鉄』(1) |
6 | 少年のナルシシズム―「酸模」と「詩を書く少年」 |
7 | イロニーとしての「海」―日本浪曼派と「花ざかりの森」 |
8 | 「椿事」を夢みる少年―「煙草」が描く火事) |
9 | 2 古典主義の「resignation(忍苦・諦念)」(「戦後」に生き延びてしまうということ―三島由紀夫の挫折 |
10 | 「夜の思考」から抜け出すために―『盗賊』から『仮面告白』へ |
11 | 「太陽」に照らし出された「肉体」―『太陽と鉄』(2) |
12 | 古典主義の「rosignation(忍苦・諦念)」―「海と夕焼」 |
13 | 三島由紀夫の「コンフェッション」―『金閣寺』) |
14 | 3 「われら」に向けての跳躍(永続することのない「陶酔」―『鏡子の家』のニヒリズム |
15 | 「死」を呼び寄せる「肉体」―『太陽と鉄』(3) |
16 | 「至福」というものの姿―「憂国」と二・二六事件 |
17 | 「敗北」の形而上学―「天皇」・『サド侯爵夫人』・『わが友ヒットラー』 |
18 | 「われら」に向けての跳躍―『太陽と鉄』と「文化防衛論」) |
19 | 終章 「肉体」より先に「言葉」が訪れるということ(三島由紀夫の「宿命」―エピローグ「F104」 |
20 | 「安全弁の欠如」について―「林房雄論」 |
21 | 戦後日本とポストモダン―三島由紀夫と私たち) |
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