ソフトロックの魅力
美しいメロディとコーラス、適度なビート感があるポップな音楽。日本では60年代末~70年代はじめぐらいの音楽を指すことが多いです。この名称は80年代末~90年代ごろから使われ始めたと思われます。当時往年の楽曲のリイシューが進み、過去の良質な音楽が入手しやすくなったことや渋谷系のミュージシャンがその影響下にある楽曲を発表するなどの事から浸透していったようです。ここで大事なのは過去の音楽を「懐メロ」として聞くのではなく現在の観点から評価するという点です。
「ソフトロック」という名称は日本での造語です。海外での「ソフトロック」は文字通りソフトなロックを指しています。ハードロックに対するソフトロックということですね。最近では日本流ソフトロックの感覚が輸出されていて、主に「サンシャインポップ」と呼ばれています。
ソフト・ロックというのはいわゆるジャンルではありません。ある空気感、雰囲気を持ったものです。その中にはボッサ、ラテン、ソウル、ジャズの要素も含まれるものもあり、範囲は曖昧です。
そもそもロックじゃないことの方が多いですね。ソフトロックの多くはプロ・職人集団によって制作されています。作曲家、編曲家、スタジオ・ミュージシャン、それをまとめるプロデューサー。つまりライブよりスタジオレコーディングのほうに重点を置いています。
ビート感があるところから「ロック」が付いた(付けた)理由かもしれません。あるいは、ペリー・コモやアンディ・ウィリアムスのような以前のポップスと区別する意味での「ロック」なのかもしれません。ロックンロール以降の若い職業作曲家達はロックンロールの洗礼を受けており。リスペクトもしている。レコード会社も若い感性が欲しかったので採用される。そんなところから「ロック」を内包したポップスが生まれ、60年代のティーンのように、90年代以降の日本の音楽ファンにはそうした音楽を嗅ぎ分ける感性があったのかもしれません。
柔らかな日差し、優しいそよ風を思わせ、開放的で自由な雰囲気、60年代的なちょっぴりサイケな感触、ラヴ&ピース、そんなところが日本の音楽ファンに受け入れられたのでしょう。
今回のリイッシューは定番アルバムから長らく廃盤だったものや初CD化されるものなど全部で50枚。どれもはずれなしの素晴らしい作品ばかりです。幸せな音楽体験を提供してくれることに間違いなしです。