埼玉はナメられ過ぎている

ときにダ埼玉(ださいたま)と揶揄され、都道府県魅力度ランキングでは45位(下から3つめ!)と低迷し、事あるごとに嘲笑の的となってきた埼玉県。

埼玉県民は知っている。埼玉には観光地がない(川越?秩父?結局日帰りで済んでしまうのだ)、遊ぶ場所がない、他県に誇れる名物も何だか弱いことを。

ただ、埼玉県民は慌てない、怒らない、悲しまない、自虐を楽しむ余裕すらある。

埼玉県民は知っている。これといった特色がないからこそ、昔から数多の小説や映画、アニメにおける“普通の土地”の舞台たりえることを。そう、埼玉は名作の母なのだ。埼玉はナメられ過ぎている。


埼玉が舞台
越谷レイクタン。美しさしかない。

翔んで埼玉

『パタリロ!』で知られる魔夜峰央による一時は絶版となっていた埼玉ディスの漫画が、2015年あたりから再び脚光を浴びはじめ発行部数も50万部を突破。埼玉県知事にもお墨付きをもらうまでのムーブメントに。

さらに、二階堂ふみとGACKT主演で映画化され大ヒット。続編まで製作されるほどの盛況である。

「埼玉県人には、そこらへんの草でも食わせておけ!」

あんまりである。ただ、埼玉県民は怒らない、自虐的に楽しんでいる、と思う。だってブームに乗って「そこらへんの草」グルメが売り出されたぐらいだから。

キューポラのある街

舞台は川口市。キューポラとは鋳造工場の溶解炉のことで、川口市は鋳物の一大生産地として知られる街である。

映画版の主演は16歳の吉永小百合。もう一度言わせてほしい。当時アイドルとして一世を風靡していた吉永小百合である。気品あふれる昭和の大スターが主演を務める街、それが気品あふれる川口市なのだ。

クレヨンしんちゃん

舞台は春日部市。いまや春日部市のイメージキャラクターを務め、全国区の人気を糧に聖地として市の活性化の一端を担っている。

春日部はノリがいい。作品に登場する「サトーココノカドー」のモデルとして、イトーヨーカドー春日部店が全乗っかりで看板を描き替えてしまうなど地域ぐるみで良好なコラボを展開している。いいぞ、埼玉県。

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない

舞台は秩父市。アニメには秩父橋、秩父神社、羊山公園など秩父に実在する様々な場所が登場し、「あの花」ファンによる聖地巡礼で大変な賑わいを見せている。

埼玉県は「あの花」以外にも数々の名作アニメの舞台やモデルとなっており、聖地巡礼のメッカなのである。県や市町村の観光課も積極的にコラボしている。言葉は悪いが、すがっているのだ。でもそれでいいじゃないか、埼玉だって人気者になりたいんだ。

童夢

トリは世界の大友克洋である。舞台は川口市にある芝園団地。世界の大友克洋の初期作品であり『AKIRA』の原型ともいわれている。世界の大友克洋が舞台に選んでいる。世界の大友克洋が、だ。恐れ入ったでしょう。

モデルとなった芝園団地は、かつて世界初の新幹線が製造された国鉄の車輌製造工場の跡地に建設されたマンモス団地である。近年は居住者の半数以上が外国人となったことで一部ネット界隈をざわつかせ、社会部ニュースとしても度々取り上げられている。

作中ではモデルの芝園団地が豪快に破壊されたり、凄惨なホラー描写もあり、当時の団地住民が戦慄を覚えながら鑑賞していたことは想像に難くない。

実際の埼玉県があんなホラーだったら、とてもじゃないが住めたものじゃない。