さて、Shibuya AXでの東京公演当日、特別任務を拝命していたNeowing取材班は、ショウ開演の数時間前には早くも会場を訪れていた。今回の特命とは、そう、キタ(ドラムス)&アヴァ(キーボード)への突撃インタビューである。ローディの魔力に引き寄せられた漆黒の暗雲が低く垂れ込める中・・・というのはウソで、春とは思えない強い日差しがさんさんと照りつける中、汗だくで会場へと到着した取材班は、さっそく任務を遂行すべく、会見場所に指定されたShibuya AXのドレッシング・ルームへと歩を進めていった。
と、廊下の途中でミスター・ローディ(ヴォーカル)にばったり遭遇! 首領はなにやら慌しく開演前の準備に追われている様子ではあったが、取材班の姿を認めると人懐こい笑顔とフランクな挨拶をくれ、そのまま足早に向かいの部屋へと消えていった。取材班は512の経験値を得た。・・・かどうかは不明だが、新しいスキル“おすすめアルバムを5枚挙げてもらう”が使えるようになったのを実感しつつ隣のドレッシング・ルームにて待機していると、じきキタとアヴァが現れた。ご両人もまた、見目麗しいお顔(実際、お2人はかなりの美男・美女!)にはゴキゲンな笑顔が浮かんでいる。
かくして始まった取材、もとい特命の成果は、以下のとおり。昨年9月に初めてインタビューさせていただいた際(初来日インタビュー記事&動画コメントはこちら!)にも同じことを感じたが、グロテスクなマスクの下に隠された彼らの素顔、心づくしのサービス精神とプロフェッショナル魂はやはり素晴らしく、すがすがしい。ジョーク好きだが語るべき時には熱く語るキタ、丁寧なコメントに優しく生真面目な性格をうかがわせるアヴァ。会見を和やかに有意義に進めてくれたお2人に、ここで改めて感謝いたします。ありがとうございました!
インタビュー with キタ&アヴァ
――現時点での最新作「デッドエイク」がリリースされたのは昨年10月でしたから、これまでにかなりツアーもやってきたのではないかと思います。これまでのところ、ツアーの成果はいかがですか?
キタ:それが大変でさ・・・って、ウソウソ。(笑) アルバムをリリースした後、1ヶ月ほどアメリカを廻り、それから2週間ほど休みを取って、2ヶ月間のヨーロッパ・ツアーをやったんだ。16の国で38回のギグをやったよ。だからほとんどバスの中で生活していたような感じだったね。総勢18人が2ヶ月間、同じバスの中で寝起きしていたんだ。大変だったけど、あれは楽しかった。ファンは新しい曲をかなり気に入ってくれていたし、俺達のステージももっともっとシアトリカルなものになったから。俺達自身、以前より演技っぽいことをやるようになったんだ。ついでにモンスターはステージ上でもっとたくさんの人を殺してるよ。(笑) アメリカやヨーロッパのファンはそういうショウをとても気に入ってくれたから、日本のファンにもきっと気に入ってもらえると思う。
――バンドの人気を確立しての今回のワールド・ツアーですから、初めて公演が組まれた国もいくつかあったようですね。中には文化や習慣の違いに驚かされるようなところもあったのではないですか?
キタ:まさに今がそう!(笑)
アヴァ:私はブルガリアにすごくショックを受けたわ。EU加盟国なのに、すごく貧しくて・・・。こう言うとすごく失礼だと思うけど、とても西側の国とは思えないほどだったの。もちろんオーディエンスは素晴らしかったけど・・・。ルーマニアもそうね。ともかく、私個人としては、ブルガリアにはとてもショックを受けたわ。
キタ:ああ。でも、ファンのみんなは俺達をとても歓迎してくれた。俺達がブルガリアに来たことをすごく喜んでくれたんだ。そして大きなホールでプレイさせてくれた。ちなみにそのホールは、俺達がプレイした後、取り壊されてしまったらしいんだ。だから、ローディがあのホールでプレイした最後のバンドってことになる。他にも初めて行った国はいくつもあったよ。アイルランドも初めてだったし・・・
アヴァ:スロヴェニアもね。とてもきれいな国だったわ。それからハンガリーも。
キタ:最近は特に東ヨーロッパでローディの人気が高まっているんだ。それに「ハード・ロック黙示録」を出した頃は、『ユーロヴィジョン』の影響もあって、たくさんの人達がショウを観に来てくれていたけど、最近のツアーでは本物のファンがもっとたくさん来てくれるようになった。例えば、イタリアとか。あの国は『ユーロヴィジョン』とはあまり関係がないから、「ハード・ロック黙示録」を出した後でも観客は200人くらいだった。ところが、今回のツアーでは1,000人ものオーディエンスが来てくれたんだ。
もちろん、『ユーロヴィジョン』で優勝したのなんてもう3年も前の話だから、俺達ももはや意識はしていないよ。ただ、以前のように“『ユーロヴィジョン』で優勝したバンドだから観に来た”というのではなく、“ローディの音楽を聴きたいから来た、ローディのショウを観たいから来た”という本物のファンがショウにたくさん来てくれるようになったのはやっぱり大きいと思うんだ。素晴らしいことだと思う。
――ファンベースの拡大という点で言えば、本格的にアメリカのマーケットに食い込んだという意味で、2007年の『オズフェスト』メインステージに参戦したことも大きかったのではないかと思います。実際に参加してみて、手ごたえはいかがでしたか?
キタ:やはりまずは“夢が叶った”という感じだったね。オジー(オズボーン)と同じところに参加できたこと自体が名誉なことさ。ツアーも全体的に良かったし、もちろん俺達にとっても良いチャンスになった。そもそもあのツアーでパイロ(注:火薬を使った演出のこと)を使ってるのなんて俺達だけだったから、俺達がステージでパイロを使うと、“一体何やってんだ?”って感じで観に来てくれる人達が結構いてさ、それで“ふ~ん、ローディってバンドか”と名前を覚えてもらうこともできた。実際、『オズフェスト』の後に俺達だけでツアーをやった時、「あなた達のライヴを『オズフェスト』で初めて観たんです。あの時はローディが何者なのかまったく知らなかったけど、あそこで観て大ファンになりました」と言ってくれたファンもいたよ。
――毎年たくさんのバンドが出ているので一概には言えませんが、『オズフェスト』出演ラインナップの多くは若いトレンディなバンドだったりもします。しかしここ数年、アイアン・メイデンやジューダス・プリーストといったヘヴィ・メタルのオリジネイター達の出演も続いていました。アメリカのキッズの間でも80'sヘヴィ・メタルの人気が復活しているような印象を受けるのですが、あなた達自身の印象はどうでした?
アヴァ:そうね・・・“ついに本物の音楽が復活したんだ”と感じてくれた人達も確かにいたと思うけど、その一方で、“ポップすぎる”と感じた人達もいたみたいだから・・・当たり前のことだけど、みんなを一度に満足させることなんて出来ないでしょ?(苦笑) でも、あそこで初めてローディを観た、ああいうショウを初めて体験した、私達のメロディックな音楽を初めて聴いたという人達がたくさんいたことも事実ね。
キタ:確かに『オズフェスト』に出てるバンドのほとんどがメタル・バンドだから、そんな中だと、俺達とオジーはどちらかというとソフトな部類に入る。オジーの音楽もそうだけど、俺達の場合もリフとメロディがどちらも入っているだろ。だからこそ、ああいう場所に出られて良かったというのはあると思うんだ。それにオジーや彼のクルー達がローディの音楽をすごく気に入ってくれて、俺達にすごく良くしてくれた。そういうのも素晴らしいところだったね。
――聞くところによると、アイアン・メイデンやジューダス・プリーストは『オズフェスト』の観客にも熱狂的に支持されていたようです。80年代に彼らの音楽をリアルタイムで体験していた世代と、当時を知らないキッズとが同じように彼らのショウを楽しんでいたそうですが、ローディのファン層も、実は世代を横断していそうですね。
キタ:そのとおり。かつてはロックンロールって“子供は大好き、親は大嫌いなもの”だったけど、今ではもう変わってしまったんだろう。もちろん、俺達の場合も、それぞれの国によって事情は違っているよ。例えばドイツなんかだと、デニムジャケットにアイアン・メイデンのパッチを貼り付けた30代の男がたくさん来るような感じだけど、スウェーデンでは、小さな子供達が親と一緒に来てたりするんだ。ある時なんか、客席の前の方にちっちゃな子供達がズラ~ッと並んでて、“おっと、ここは幼稚園か?”と思ったくらいだった。(笑) すごくびっくりしたよ。あれはなんか変な感じだったな。
でも、改めて自分のことを振り返ってみると、俺だってKISSのことを初めて知ったのは10歳の頃だったからね。1985年頃のことさ。当時フィンランドでは、KISSはものすごく人気があったんだ。当時のKISSファンの中で最も若い世代がフィンランドやスウェーデンにいたんだよ。10歳くらいの子供達はみんな「KISS!」と言っていたね。で、初めてKISSのショウを観に行ったのが1988年だったかな。俺は14歳だった。7歳の弟と一緒に母親に連れて行ってもらったんだ。それはもう大騒ぎでさ。(笑) スウェーデンでは今でもそんな感じで、KISSファンのお父さんに連れられてローディ・ファンの子供達がショウに来てたりする。なんだか妙な気がするよ。(笑)
――80'sヘヴィ・メタルといえば、2007年の初来日公演の時、キタはドラム・ソロの間に当時の有名な曲の一節を織り込んでいましたね。KISSやモトリー・クルー、スキッド・ロウなどの曲だったと記憶していますが、あなた自身、当時を知らないキッズに自分達の影響源を知ってもらいたいという気持ちはありますか?
キタ:今度のツアーではドラム・ソロはやってないけど、あの時は、自分の好きな曲でドラムを叩きたい、ドラムで何かクールなことをしたい、と思ってやったんだ。ローディのことを好きな人達は、たぶん彼らのことも好きだろ? それにもし、彼らみたいなバンドを知らない人達がいたら、ああすることで推薦することだってできる。「ディープ・パープルの“紫の炎”を知らないのかい? だったらチェックしてみろよ!」とね。面白いことに、トゥイステッド・シスターの曲をやると「イェーーーッ!」と騒ぐ人達がこっちの方にいて、マリリン・マンソンの曲をやると「ワーーーッ!」と騒ぐ人達があっちの方にいるという、そういうことも起こるんだ。素晴らしいことだと思うよ。
――同感です。では、ここで改めて、あなた達が影響を受けた、ローディのファンに聴いてもらいたいアルバムを5枚ほど挙げていただけますか?
キタ:え~っと、まずは、KISS「地獄の軍団(原題:Destroyer)」だね。あれは良いレコードだ。せっかくだから「クレイジー・ナイト」もぜひチェックしてもらいたい。違うバンドの作品みたいで、かなり違っているから。それから、モトリー・クルー「シャウト・アット・ザ・デヴィル」、トゥイステッド・シスター「ステイ・ハングリー」。W.A.S.P.「ザ・ラスト・コマンド」もよく聴いたなあ。あと、アリス・クーパーも。「ビリオン・ダラー・ベイビーズ」か「トラッシュ」。これまたかなり違う感じのアルバムだから、聴き比べてみるのも面白いよ。
アヴァ:私は・・・キタに全部言われちゃったわ。(笑) でも実際、彼の挙げたアルバムは私にとってもフェイヴァリットなものばかりだから、違う答えをするとなると・・・もしポップスも好きな人がいたら、デペッシュ・モード「ヴァイオレーター」をおすすめしたいかな。
――ありがとうございました。では最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。
キタ:学校辞めんなよ!(爆笑) いつも言ってることだけど、みんなにはとにかく感謝してる。俺達がここにいられるのも君達のおかげなんだからね。ファンがアルバムを買って、ショウを観に来てくれるおかげで、俺達はこれを続けていられるんだ。みんながサポートしてくれなくなったら、俺達もオシマイさ。だからファンのみんなには本当に感謝している。ショウにも期待してくれよな。きっと楽しいものにするから。
アヴァ:私も心からありがとうと言いたいわ。日本は大好きよ。食べ物も美味しいし。お寿司は大好物なの。
キタ:俺も昨日の夜、日本のビールをたくさん飲んだよ。今朝からなんだか二日酔いっぽいんだけど、日本のビールには何か入ってんのかい?(笑)
来日公演 潜入ライヴ・レポート
Live At Shibuya AX, Tokyo on April 15th 2009初来日公演より2年を経て実現したローディ二度目のジャパン・ツアー、その初日となった東京・Shibuya AX公演は、上記インタビューでキタが明らかにしてくれていたとおり、以前よりもっとシアトリカルで、もっとエンターテインメントで、もっとたくさんの人間がステージ上で殺される(笑)、前回以上に毒々しく華々しいものであった。一言で表現するなら、まずもって“スケールアップ”。前作「ハード・ロック黙示録」を携えて世界各地を忙しく転戦、度重なるライヴでの経験を確実に血肉に変えてきた歴戦のモンスター軍団は、演奏面においても、演出面においても、驚くほどの進化を遂げていた。
やはり真っ先に眼を奪われたのは、そのエネルギッシュなパフォーマンスとシアトリカルなステージ演出。正直なところ、初来日公演のステージでは、演奏面にいささか不安を覚える場面もあったのだが、今回は危なっかしいところなどほとんど皆無。ハード・ロックならではのアグレッシヴなドライヴ感を存分に生かしつつ、ポップなヴォーカルやキャッチーなメロディ/ハーモニーの魅力もしっかりと押し出していくエキサイティングな演奏は、実戦経験の繰り返しによって強化されたものに違いない。フロアの反応をうかがいながら盛んにオーディエンスを煽っていくステージングも実に鮮やかだ。
ロッキングチェアに揺られる腐敗した少女、優雅なダンスの後アヴァ(キーボード)に刺殺される男性、エジプトのミイラに扮するエイメン(ギター)など、ホラー映画さながらのグロテスクな演出や小道具も前回以上に気が利いている。生首を刈り取るキタ(ドラムス)やオックス(ベース)のベース・クラッシュ、さらには『ノートルダムのせむし男』みたいな小男やフードを目深に被った不気味な修道僧の登場など、ツアーのスタッフも巻き込んでめまぐるしく繰り広げられる一大ハード・ロック・ホラー・ショウは、メンバー自身も太鼓判を押していたとおり、かなりシアトリカルでエキサイティングだ。しかもこうした演出をこまごまと演奏の合間にこなしていくのだから、ステージ上から少しも目を離すことができない。演奏と演出ががっちりかみ合った今回のパフォーマンスは、観ていてとても気持ちがいい。
むろん、そんな優れたショウの牽引役であり絶対的な求心力となっているのが、首領ミスター・ローディ(ヴォーカル)氏だ。図太いダミ声を轟かせてキャッチーなメロディ・ラインをパワフルに歌い上げ、曲毎に異なるコンセプトに合わせて衣装や小道具を様々に変え、もはや世界標準となったローディ流モンスター・ハード・ロックに実戦の現場らしい生々しい生命力を与えていく首領の堂々たるオーラは、ステージの上でこそ最高に輝くことがよくわかる。そして改めて言うまでもなく、今夜の彼の輝きはまぶしいくらいである。
新作「デッドエイク」の曲とライヴ定番の旧曲をバランス良く織り交ぜた本編から、駄目押しとばかりに「Would You Love A Monsterman(モンスターマン)」「Devil Is A Loser(負け犬悪魔)」「ハード・ロック・ハレルヤ」の人気曲3連発をかましたアンコールまで、ほとんど息つく暇もないほど盛りだくさんの趣向が凝らされていた今回の来日公演。90分ほどのステージは、期待に違わずジェットコースターのようなスリルと興奮をたっぷり味わわせてくれるものであったが、その訴求力や完成度は明らかに前回以上。いや、別次元のエンターテインメントだったとさえ言っていいと思う。ここ数年バンドとしての最高到達点を更新し続けているローディの、確かなスケールアップを実感させる大満足のショウだった。
Set List
01.intro~Girls Go Chopping02.They Only Come Out At Night
03.Raise Hell In Heaven
04.Bite It Like A Bulldog
05.Who's Your Daddy?
06.Blood Red Sandman
07.Man Skin Boots
08.keyboard solo~Deadache
09.Monster Monster
10.It Snows In Hell
11.Wake The Snake
12.Dr. Sin Is In
13.Missing Miss Charlene
----------encore----------
14.Would You Love A Monsterman
15.Devil Is A Loser
16.Hard Rock Hallelujah~outro