多幸山

りんけんバンドの歌姫、上原知子のルーツ・ソングス。待望のソロ5作目は、全曲本人の選曲と演奏による古き沖縄民謡集。6歳で、一世を風靡したファミリーバンド"糸満ヤカラーズ"の舞台に立ち、すでに半世紀近くも歌い続けてきた彼女の根源にあるのは、父であり師である、故上原長孝から歌い継がれた島の歌々。歌が、日々の糧であり、祈りであった頃の純粋な"歌力(ウタジカラ)"が、ますます円熟味を増すその歌声によって、再生された。レコーディングは、沖縄・北谷にある海が見えるプライベートスタジオで、プロデューサーの照屋林賢とたった二人、あとはエンジニアだけという静かな環境で行われた。歌、三線、太鼓。ここに収められている音は、すべて上原知子一人が紡ぎ出したもの。シンプルゆえに、本物の"歌力"を堪能できる珠玉のアコースティックアルバムだ。時に、"天上からの歌声"と表現される彼女の歌声だが、このアルバムを聞くと、決してそうではないことがわかる。彼女の歌は、降り注ぐだけのものではない。沖縄の地に根を張り、足元から伝わる地熱を聞き手の腹わたにまで届ける、そんな足元から沸き上がる音楽なのだ。