RIGHT OUT!

もし、あなたが、耳にタバコをはさみながらベースを弾くポール・シムノンや、ドラマ『傷だらけの天使』のオープニングでショーケンがトマトやコンビーフにかぶりつく姿や、トレンチコートの襟を立てて闊歩するポール・ウェラーや、タイトな3つボタンスーツに身を包んだ伊達男集団・スペシャルズ…らに一度でもカッコよさを感じたことがあるなら、THE ZOOT 16の新作『RIGHT OUT!』は、たまらない1枚になることだろう。SOULSETの存在を知ってから、かれこれ10年近く経つけれど、彼らの音楽に対する向かい方をみると、いつも寡黙なサムライのようだなと思う。各人の役割分担が明確で、それぞれのテリトリーには安易に踏み込まない。セッションや密接な共同作業でわいわい言いながら曲を作り上げていくバンド・スタイルとは異なり、そこにはムダ口や寄り道は許されないようなキンチョー感がある(ように見える)。そのキンチョー感こそが、どこにも属さないSOULSETワールドのゆえんでもあるのだろうが、THE ZOOT 16における渡辺俊美はもっとラテンのノリだ。寡黙なサムライも口説くときゃ口説く…そんな、あけすけな情熱とロマンチシズムがほとばしっている。1曲1曲の尺も長いし、アレンジも音数も濃い。どっちかというと押しの一手。そんなパッショネイティブなサムライ具合に、渡辺俊美というひとの本質、彼の心奥に潜む男気をひしひしと感じるのだ。～資料より抜粋～(結城雅美)