過去20年にわたる二酸化炭素による地球温暖化を虚構と見抜き、東日本大震災の後に反原発運動とセットで登場した自然再生エネルギーへの過大な期待にも距離を置く。このバランス感覚が従来の環境問題書にはなかった。これこそが社会学のエッセンスだろう。マートンの機能分析を駆使した潜在的逆機能論は、地球寒冷化の危険性や原発停止が引き起こす電力不足による社会的混乱を予見する。あとがきで紹介された「ビキニ死の灰」をめぐる清水幾太郎の勇み足にも注目したい。
環境問題の知識社会学 歪められた「常識」の克服 (叢書現代社会のフロンティア)
金子勇/著
金子勇/著
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商品説明
「二酸化炭素地球温暖化論」には本質的に虚構の推論がある。それがもたらす「誤作為コスト」への懐疑を軸に、大規模自然環境破壊を前提とした「自然エネルギー発電」がもつ希望的観測の限界に正攻法で取り組んだ。「環境・社会・個人」を包括する知識社会学の手法で、日本社会の創作的環境言説を摘出し、東日本大震災からの復興を見据えた本格的な環境社会への再生を提示する。
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収録内容
1 | 第1章 社会学の環境論(環境の社会学的理解 |
2 | 社会システムと社会的共通資本 |
3 | 環境科学知識の活用条件) |
4 | 第2章 環境と電力問題の知識社会学(リスク社会の集合的ストレス |
5 | 「三・一一」における被災の実態 |
6 | 自然再生エネルギーへの国民共同の疑問 |
7 | 人間集合力とコミュニティの探求 |
8 | コミュニケーション絆の復興再生) |
9 | 第3章 懐疑派から見た二酸化炭素地球温暖化論(二酸化炭素をめぐる非科学性 |
10 | 科学的知識の信頼性 |
11 | 環境知識の功罪 |
12 | 不合理性をもつ二酸化炭素地球温暖化論 |
13 | 正しい環境理解に向けて |
14 | 自然認識の知識社会学) |
15 | 第4章 地球温暖化対策論の恣意性(政府主導の「二重規範」 |
16 | 「国家先導資本主義」社会の成立 |
17 | 環境の機能分析 |
18 | 二酸化炭素地球温暖化論の科学パラダイムへの変換) |
19 | 第5章 持続可能性概念の限界と見直し(サステナブル都市 |
20 | 二酸化炭素地球温暖化論の問題点 |
21 | 自治体の地球温暖化対策の問題点 |
22 | 化石燃料エネルギーの使用状況 |
23 | 国民の環境意識と保全活動 |
24 | 持続可能性概念の見直しと自治体政策の方向) |