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商品説明
日本の現代史が塗り替えられようとしていた時代であった。東京オリンピック開催を来年に控え、東海道新幹線は開業に向け着々と工事が進められていた。日本で初めての自動車専用道路、名神高速道路の一部開通も二ヵ月後に迫っていた。黒四ダム発電所も稼働しようとしていた。戦後の日本経済が唸りを挙げて動き出そうとするとき、古都京都でも時代の流れに取り残されまいと人々は模索していた。古都の北東、学生寮の一室で、一人の浪人生が、昼夜机に向かい大切な人との約束を果たすべく、夢を追っていた。「そうだ、京都にしよう」これから始まる一年間の浪人生活を、伝統と四季に彩られる古都で送ることを決意したのである。―京の街に祇園囃子が流れるころ、「監禁生活」に身を投じたはずの若者達は、悶々とした苦痛の中にいた。自由を謳歌すべき青春のこの日々を、受験というしがらみを引きずったまま、今日も懸命に生きていた。三部作・浪人編。