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商品説明
物心ついたとき、わたしはもう「幕屋」で暮らしていた。そこは、今でいう「シェアハウス」のような場所で、神様の話をする「先生」のもと、風俗と覚しき仕事をしている女の人や、行き場のない母子が共同生活を営んでいた。先生を崇拝していた母は、少ない稼ぎのほとんどを幕屋に入れ、「ほんまに立派な人なんやで」が口癖だったが、父親の記憶がないわたしは、大人の男性である「先生」と、どう接していいか分からずにいた。そんなある日、先生の小さな嘘を知ったことをきっかけに、わたしと先生は、誰にも言えない、「秘密の儀式」の共犯者となる。―あのことは、決して「なかったこと」になんかできない。貧困、いじめ、共同生活、シングルマザー、そして信仰。親が子の幸せを願うとは、いかなることか?親子とは、いったい何なのだろうか?