商品説明
「われわれは一人の若い定家を持つたのである」と三島由紀夫にいわしめた建の生涯を追う。『未青年』を超える世界が現れた最終歌集『朝の水』を読んだら、三島はなんというだろう。
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収録内容
1 | 大空の斬首ののちの静もりか没ちし日輪がのこすむらさき |
2 | 童貞のするどき指に房もげば葡萄のみどりしたたるばかり |
3 | 海鳴りのごとく愛すと書きしかばこころに描く怒涛は赤き |
4 | ミケランジェロに暗く惹かれし少年期肉にひそまる修羅まだ知らず |
5 | 火祭りの輪を抜けきたる青年は霊を吐きしか死顔をもてり |
6 | 狼少年の森恋ふ白歯のつめたさを薄明にめざめたる時われも持つ |
7 | 火の剣のごとき夕陽に跳躍の青年一瞬血ぬられて飛ぶ |
8 | 行き交へる男女が一瞬かさなれるはかなき情死をうつす硝子戸 |
9 | ヴェニスに死すと十指つめたく展きをり水煙りする雨の夜明けは |
10 | 両の眼に針射して魚を放ちやるきみを受刑に送るかたみに〔ほか〕 |
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