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商品説明
近現代日本文学の書き手たちは、同時代の理論物理学やその周辺領域の学知に、どのような思考の可能性を見いだしていたのか。「合理」的なものの見方を突き詰めていたはずの作家たちの方法意識が、時として「非合理」的な情念へと転化するのはどうしてなのか。本書は、その総合的な表現営為のありようを検討することを通じて、モダニズムの文芸思潮から今日のサイエンス・フィクションにいたるまでの芸術様式の系譜を再考することを試みたものである。
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収録内容
1 | 思考の光源としての理論物理学 |
2 | 1 文芸思潮と理論物理学の交通と接点(「科学的精神」の修辞学―一九三〇年代の「科学」ヘゲモニー |
3 | 「現実」までの距離―石原純の自然科学的世界像を視座として |
4 | ジャンル意識の政治学―昭和初期「科学小説」論の諸相) |
5 | 2 横光利一の文学活動における理論物理学の受容と展開(新感覚派の物理主義者たち―横光利一と稲垣足穂の「現実」観 |
6 | 観測者の使命―横光利一『雅歌』における物理学表象 |
7 | 「ある唯物論者」の世界認識―横光利一『上海』と二〇世紀物理学) |
8 | 3 モダニズム文学者と数理諸科学の邂逅と帰趨(「合理」の急所―中河與一「偶然文学論」の思想的意義 |
9 | 多元的なもののディスクール―稲垣足穂の宇宙観 |
10 | 「怪奇」の出現機構―夢野久作『木魂』の表現位相) |
11 | パラドックスを記述するための文学的想像力 |
12 | 補論(「存在すること」の条件―東浩紀『クォンタム・ファミリーズ』の量子論的問題系 |
13 | 自己言及とは別の仕方で―円城塔『Self‐Reference ENGINE』と複雑系科学) |