商品説明
谷崎潤一郎は「無思想の作家」と称されていた。階級闘争を標榜したプロレタリア文学が隆盛をきわめた時代も、戦時体制のもとに民族主義的な思潮が台頭した時代も、谷崎は魅惑的な女性の美しさを描くためだけに命をささげ作品を紡いだ。誰しも政治、実業、学問などで身を立てることを願った、明治という立身出世の時代にあって、なぜ谷崎は社会の変革などよりも官能の充足の方がもっと大切だという人生観を抱くようになったのか。谷崎研究の第一人者が、その人生と作品群を詳細に検証する。
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収録内容
1 | 1 作家の誕生(“神童”のゆくえ―聖人願望と春の目覚め |
2 | “性の解放”へ向かって―美的生活論からクラフト・エビングへ |
3 | “永久機関”の発明―『刺青』の基底にあるもの |
4 | 痴愚礼讃の系譜―『痴人の愛』の方へ) |
5 | 2 文豪への道(ヴァイニンガー再読―「タイプ」の発見 |
6 | 恋愛と色情―妻譲渡事件から『盲目物語』へ |
7 | “松の木影”の下―『春琴抄』の到達 |
8 | 戦中から戦後へ―『源氏物語』現代語訳と『細雪』『少将滋幹の母』) |
9 | 資料翻刻 草稿「恋愛と色情」(谷崎潤一郎) |
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