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商品説明
水俣病犠牲者たちの苦悶、心象風景と医療カルテなどの記録を織りなして描いた、石牟礼道子の『苦海浄土 わが水俣病』は類例のない作品として、かつて日本社会に深い衝撃を与えた。だが、『苦海浄土』をはじめとする石牟礼文学の本質は告発だけではない。そこには江戸以前に連なる豊饒な世界と、近代から現代に至る文明の病をも射程に入れた世界が広がる。経済原理優先で犠牲を無視し、人間と郷土を踏みにじる公害、災害。それは国策に伴い繰り返される悲劇である。新型コロナウイルスの蔓延が社会状況を悪化させる中、石牟礼本人との対談、考察を通し世界的文学者の思想に迫る、評伝的文明批評。今は亡き文学者に著者は問い、考える。「石牟礼道子ならどう書いたであろう」と。
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収録内容
1 | 序章 石牟礼道子の重層する「二つの世界」(二つの世界 |
2 | 石牟礼道子と「家」 |
3 | 区切りない世界 |
4 | 近代社会と数値 |
5 | 江戸以前の循環型時間概念 |
6 | 鄙と近代の渚で) |
7 | 第1章 母系の森の中へ(四十数年の想いを託して |
8 | 石牟礼道子との対談―「近代とは何か、ずーっと考えてきました」 |
9 | おなごのくせに |
10 | おもかさまの哀しみに寄り添う |
11 | 自殺未遂 |
12 | 高群逸枝との邂逅 |
13 | 母系の森の中へ―古代、女性はリーダーであった |
14 | 近代的自我とは異なる生命律に身を任せて |
15 | 「古代の魂」ゆえに) |
16 | 第2章 闘う共同体(道子が夢想した「新しい共同体」 |
17 | 島原・天草一揆と水俣闘争はつながっている |
18 | 私たちの春の城はどこにあるのか? |
19 | 道子は天草四郎の「やつし」 |
20 | 「自分が虫どもに似て来たと思うがのう」 |
21 | 「大切」を知る人々 |
22 | 「もう一つのこの世」の始まり |
23 | 近代における共同体の喪失 |
24 | 「夢に見るとは、天候のことばかり」) |
25 | 第3章 もだえ神(悶えてなりとも加勢せんば |
26 | 「漂浪く」道子の魂 |
27 | 遊行の民として |
28 | 非人の方法 |
29 | ひゅんひゅんと移動する神々 |
30 | 日本人に見る「共視」 |
31 | 「境界」を行き来する魂) |
32 | 第4章 祈るべき天と思えど天の病む(死者と生者をつなぐ文学の役割 |
33 | 水俣の死者たちが再び戻る『不知火』 |
34 | 怨から祈りへ |
35 | 「死ぬことは死ぬばってん、私どもは死なんもんなあ」 |
36 | 石牟礼道子と話した福島のこと |
37 | 生まれ変わる力があれば |
38 | いのちの声の代弁者として) |