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商品説明
『ユリシーズ』は物語ではなく「物・語り」である。通常、「物」は自ら言葉を発することがなく、一方的に「語られる」存在である。植民地支配によって本来の言葉と文化を奪われた人々、政治的・宗教的迫害によって故郷を追われた人々、父権性社会の下で「声」を失った女性たち、帝国主義戦争で倒れた無名の兵士たち。彼らは自らについて語ることができない「物」として生きた。ジョイスが二十歳そこそこで捨てた故郷アイルランドは、そのような人々の声なき声に満ちていたのである。モダニズムの代表作を精緻に読み解く気鋭の論考。
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収録内容
1 | 序章 物語から物・語りへ |
2 | 第1章 語りの形式と語り手 |
3 | 第2章 スティーヴン-永遠の「息子」と語りの欠落 |
4 | 第3章 ブルーム-寝取られヒーローと語りの予弁法 |
5 | 第4章 ゴースト・ナレーション-「ハデス」 |
6 | 第5章 「作者の死」と揶揄する語り手-「スキュレとカリュブディス」 |
7 | 第6章 断片化とマイナーキャラクターの声-「さまよえる岩」 |
8 | 第7章 オノマトペと語る「物」たち-「セイレン」 |
9 | 第8章 処女のストッキングとしての語り-「ナウシカア」 |
10 | 第9章 「客観的語り」の主観性について-「イタケ」 |
11 | 第10章 モリー-語りのトリニティー |
12 | 終章 「物・語り」の世界 |