ストーリー

今よりも多少未来の東京――。情報端末NAVIが普及し、テレビと同じくらいにメディアとしての力を持ち、人とコミュニケートするにはネットワークを通してがあたり前という時代。
NAVIを通して誰かと「つながる」ことで、無意識に「安心」という買い物をする、そんな時代。

岩倉玲音も、新しいNAVIを手に入れてネットワーク世界・ワイヤードにアクセスしていた。
肥大化した記録や情報と、拡大していくネットワーク。現実世界での自分とは違う人格を設定してネットワークで行動することはもちろん、ネットワークの世界でしか存在しない「人種」も生まれ始める。
やがて現れたのは、それを操作し、コントロールすることに利益と野心を見いだす者たち。
そして、リアル・ワールドで、ワイヤードで、玲音を起点として世界が動き始めた・・・

レビュー的ななにか

1998年7月6日から放映されるや否や、カルト的な人気を博し、今もなおファンをとらえて離さない魅力を持った作品。

かの「ロズウェル事件」や memex システム(「ハイパーテキスト」という概念の起源)の提唱者として歴史に名高い人物「Vannevar Bush(ヴァニヴァー・ブッシュ)」、コンピュータ理想主義者であり、いまではすっかりおなじみのハイパーテキストを提唱した「Ted Nelson(テッド・ネルソン)」。
さらには脳科学者であり、イルカとのコミュニケーションの研究者だった「John C. Lilly(ジョン・C・リリー)」など、実際の事件・実在の人物たちをからめて物語を語り、現実=リアル・ワールドとネットワーク世界=ワイヤードの関わりあいを「携帯端末NAVI」を介して表現し、未来に生じるかもしれないことの片鱗を描き出した。(もちろん、フィクション的な使われかたもあるものの)
※HTML=HyperText Markup Language(ハイパーテキスト マークアップ ランゲージ)が、そのハイパーテキストを実用化させるものだと思えば、そう間違いではない。

1998年と言えば、まだテレホダーイの時代。
高速回線の登場にはまだまだな時代ではあるが、インターネットがそれなりに普及しており、ネットの世界も身近になりつつあった背景の中での「lain」は、妙な現実味をもっていたのは否めない。
そして一方で加速度的に普及の度合いを強めていた携帯電話の利用環境が、さながら「携帯端末NAVI」を想起させた。

現在のように「携帯が無いと~」「スマホが無いと~」というある種強迫観念めいた社会を、「lain」では「携帯端末NAVI」によって既に想定している。
実際、スマートフォンは「携帯端末NAVI」の機能をほぼ備えているレベルに来ている。音声対話・操作機能ですらも。もちろん、音声操作等に関しては「携帯端末NAVI」のレベルには到達していないが、それほど遠くない未来、追いつき追い越すような気がしてならない。
つまり、それほどまでに「lain」の世界に急速に近づいてると思えるほどなのだ。

語られる実際の事件・実在の人物たちと「lain」の物語、そして実際の環境と「lain」の環境の相互効果により、「lain」の世界がカルト的人気を得ていったと言えるだろう。

また、忘れてはならないのが、今では入手するのがちょっと難しい「BOA」によるオープニングテーマ「DUVET(デューベイ)」。「BOA」であって「BoA」でないから要注意。
OP映像と素晴らしくマッチし「lain」の世界を魅力的に描いている。音楽だけでも必聴だが、OP映像ともに聴くとその世界観にどっぷりハマルこと間違いなし。
そして、放送当時、番組終了後に流れた「ウェザーブレイク」の一枚絵が愛らしく、Blu-ray BOX化の時もリクエストが多く無事に収録となったほど。
ただし、あまりの「雑さ」加減で収録が相当難儀したようでもある(笑)。一種落書きのような、気負わないイラストだったしね。こんなに収録要望がくるとは思わなかったのだろう(笑)。

そしてもちろん・・・玲音の「クマの着ぐるみパジャマ」に萌えたというのもヒットの重要な要素に違いない。

・・・これがひょっとして「萌え」の原点なのか?!(そんなことまでは知らない)

(C)1998 Triangle Staff/PIONEER LDC.
公式サイト


サブタイトル

  • Layer:01 WEIRD
  • Layer:02 GIRLS
  • Layer:03 PSYCHE
  • Layer:04 RELIGION
  • Layer:05 DISTORTION
  • Layer:06 KIDS
  • Layer:07 SOCIETY
  • Layer:08 RUMORS
  • Layer:09 PROTOCOL
  • Layer:10 LOVE
  • Layer:11 INFORNOGRAPHY
  • Layer:12 LANDSCAPE
  • Layer:13 EGO

スタッフ

  • 企画・原案:Production 2nd
  • オリジナルキャラクターデザイン:安倍吉俊
  • 監督:中村隆太郎
  • 脚本:小中千昭
  • キャラクターデザイン:岸田隆宏
  • 音響監督:鶴岡陽太
  • 音楽:仲井戸CHABO麗市
  • アニメーション制作:トライアングルスタッフ
  • 制作協力:GENCO

キャスト

  • 岩倉玲音:清水香里
  • 父・岩倉康雄:大林隆之介
  • 母・岩倉美穂:五十嵐麗
  • 姉・岩倉美香:川澄綾子
  • 瑞城ありす:浅田葉子
  • 山本麗華:手塚ちはる
  • 加藤樹莉:水野愛日
  • 四方田千砂:武藤寿美