“そのままホラー映画に出られるんじゃないの?”というくらい精巧に作られたマスクとコスチュームで完全武装、超グロテスクな見た目とは対極にある“一緒に歌えるキャッチーなハード・ロック”で世界的に人気を爆発させたフィンランドのモンスター軍団、ローディが、まもなく通算4枚目のフルレンスとなる新作「デッドエイク」をリリースする。

10月29日に設定されたアルバムのリリース日を前に、まずは前作「ハード・ロック黙示録」時より格段にグレード・アップした新マスク&コスチュームをお披露目し、続いて精力的にプロモーション・ツアーに乗り出していったモンスターご一行様。この日本の地に、首領ミスター・ローディ(ヴォーカル)とキタ(ドラムス)の2人が降り立ったのは去る9月中旬のことであったが、さすがは世界を股にかける人気者の彼ら。行く先々でかなり熱狂的な歓待を受けた様子である。(ファン・ミーティング時に撮影された以下の写真をとくとご覧あれ!)

さて、そんな折り、幸運にも彼らへのインタビューの機会を得ることができた。指定された会見場にて堂々Neowing取材班を待ち受けていらっしゃった我らがミスター・ローディとキタの両氏は、もちろんノー・メイク&ノー・コスチューム。この日も早い時間から山ほど詰め込まれていた取材を1つずつ丁寧にこなしていたというお2人は、さすがに少しばかりお疲れのご様子ではあったが、それでもにこやかに右手を差し出し、なごやかな雰囲気の中で会見をスタートさせてくれた。そして語ってくれた“マスクの下の素顔”・・・。

わずか20分間ほどの短い時間ではあったが、こちらの質問に真剣に正直に応えてくれた彼らの姿からは、苦労人らしい心づくしのサービス精神と素晴らしいプロフェッショナル精神がはっきりと感じ取れた。大出世作となった「ハード・ロック黙示録」からの音楽的な進化と成熟を確かにうかがわせる渾身の新作「デッドエイク」を引っさげて、一刻も早く、彼ら最強のモンスター軍団が再来日公演を実現させてくれることを祈っている!

インタビュー with ミスター・ローディ&キタ


――昨年4月、ローディは 初めての来日公演 を行いましたね。あの時のことで特に覚えていることや印象に残っていることはありますか?

キタ:素晴らしい思い出ばかりだよ。プロモーション活動をやって、東京で2回、さらに大阪と名古屋でもショウをやって、2週間ほど滞在したんだったかな。あの後、俺は日本に恋してしまったくらいさ。グレイトなファンがいて、大騒ぎしてくれて、本当にうれしかった。だいたい俺は子供の頃から“KISSが武道館でライヴをやった”とか“モトリー・クルーが日本公演を行った”とかいった記事を読んでいたんだからね。日本へ行くことをずっと夢見ていたんだ。本当に素晴らしい経験だったよ。俺達はまだそれほどビッグというわけではないけど、これからもっともっとビッグになって、もっと大きなところでショウをやれるようになれたらいいね。

ミスター・ローディ:俺はショウの時にも面白い発見があったよ。というのも、開演前の会場がえらく静かでさ、裏で“もしかしたら会場に1人も来てないんじゃないか?!”なんて不安に思ったりもしていたんだ。ところが、時計の針が開演時刻を指した瞬間、会場から「ウォォォーーーッ!」って声が聞こえてきた。(笑) ああいうのはこれまでにどこの国でも経験したことがなかったよ。ショウが始まる前は、みんな本当に静かだったんだ。そして曲が始まったらみんな大騒ぎで、曲が終わったらみんなまた静かになる。(笑)

キタ:そうそう。あんなに静かだったオーディエンスが、曲が始まった途端に「イェェェーーーッ!」「ウォォォーーーッ!」と大騒ぎして、また静かになるんだよね。「はい、次の曲どうぞ」って感じでさ。(笑)

ローディ:ああ。(笑) あと、エルヴィス(プレスリー)の銅像が立っている商店街みたいなところへ行ったのも覚えているよ。KISSのグッズがたくさん置いてあるところで、俺も持っていなかったやつをいくつか買ったんだ。

――それはそれは。(笑) さて、まもなく4thアルバム「デッドエイク」がリリースとなりますね。一足先に聴かせていただきましたが、今回もいかにもローディらしい、パワフルで、キャッチーで、ヴァラエティ豊かなハード・ロックが満載された作品に仕上がっているように思います。ご自身では新作をどういう風に感じていらっしゃいますか?

ローディ:アルバム全体にしてもそれぞれの曲にしても、まさしくローディをローディたらしめている要素が総て込められた作品に仕上がっていると思うよ。もちろん、新しい要素も含めてね。アルバムを聴いた人の多くが“前よりもダークになった”と感じているようだけど、たしかにそうだと思う。歌詞はよりホラー度を増しているし、全体的に見ても、より深みが増しているから。ただ、それは自分達でやりたいと思っていたことであると同時に、反面、意図的にやった結果ではないとも言えるんだ。

新作はこれまでの作品と比べて、よりパーソナルなレコードと言ってもいいだろうな。音楽の中のある部分にしても、いろんなパーツやなんかにしてもね。モンスターというキャラクターを通して出てきたものがあちらこちらにある一方、マスクの下の男が語っていること、マスクの下の人間がパフォームしているところもある。だからそういう意味で、よりパーソナルな、よりディープな作品だと言うことができるだろう。といっても、もちろんそれは俺達が感じていることだからね。アルバムを聴いた他の人達がどういうリアクションをするかはわからないよ。そしてそれは決してわからないことだと思う。

――今あなたから“パーソナル”という言葉が出て、少々意外に感じました。あなた達がミスター・ローディやキタといったステージネームを掲げた時、すべての活動はある意味“モンスターとしての役割を演じること”に尽きると思っていましたから。しかし、実際はそうとも限らないようですね。ソングライティングなどの創作活動においては、素のあなた達自身、あなた達の個人的な側面が出ることもしばしばあるのでしょうか?

ローディ:とても良い質問だ。それについては、これまで誰にも訊かれたことがなかったんじゃないかな。さておき、俺個人について言うなら、曲を書く時には何よりまず“良い曲を書こう”というのが第一にあるんだ。そしてもちろん、その曲がこのバンドにフィットするかどうか、このキャラクターにフィットするかどうかということも。歌詞についても同じで、もうひとりの自分(ミスター・ローディ)が歌って信憑性が得られるかどうかということをやっぱり考えるんだ。

実は今回のアルバムのために、俺達は60もの曲を書いてデモにしたんだけど、その中にはローディっぽくない曲も結構たくさんあった。少なくとも4、5曲はローディにはハードすぎるものだったよ。とてもファストで、まるでU.D.O.の曲みたいだったんだ。しかしまた一方で、ちょっとハッピーすぎるというか、ポップすぎるものもあった。 たとえば、新作に「モンスターズ・キープ・ミー・カンパニー」という曲が入っているけど、これは非常にパーソナルな曲であると同時に、とてもローディっぽくない曲だと思う。メロディもこれまでとは違う感じだし、歌詞にしても非常にパーソナルなものになっていて、これまでにやったことがないような感じになっているから。もちろんそれでもローディっぽい曲に仕上がっているとは思うけど、切り口が違うと思うんだ。

この曲については、こんなことを覚えているよ。今回のアルバムに入れる曲を選ぶために、バンドのメンバー、プロデューサー、レコード会社の代表者で集まってリスニング・セッションをやる機会があったんだけど、あの時点ではまだ、俺にとって「モンスターズ・キープ・ミー・カンパニー」はあまりに近すぎる曲だった。あまりにもパーソナルすぎて、アルバムには入れられないと思ったくらいさ。今ではそれなりに距離を取って見ることもできるようになったけど、あの時はとても無理だった。それくらいパーソナルすぎる曲だと感じていたんだ。結果的には、入れることができて良かったと思うけどね。

――すべてがあらかじめ定められたコンセプトに沿うように進められているわけではなく、時にはパーソナルな面での葛藤もある、と。

ローディ:ああ。でも、今までのところ、あの曲が初めてだし、唯一の例だと言えるよ。もちろん、歌詞のあちこちに、それもある1行とかに、誰かに対するメッセージや何かについてのステートメントみたいなものを入れたりすることはこれまでにもあったとはいえね。例えば、俺達のファンは「ハード・ロック・ハレルヤ」の2番目のヴァースが大好きだけど、あそこには「The true believers, thou shall be saved(真の信者達よ、汝らは救われるであろう)」という一節がある。言うまでもなく、あれはファンに向けて書かれたものだ。ショウの時にも、俺が最前列にいるファンを指差しながらこの部分を歌うとみんな大騒ぎしてくれるけど、あれはわかってやっていることなんだ。

あの曲には「You will see the jokers, soon'll be the new kings(ジョーカー達がやがて新たな王となる姿を、お前達は目にするだろう)」という一節もあるけど、この時は、会場の後ろの方で今にも外へ出ようとしているオーディエンスを指差しながら歌う。そうすると・・・

キタ:あれってある意味、冗談が本当になってしまったという部分もあるんだよね。というのも、あの曲は『ユーロヴィジョン(注:ローディの名前を一躍有名にしたヨーロッパ最大の音楽祭の1つ)』の前に書かれたものだったんだからさ。それまでは“誰も俺達のことなんか好きじゃないさ”と思うようなこともあったし、音楽ビジネスの世界には波があるってこともわかっていた。ところが、そんな俺達が『ユーロヴィジョン』に出て、まさかの優勝を果してしまったものだから・・・

ローディ:文字どおり“ジョーカーが新たな王になってしまった”。クールなことだよ。(笑) あと、新作に入っている「レイズ・ヘル・イン・ヘヴン」という曲もそうだね。歌詞は一人称の形で書かれているけど、ここでは、俺個人のパーソナルな意見というより、バンドとしての意見が語られていて、“俺自身より俺のことを知っているとは言わせないぜ!”と言っている。ヨーロッパでは、信心深い人達が「あなた達は悪魔の信奉者です!」とかって言ってくることがあってさ。もちろん俺達は「そんなの違う!」と否定するんだけど、彼らは「いいえ、私達の方が、あなた達自身よりあなた達のことをわかっています」とか言うんだから。こういう場合、どちらが愚か者なんだろうね?

――・・・何十年経ってもやっぱりKISSと同じようなことが起こっているんですね。

ローディ:“Knights In Satan's Service(注:“悪魔軍団の騎士達”といった意味。かつてKISSというバンド名がこの略語だとして一部で話題になったことがあったが、当然ながら完全なデタラメ)”だろ。(笑) 30年も経って、別の国で、KISSとまったく同じ経路を辿っているんだから面白いよね。俺達も最初は“危険すぎるバンド”だったのが、“家族向けのバンド”になり、“マーチャンダイズ(グッズ)が爆発的に売れるバンド”になった。それからビッグになりすぎたせいで“みんなに嫌われるバンド”になり、今度は“悪魔の信奉者達”だ。そうやって名づけられてきた。ありがたいことにね。(苦笑)

俺達、この先もキストリー(KISSの歴史)を辿っていくことになるかもよ。(笑) もしかしたら、今度のアルバムが俺達にとっての「エルダー~魔界大決戦」か「暗黒の神話」になってしまうかも。(笑) マスクをはずして、混乱しまくって、それからディスコ・ミュージックかなんかやっちゃって・・・で、エイメンがバンドを辞める。(爆笑) そして新しいギター・プレイヤーが入るんだけど・・・

キタ:俺もいなくなるって言うんだろ?(笑)

ローディ:そうそう。(笑)

キタ:そしてアコースティック・ヴァージョンで演奏した後に俺が戻って・・・

ローディ:エイメンも一緒にな。ここまでざっと17年くらい。(笑) で、めでたく再結成ってわけだ。しかも「ハード・ロック黙示録」の頃のコスチュームで!(爆笑)

キタ:だったらフェアウェル(解散)・ツアーもやるよな、きっと。「デッドエイク」のコスチュームを着てさ。でも、やっぱり解散はしないんだ。(笑)

ローディ:で、おまえがもういっぺん脱退するんだろ?(爆笑)

――では、次の来日公演で、キタが、タオルを首に巻いて、バラの花を持って、しっとりとバラードを歌ってくれることを期待していますよ。(笑)

ローディ:(爆笑)

キタ:そうするよ。(笑)