ドラムは決して地味じゃない
ドラムといえば、曲のリズムやグルーブを作り出す屋台骨、縁の下の力持ち的な役回りで、どちらかというと地味な存在である。
あれは高2(男子校)の文化祭、バンドで盛り上がったところで、外部の女子からキャーキャー言われるのはボーカルとギターだけだった。ベースの奴と黙って機材を片付けたのは苦い思い出である。恨めしかった。
しかし、ドラムの印象的なフレーズで始まるかっこいい名曲が数多く存在しているのも事実。気にされていないだけなのだ。ドラマーにだってスポットライトが当たってもいいですよね。

たまに長男とスタジオに入っている
Billie Jean / マイケル・ジャクソン
イントロから基本中の基本、非常にシンプルな8ビートが続くこの曲は、誰がなんと言おうと「ビリー・ジーン」である。このイントロを聴けば、もう3小節目からはあのベースラインが頭のなかに流れ出し、MJが華麗なステップを踏んでいる。
シンプルの極致。ドラマーはジャズ・ファンク系のレオン・チャンクラー。
Lust For Life / イギー・ポップ
この粗削りでキャッチ―なドラム・イントロを聴くと、イギー・ポップがデヴィッド・ボウイと作り上げた会心のソロ作(そして笑顔のドアップジャケ)が思い浮かぶ人もいれば、若きユアン・マクレガーが街を全力疾走している映画『トレインスポッティング』のシーンを思い浮かべる人もいるだろう。アルバムは製造中止…。
Rock and Roll / レッド・ツェッペリン
泣く子も黙るジョン・ボーナム、ボンゾである。ロック史に燦然と輝く偉大なドラマー、生き様もふくめ地味でもなんでもないのはご愛敬。
リトル・リチャードの「Keep a Knockin」を受け継ぐ、あまりにも有名なドラム・イントロ。実は4拍子の3拍目裏から始まっているのを知ったのはつい最近のことであります。
ワン・ツー・スリ・タツツ、タツツツツタツツ…、わかります?
Rosanna / TOTO
全米4位、グラミー賞6冠に輝く名盤『聖なる剣』の幕開けを飾るこの大ヒット曲のイントロは、超絶ドラマー、ジェフ・ポーカロの代名詞ともいえる「ハーフタイム・シャッフル」が炸裂することで有名である。そう、ロザーナ・シャッフル。
単純に3連符の真ん中をゴーストノートにするだけでは、ジェフ・ポーカロのグルーブは真似できない。このイントロの元ネタの1つとも言われるのは、レッド・ツェッペリン『Fool in the Rain』のハーフタイム・シャッフルである。そう、ジョン・ボーナムなのだ。歴史。
Painkiller / ジューダス・プリースト
稲妻の如きイントロ、轟音鳴り響く激情のメタル・アンセム。高速ツーバス連打とスネア&チャイナの複雑な絡みから、やがてテンポ・ダウンを経てギターイントロに流れ込んでゆく非常にインテリジェンス溢れる構成である。
本作からバンドに加入したツーバスの名手スコット・トラヴィスのこのイントロは、30年以上経った現在も数多のドラマーを刺激しつづけている。