キャラの宝石箱や!往年のホラー・アイコンたち

怪奇映画からオカルト映画へ、ホラー映画からスプラッター/スラッシャー映画へ。それまで一部のマニア向けに留まっていたこの手の映画が、数々のヒット作に牽引されて市民権を獲得、バラエティを増し、裾野を広げながら黄金期を迎えていったのが70年代~80年代だった

新しいアイディアの発現や技術の進歩などにより、よりグロテスクでショッキングな映像表現が次々に生み出されていく一方、本来なら恐怖の対象でしかなかったはずのホラー・アイコンたちがヒーロー的な人気を集めるようになっていったのもあの時代の特徴。

ジョン・カーペンター監督が『ハロウィン』に登場させたブギーマン=マイケル・マイヤーズは、そんなホラー映画界のキャラクター人気に先鞭をつけたひとり。素顔を覆うマスクが無表情だからこそ、思考が読めず、不気味さが際立つ。直接的な暴力描写より心理的な不安を煽ってくる静かな演出と、ミュージシャンでもあるカーペンター監督自身が作曲した印象的なテーマ(これが本当に名曲!)が相乗効果を上げることで、なにげない日常の風景でさえ途端に恐ろしく見えてくるから恐れ入る。これぞ名匠の技!

一般認知度の高いホラー・キャラクターと言えば、おそらく筆頭は『13日の金曜日』に登場するジェイソン・ボーヒーズ。素顔も目線も真っ黒に隠してしまうあのホッケーマスクが“何しでかすかわかんないぞ感”を強調しまくっている点はブギーマンと同じ。だが、シリーズを経る毎にありえないほど超人化していく点では(宇宙にまで行っちゃったしね)よりマンガ的な主人公と言えるのかも。実は一度も使ったことがないのに“ジェイソンの武器はチェーンソー”というイメージが広まってしまっているのも、キャラクター人気が先行してしまっているせいだろう。ゲーム『スプラッターハウス』の影響も意外に大きそうだけど。

80年代当時からジェイソンと人気を二分していたのが、『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガー。ジェイソンをマンガ的と評するなら、フレディはもっと突き抜けてギャグマンガ的とさえ言ってもいい。そもそもが悪夢の中の存在ゆえ、彼が思えばチョチョイのチョイ、いかようにでも姿かたちが変わってしまう。その笑えるほど爽快な変幻自在っぷりは、まるででっかいタンコブが次のコマでさっぱり消え去ってしまうがごとくコミック的。彼もまたシリーズを経る毎に悪ノリをどんどん加速させていったが、そんな茶目っ気たっぷりな性格も子供たち(と少年の心を持った大人たち)に大受け。コミック好きで知られるスコット・イアンがS.O.D.で「フレディ・クルーガー」という曲をやっていたことは、メタル・ファンの間では超有名。

彼ら個性の際立ったアイコンたちは、その衰え知らずの人気からフィギュアなどのキャラクターグッズの定番となり、今なお新商品が売り出されている。『悪魔のいけにえ』のレザーフェイス、『ヘル・レイザー』のピンヘッドをはじめとする魔道士たち、『死霊のはらわた』のアッシュなどは定番中の定番。・・・アッシュはまあ、人間ですけど。

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コルロフォビア、それすなわち、道化恐怖症。

ピエロのビジュアルが強烈に脳裏に焼きついてしまう、ホラー映画史上屈指のトラウマ作品。ピエロのペニーワイズが、あの手この手を使って人間の弱さにつけこんで子供たちを別世界に連れてってしまうんです。とにかく下水道に注意してください。

幼少期に仲良しだった男女7人が、30年後、忘れかけていた恐怖のトラウマに再び襲われてしまいます。当然ながらホラー要素が強い作品ではありますが、仲良しメンバーが一致団結してペニーワイズに立ち向かう姿は原作がスティーブン・キングということもあり、“ホラー版『スタンド・バイ・ミー』”という印象もあります。でも実際は怖いシーン続出ですけどね。(笑)

2017年9月に全米公開されたリメイク版が、ホラー映画の歴史を塗りかえる空前の大ヒットを記録中!日本公開は11月!リメイク版の鑑賞前にぜひオリジナル本編をご覧ください!

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ゾンビ? それ面白えのか?

ゾンビ映画は色々見てきたものの、ゾンビコメディなるジャンルがあることを知らなかった時に出会った映画です。

B級ゾンビ映画にありがちな派手に内臓が飛び出るシーン。それが少々ポップに表現されていました。凄惨なシーンなのですが、今一緊張感に欠けるというか・・・

とはいえ、緊張感が全くないわけではなく、コメディと緊迫感が程よいバランスで最後まで飽きずに見ることができました。

ゾンビが人間に襲い掛かるシーンが幾度か出てくるのですが、老人ホームでのそれは、笑えばいいのか、ハラハラすればいいの非常に複雑な心境になりました。「うああああ、逃げて、めっちゃ逃げて」と声に出してしまったのは、これが初めてだったと思います。

めちゃくちゃ強いサバイバル能力に長けた人物がばったばったとゾンビを倒していくわけではありませんが、おじいちゃんたちが立ち向かっていく姿はなんだか爽快な気分になります。

スプラッター要素は多々あれど、気楽に見れて笑えるゾンビ映画です。

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あの時きみは若かった

今やハリウッドを代表する第一線の映画監督となったあの人、この人。彼らにももちろん、駆け出しの修行時代があった。ほとばしる情熱と溢れんばかりの才能をもって理想の映画作りに没頭していた未来の大監督たち。たとえ予算が足りなかろうとも、それを補って余りあるアイディアと才気と人脈をフル活用して前代未聞のホラー映画を作り出してきた彼らの黒歴史、もとい輝かしい初期作品をちょいと味わってみよう。

2002年に第1作が公開となった『スパイダーマン』シリーズ三部作を監督して大いに名をあげたサム・ライミ。彼が世間の注目を集めたのは、スプラッター映画の嚆矢ともなった自身の長編デビュー作『死霊のはらわた』がきっかけだった。不気味な森の中を荒々しく駆け抜けていく“シェイキーカム”の目線。迫り来る恐怖を存分に味わわせてくれるこの映像、実はカメラを取り付けた戸板の両端を2人で持って全力疾走しながら撮ったものだったとか。この発想力と行動力がハリウッドを振り向かせたことは言うまでもない。

今年続編が公開された『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』で大ヒットを飛ばしたジェームズ・ガン監督もホラー畑の出身。彼のキャリアの出発点が『悪魔の毒々モンスター』シリーズでお馴染みの『トロマ・エンターテインメント』だったことは、ファンの間ではよく知られた話。ある意味、最初から“ヒーローもの”と縁があったわけだ。

J.R.R.トールキンが著したファンタジーの決定版『指輪物語』を実写化した『ロード・オブ・ザ・リング』、特撮映画の古典をリメイクした『キング・コング』などで世界的な評価を獲得したピーター・ジャクソン監督も、もとはB級悪趣味映画の巨匠。偶然なのか意図的なのか、『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する白魔法使いサルマンを演じていたのが往年のドラキュラ俳優クリストファー・リーだったのはなんだか微笑ましい。

他にも『パシフィック・リム』のギレルモ・デル・トロ、『スーサイド・スクワッド』のザック・スナイダー、『アベンジャーズ』のジョス・ウェドンなど、ホラー映画から身を立てハリウッドで活躍している監督の名前を挙げることができるが、彼らがアメコミ・ヒーロー作品を手掛ける率が高いのはちょっと不思議。なんでだ?

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あれから35年、改めて「スリラー」を味わう

『スクリーム』と題されたマイケル・ジャクソンの最新コンピレーションは、ホラー/サスペンス・テイストの強い楽曲ばかりを集めた“裏ベスト”的怪作。

スマッシュ・ヒット揃いの収録曲の中でもとりわけ“モンスター”と言えるのが、全世界で1億枚以上を売り上げた超怪物作『スリラー』収録のタイトル・トラック。同作からの7枚目のシングルとして1984年にカットされたこの曲については、やはりまず、何もかも前代未聞だったあの革新的なビデオ・クリップについて触れないわけにはいかない。

6分弱の原曲をストレッチ&ドラマ仕立てに再編集、文字どおり短編映画のごとき13分半のショート・フィルムとして新たな生命を与えられた「スリラー」が、ここ日本でもほとんど社会現象と言えるほどのブームを巻き起こしたのは巷間に伝えられているとおり。

特に強烈だったのは、当時アメ横あたりに大量のパチモンが出回ったマイケル着用の真っ赤な革ジャン・・・ではなくて、フラッシュモブのごとき大勢のエキストラと共に繰り広げられるクライマックスのゾンビダンス。最近でも某アイドル・グループの振り付けに影響を与えていた、という話があったような、なかったような・・・。

さておき、まだまだカルトな存在だったゾンビを一気にお茶の間に浸透させたという意味でもエポックメイキングだった「スリラー」のショート・フィルムは、実はホラー映画目線から見ても外せない傑作。監督を務めたジョン・ランディス、特殊メイクのリック・ベイカー、ナレーションを担当したヴィンセント・プライスといった大御所たちの名前は、ファンにはつとに知られているところ。彼らのプロフェッショナルな仕事あってこそのこの完成度なのだ。

このクリップをきっかけに『スリラー』は再びセールスを盛り返し、ついには“世界で最も売れたアルバム”という輝かしい金字塔を打ち立てることとなる。この記録がいまだ破られていないことからも、その異次元の凄さは瞭然。2017年に3D版も公開。

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