今日が人生最後の日だとしたら・・・
こんにちは、Neowing販売推進グループの東風平です。風邪でもないのにトイレの個室に入ると鼻水が止まらなくなる、厄年真っ只中のノット・ソー・ナイスミドルです。人生最後の日に観たい映画なら「仁義の墓場」、人生最後の日に読みたい絵本なら「かたあしだちょうのエルフ」、人生最後の日に出したいスタンドなら「パープルヘイズ」でたぶん決まりですが、音楽となると・・・う~ん、これは悩みますね。
今の気分であえて選ぶとしたら、僕が人生最後の日に聴きたい「最後の“盤”餐」は
スリープ/ドープスモーカー
ということになるでしょうか。どうしても一枚だけ、あえて選ぶとすれば・・・。
青臭い反抗心から人生の指標に
そもそも僕がドゥーム/ストーナー・メタルにのめり込むようになったきっかけは、やはり言わずもがな、ブラック・サバスでした。改めて振り返ってみれば中二病の典型的な症例なのですが、クラスメートたちがアイドル歌手や歌謡ロック・バンドについて熱く語るほど苦々しく醒めまくっていた学生時代の僕にとって、危険で、不気味で、美しく、異様で、どす黒いブラック・サバスのヘヴィ・ロックは、まさに究極の鎮静剤であり興奮剤でもありました。我ながら、アブナイ奴だな・・・。(苦笑)

そんな僕の青臭い反抗心を、揺るぎない人生の指標にまで導いてくれた決定的なドゥーム/ストーナー・メタル・アルバムが何枚かあります。例えば、カテドラルの『この森の静寂の中で』やコンフェッサーの『死刑宣告』などがそうですが、中でも特に強烈だったのが、上に挙げさせていただいたスリープの『ドープスモーカー』(と後述の『エルサレム』)でした。
ドゥーム/ストーナー・メタル的聖地巡礼
アメリカはサンフランシスコを拠点としていたツワモノ揃いのパワー・トリオ、スリープが、波瀾万丈の活動の末に辿り着いたドゥーム/ストーナー・メタルの最高峰――。1999年に発表された彼らの3rdアルバム『エルサレム』は、神秘の煙に導かれながら聖地へと向かう長い長い巡礼の旅路を、実に52分を超える長尺の1曲で描ききった破天荒きわまりない作品でした。
まさに歴史的と呼ぶにふさわしいこの傑作の登場に、当然ながら、世界中のドゥーム/ストーナー・メタル・ファンは大いに沸き返り、惜しみない賛辞を送りました・・・が、作品が出た頃にはすでに、スリープは、自らの活動に終止符を打ってしまっていました。
一説によれば、あまりに常識破りな仕上がりとなった『エルサレム』を巡って、わかりやすい内容に修正することを求めたレーベルと、変更を良しとしないバンドとが激しく対立したことが解散の原因になったとも言われています。実を言えば、『エルサレム』として発表された52分超の“完成版”でさえ、バンドにとっては、ギリギリの線で編集を加えた“譲歩版”だったのですが、結局、両者の間の溝が埋まることはありませんでした。
そして明らかとなった“真の聖地巡礼”
かくしてその後、マット・パイク(ギター)はハイ・オン・ファイアを結成、アル・シスネロス(ベース/ヴォーカル)とクリス・ハキアス(ドラムス)はオムを立ち上げ、それぞれにキャリアを追求していくことになるのですが、『エルサレム』の衝撃からおよそ4年を経た2003年、スリープ名義のアルバムが突如としてシーンに送り出されます。『ドープスモーカー』と題されたそのアルバムに、未発表のライヴ音源とともに収められていたのは、なんと63分を超える破天荒きわまりないタイトル・トラック――すなわち、バンドが望んでいた『エルサレム』の本来あるべき姿そのものでした。

ここで明らかにされた“真の聖地巡礼”が、どれほど凄まじく、奥深く、感情を揺さぶるものであったか、改めて言葉を費やすまでもないでしょう。ブルースとメタルとヘヴィ・ロックを混ぜ合わせて濃厚に熟成させたドゥーム/ストーナー・メタルの神髄。『ドープスモーカー』に封じ込められているのは、まさにその究極形に他なりません。
2012年に発表されたリイシュー盤『ドープスモーカー』は、リマスタリングが施され、オリジナル盤よりも聴きやすいサウンドになっています。さらにライヴ音源を追加、ジャケットも変更されていますが、作品の本質はむろんなにひとつスポイルされてはいません。
ちなみに日本盤は、タイトル曲とライヴ音源を別々のディスクに分けて収録してあるので、本編の『ドープスモーカー』だけを繰り返して聴くのも楽です。終わったら再生、終わったらまた再生、終わったらまたまた再生ィィィィィッッッッッ!!!!! そしてメメタア!!!
・・・という具合にエンドレスで『ドープスモーカー』を聴いているうちに、だんだん意識が混濁して、酩酊して、幻惑されて、眠るように最期の瞬間を迎えられたら最高だな、なんて。
以上、僕の「最後の“盤”餐」でした。チャンチャン♪