黒沢健一「LIVE without electricity」インタビュー
よく考えるとソロは5年ぶりなんですよね?
黒沢:去年だから5年ぶりですかね。
あんまりそんなふうには思っていなかったんですけれどソロだと5年なんですよね。ソロ活動再開なんですけれども、まずは新曲をリリースされましたが、最初のリリースがダウンロードだったというところで、新曲をダウンロードでリリースをしてみようと思ったのは、どういうところからだったのですか?
黒沢:この5年「NEW VOICES」というアルバムを出して以降、健'zやcurve509といろいろやりながらも、ソロのことはずっと念頭にあったので曲はずっと書いてて、60曲とかそれぐらいの曲が溜まってたんですよ。
合間合間にいろんなバンドをやったりしていたので、なかなかデモテープ作ったりする時間がなかったんですけど、健'z with Friendsの辺りから、書き溜めていた曲の何曲かのうちからピックアップして、デモテープをガーッと作り始めたんです。
でも結局いろんなことをやっていたら、足掛け何年って感じになってしまって、その間にいろいろなユニットとかやってるので、一緒にやってる人達のやり方を見て、それが自分の作品に反映されてたりと、良い意味で影響も受けたりするじゃないですか。
だからいろんな音楽性のことをやっていたし、やりたいこともいっぱいあったので、曲とかがちょっとバラついちゃったんですよね。
それは今思えばなんですけれど、当時はそう思ってなくて、その60曲とかそれぐらいの曲の中から10曲ぐらいピックアップして、ソロでこんなアルバムって感じでデモを作ったら、スタッフとか周りの方からも、全然悪くはないんだけど、何となくトータリティーがなくて、よくわからんっていう感想だったんですね。
確かにそう言われるとそういうイメージも感じたので、ソロって言葉じゃ上手く言い表せないけれど、アルバムというのは今の自分みたいなものが何かしらのトータリティーとしてあるっていうか、そういう作品を出さないといけないんじゃないかと思っていたんですね。
だからこれはワン・アルバム、パッケージにしちゃうと、バラけてしまうかなという感じもしたので、だとすればダウンロードという方法もありかなと。
どうやって出そうかなとか、また書き足そうかなとか、そういうことを考えてるより手っ取り早くというか、まず最初にこんな曲が出来たよっていう形で、人に聴いてもらうには配信っていうのが一番速いのではないかなと思って、そういう形にしたんですけどね。
すごく意外ではあったんですよね。どちらかと言うと黒沢さんのイメージはパッケージとかアナログにこだわりがある方という感じだったので、ダウンロード限定で先に音源をリリースするっていう形態のリリースは徐々に増えつつはありますが、ベテランの方がドンとやってしまうっていうのは意外ではあったんですよね。
黒沢:そうなんですか。
はい、あと今までの旧譜も全部ダウンロードでリリースされましたよね。あの中でしか聴けないものもリリースして頂いたじゃないですか、あれもすごいなと思ったんですよね。なので全キャリアを総括した上で新曲もリリースするのかなと思ったんですよね。
黒沢:ミュージシャンとして、配信というのはさっきのトータルとかパッケージングっておっしゃってくれたように、そういうところからしたら曲順も変わってしまうし、いろんなところが変わってしまうから、出す側としては最初はちょっと僕もどうなのかよくわからなかったんですよ。
でも自分がiPodを使ってみて、発信側としてじゃなくて受け手側の音楽ファンとして持って、実際に使ってみたら、エライ楽しい機械で(笑)、これはいろんなものも聴けるしなぁって実感したんですね。
だから自分のベーシックをよく考えて音楽ファンでってことだったら、こういうリリースの仕方っていうのは、自分にとっては非常にエキサイティングだし、しかも全部過去の旧譜も聴いてもらえるってことはすごく大事なことだったと思ったんです。
今回、PVとかの映像も落とせるというのは凄かったですね。ビデオとかは劣化してしまいますからね。
黒沢:VHSとか、そうですよね。
そのファンの方達が良い画像で見れたりっていうのは画期的だなと思いましたね。そしてまた新しいものに乗って行くっていうのは潔いかなと思ったんですよね。活動再開を含めてシングルのリリース、そして以前の旧譜も全部出すというところで新しくスタートを切るみたいな、何かが起こりつつあるのかなっていう印象があったんですよね。
黒沢:そうですね。自分の中でもそろそろ復活感というか(笑)、過去のものもみんな聴いて頂いてっていう、そういうのはすごくありましたね、結果的にですけどね。
見ている側もワクワクした感じっていうのはありましたね。そしてそこでそのワクワク感の中で年末からソロ・ライブを行われたわけじゃないですか、12月29日の渋谷duo music exchangeっていうのは見ている側でもものすごいライブだったんですよ。普通よりはほんの少しですがライブは見ている方だと思っていましたが、トリプルアンコールというのは初めてだったんですよ。
黒沢:僕も初めてでしたね、ビックリしましたね、あれは(笑)、どうしようかなみたいなね。
あんなライブを見たのは初めてでしたね。
黒沢:僕も嬉しかったですよ、本当にすごく嬉しかった。
本当にリスナーが渇望をしていたライブだったなと思うんですよね。まずそこで黒沢さん的にはあの時のライブっていうのは、今、振り返ってみてどんなライブだったなという感じがありますか
黒沢:とにかくまず嬉しかった、あれだけのお客さんがスタンディングで来て頂けたっていうこと自体、自分もスタッフもみんなビックリしてたぐらいで(笑)、こんなソロ活動自体久しぶりなわけで、しかもアコースティック・ライブってファンの方はどういう形のライブか見当が付かない状態なのに、duoであそこまでスタンディングでお客さんが集まってくれたのもまずビックリしましたし、あとやっぱり一つ自分の中で本当の意味でのソロ活動、5年振りというか、自分がまた音楽活動をやって行く上で、スタートを切るに当たって自信が持てたライブだったですね。
自分の楽曲、今までやって来た曲とか活動とか、そういうのを見て来て貰えてたんだなっていうことがすごく嬉しかったです。
アコースティック・ライブであんなにお客さんがノリノリになっているっていうのは初めて見ましたね。
黒沢:もう僕もビックリしました!ビックリしましたって自分がやってて言うのもおかしいんですけど(笑)。
(笑)、個人的にはL⇔R時代の曲をライブで生で聴かせて頂いたのは初めてだったんですね。そういう意味でも自分の当時に聴いていた頃のことも思い出したり、そしてまたソロ時代の「PALE ALE」や新曲も演奏して頂いたじゃないですか、その中で黒沢さんとしてのトータル感のあるライブだったような印象があるんですよね。黒沢さん的にはアコースティック・ギターとピアノでライブをやろうかなって思ったのは、どういうところからだったんですか?
黒沢:最初に今回まず配信で何曲か新曲をリリースした後に、配信をしたからライブも久しぶりにちょっとやりたいなっていう形で話が進んで、最初はいつもどおりというか、ロックバンド形式で新旧取り混ぜて自分の曲をやろうかなと思ってたんですけど、随分昔にスタジオで高野寛さんと話をしてた時、高野さんが「黒沢君、自分で納得できるアコースティック・ライブが出来るようになるまで2年掛かったんだ」みたいな話をしていて、やっぱり2時間アコースティックで演奏してお客さんを楽しませたりするっていうのは、すごい大変なことだけど、やっと出来てすごい嬉しいみたいな話をしていたんですよ。
当時僕はバンドだったんで、そこら辺はよくわからなくて、でもよく考えてみたら裸の状態で出て行くわけだし(笑)、演奏にしろ歌にしろごまかしが効かないわけですよね。
しかもそれをバンド形式のライブの間に2、3曲彩りとして考えるんだったらともかく、ワンステージそれで構築して楽しんでもらうということは確かにすごく大変だなと思ったんですよ。
それは随分前の話なんですけど、その時、自分もやっぱりそういうことが出来るアーティストになりたいなとちょっと思ってたんでしょうね。
それで今回、配信という形でのトライも出来たし、いろんな人とのコラボレーションっていうのも念願叶って出来て、健'zだったり、MOTORWORKSだったり、すごい楽しかったし、自分の身にもなったし、で、次に何をやろうかっていった時に何かこのタイミングで、そういえばあの時そう思ってたっていうことをやりたいなって、咄嗟に思ったんですよね。
計算とかじゃなくて、勘というかその時のことをふと思って、やれるんじゃないかなみたいな。
で、実際に言ってからは緊張しましたけどね、どうしよう!みたいなね(笑)。
タイミング良く配信って話も決めて頂いて、過去の作品もそういう形で配信されるというんで、通常なら昔の楽曲を全部配信出来るっていうことはとても難しいのに、そこら辺は各メーカーが協力して頂いて、自分の昔の楽曲達全部いっぺんに出たっていう中で、そういうトラックリストを頂くわけですよ。
それでトラックリストを見たら、自分はこんなにいろいろ曲書いてんだって思って(笑)。
この中からソングライターとして結構選び放題だななんて思えて、そういうタイミングが上手く繋がって、今まで自分が書いてきた曲をそういう形でお客さんに聴いて頂きたいなと思ったのが、本当にすごい良いタイミングでハマッたライブでしたね。
キャリアの総括としての楽曲、尚且つアコースティックにしたということで、もちろん懐かしい曲もあるのにそれは全て新しい曲みたいな気がしたんですよね。楽曲はもう本当に全部良い曲なんだから、そこで新たな面を見せるっていうところで、あのライブっていうのが、また新しく一歩を踏み出してるライブなんじゃないかなって思いました。
黒沢:結果的にそういうふうになったっていうところだったりするんですけど、自分でやってて本当に言われたとおり、いろんな時代からピックアップしてるんだけど、並べたらこれは俺の曲のトーンって意外に変わってないっていうか(笑)、悪い意味じゃなくてね。
すごく自分らしいんだなと思えたりとかしたんですよね。
それまではアレンジメントとかプロデュースとか、ポップスっていうものであるとか、そういう世界の中に身を置いていると、いつも新しいもの、時代に合ったものっていうのを作り出したい、だからカッコつけて過去を振り返らないって言ってるわけじゃなくて、今やってることがベストだということで、新しい曲の方が活動をする上で中心に置いて行く人生というか(笑)、音楽活動というか、そういうのが意識もしないで当たり前だったんですけど。
今回、変な意味じゃなくて、前の曲もそういう配信のタイミングで自分の中で捉え直して、しかも前とは違った形で演奏した時に持ってた曲の質感とか、自分の持ってたキャラクターみたいなのが、本当に気が付かないうちに再確認出来たっていうのは、自分でもすごく大きかったですね。
自分がこういう曲を書いてたなとか、こういう詞をあの時書いてたんだとか、無意識にやってたことも気づかされたこともすごく多かったですね。
なんか、あぁいう形で聴かせて頂いて思ったのは、黒沢さんの作る楽曲は普遍的なんだなって思いました。何年経っても全く古びてない感じがしましたね。だから全部、アコースティック・ライブで同一線上に置いて聴いても斬新でした。とかくアコースティックだけの演奏だとダレてしまうんじゃないかと思ってしまったりするんですが、そういうのが全くなくてとてもエキサイティングなライブでしたね。あの日のリスナーの方達もそう思っていたんじゃないかなと思います。
黒沢:嬉しいです、ありがとうございます。
個人的にもこのライブはCD化してくれないかなと思っていたんですが(笑)、このライブCDを出そうと思ったっていうのは、どういうところからだったんですか?
黒沢:これもそのライブの流れから、本当に自然というか(笑)、最初はライブCDの計画は全くなかったんですよ。
事務所の社長が急遽2日位前にスタッフを手配して、とりあえず資料用で録っておこうっていうので、録音を回していたんですね。
だから僕も、ライブのほんとにちょっと前に録りますからってことを聞いて、でも急遽だったんで、その時はたぶん回りのコンサートスタッフも事務所のスタッフもライブ盤にするから録るっていう形よりも資料的という意味でとりあえず残しておこうみたいな感じだったんですけど、ラフ・ミックスをその後に聴かせてもらったら、すごい良くて(笑)、自分で聴いて、これはすっげー良いライブだなとか思って(笑)。
ライブとして演奏が云々というよりドキュメントとして、最初にお客さんもどんなライブになるんだろうって緊張していて、そして僕らもお客さんに対して、最初はちょっと緊張感があったけど、だんだんお客さんも一緒にライブの中に溶け込んで来て、だんだん人が一緒になって行くみたいな、ドキュメンタリーとしてはこれはすごいなぁと思ったんですね。
そこでその音源をエンジニアの方に託して、今こういう状態で作ってあるライブ盤なんですけど、まとめて頂くことは出来ますかという形で、まぁ、全曲収録はさすがにちょっとCD1枚では難しかったんで曲を選んで・・・。
なんかオール・タイム・ベストみたいな感じになってますよね。
黒沢:結果的にそうですね。
本当は全部入れて欲しかったですけど(笑)、さすがにあんなに長い時間ですからね。でもその中でキチンとライブの始まりから終わりまでの流れが出来てるし、選曲も全部の時代を出してる感じ、そしてカバーまで入ってるじゃないですか、ものすごくバラエティーに富んだアルバムになってるなって思ったんですけれども。
黒沢:さすがに本当のテイクというか、録音状態は2時間40何分とかだったんで(笑)、それは相当、聴くのも大変ですよね(笑)。
演奏は一切直しなしの曲だけ選んで、本当は秀樹との共演パートとか入れたかったんですけどね。
でもそれ1曲だけ入れちゃうんだとバランスが悪くなっちゃって、選曲は悩みましたけど、やっぱり演った順で16曲っていうんで、初めて聴く方にも自分の中では1枚のCDでギリギリ収まるのはこれくらいかなって、ストーリーもドキュメンタリーもちゃんと残しつつ、こんな感じじゃないかなというアルバムになってると思いますけどね。
おっしゃって頂けたようなアコースティック・ライブなのに何か普通のアコースティック・ライブじゃないじゃないですか(笑)、当日の雰囲気とか、あの場に居た人にしかわからない、あぁいう感じって、なかなか特にないと思うので。
空気感みたいなのも切り取って、パッケージ化されているような感じがしますよね。お客さんの気持ちとか声援とかも入ってるじゃないですか。ライブの空間を切り取ってアルバムにして頂いたところなんですけれども、このCDを作るに当たってこだわった部分とかはありましたか?
黒沢:まぁ、1枚にまず収めたいっていうことですかねー(笑)、長いしなぁみたいな。
(笑)。
黒沢:ライブが東京でだったので、当日来られなかった方もいらっしゃると思うんですよ。だから今、黒沢はこんなことをやっておりますという、音の状況報告みたいなのにもなれば良かったし・・・・。
あと、そうですね、こだわったのは嘘がないライブにしたいなと思ったことかな。直してもいないし、演奏も間違ってたらそのままだったりとかするから(笑)、これはこのままの方が良いなみたいな。
今やっぱりハードディスクのレコーディングの時代になってるのでいろいろと変えられると思うのですよね。いろんな意味で捏造って出来ると思うんですよ。
(笑)。
黒沢:演奏にしても、音楽だけじゃなくて、いろんなものがたぶんそうだと思うんだけども、よく見せて行ったりとか、人の手を加えやすくなって行って。
そうですね。
黒沢:それはそれで僕も良いことだと思うし、楽になってる部分っていうのもあると思うんだけど、でもそれをもっと大幅に超えることって、何なのかって実は自然なままの瞬間っていうか。
例えばものすごい時間を掛けて作った音源よりも、吊るしてある鐘をゴーンって叩いた時の方が体にガッと入ってくるとか、そういうことを最近思っていて、だから今回のライブもそのまま手を加えたかったっていうか、ここの俺の演奏、ちょっと悔しいなぁと思いながら、直したいなぁなんて思ったところもあったんですけど、エンジニアの方にメールを送ったら、すぐ却下されましたね(笑)「ダメ!」「はい・・・」みたいな。
(笑)
黒沢:そういう自分の誘惑に打ち勝って、これはもうこのまま!っていうふうなところはこだわりましたね。
ライブの音源なので間違ってるぐらいな方がリアルだし、聴き手の方も生でぶつけてもらってる気はしますよね。5年振りで活動を再開します、今の自分ってこんな感じですっていうのをドーンみたいな感じで受け止めてもらうっていう意味では間違っててもその方がリアルな気はしますよね。
黒沢:うん、やっとそういうふうに思えるようになったんじゃないですかね。
はっ、そうですか!
黒沢:(笑)そういうライブが出来たなら。
まぁ、ライブだけじゃなくて、前は作品として何か残すものっていうのは細かく詰めたりとか、まだその気質は人より強いと思うんですけども。
でもピアノ一本とアコースティック・ギターっていうだけでもスリリングなわけじゃないですか、アレンジとかどうやって決めたんだろうって思いましたよ。
黒沢:いやー、これが・・・(笑)、決めたというか、遠山さんはL⇔Rの時代から必ず隣に居てくれて、一緒にレコーディング状況とか、アレンジがどういうふうになって行ったかの歴史も知っている人なんで、じゃあ、アコースティックで2人でまず楽曲の骨格だけやってみようって言った中では最初のベーシックはすんなり行ったんですけど、もうバンドですからね、2人だから。
だから間違えることとかよりも、感覚はすごいアナログですよね。
ここはこう行かなきゃいけないみたいな。
もう練習のやり方がアマチュアの頃に戻ったみたいな感じで(笑)、仕事の現場とかだと2人ともプロデュースとかもいろいろやってたりとかしてたんで、いかに速く仕上げるかみたいなものっていうのは大事なところなんですよね。
だからそういう中でここら辺はこういうふうに形にしてみたいなのの中で一緒に時間を使った仲なんだけど、今回はもうそういうんじゃなくて、もうとにかくここは合わないから、「せーの!いちにぃさんしっ!」とか(笑)、もう全然今までやって来たことと2人は全く違うみたいな(笑)、だから面白かったですよね。
すごいですね(笑)。
黒沢:俺ら今までと全然違うことしてるみたいな。
今まではパソコン上の画面の中でここのノリを合わせるのは何ミリだけここ合わせようとか、二人でパソコンで計算しながらやってたのが、もうそういうのもなしで「せーの!いちにぃさんっ!」とかやってるわけだから(笑)。
なんでしょう、自分の中のリズム感みたいなものをお互いに一緒に合わせてっていうところでしょうね。
黒沢:そうそう、だから今までずっとスタジオで一緒にやって来てて、そういうのってあんまり気にしたことなかったんですよね。
レコーディング上でお互い別なトラックで弾いてたりするから。
「じゃあ、次は健ちゃんの番、次は遠山さんの番で」みたいな、一人一人が良ければ、それで良いって感じだったんだけど、今回は二人が良くないとダメだ!みたいな(笑)。
あぁ・・・息が合わないと。
黒沢:そう、息が合わないとダメだし、この楽曲に対して二人の解釈が合ってないとダメだから、なので超アナログですよね。
どっちかというとアマチュア・ミュージシャン系ですよね(笑)。
黒沢:そうそう。
てっきり綿密に打ち合わせとかをして、いつもやっているのかなと思っていたんですよね。
黒沢:いやー、綿密に打ち合わせしてたら逆に怖くて出来なかったかもしれない。
そうだよなーとか思っちゃったら、それで2時間ステージをやるのはちょっととか、曲もこうだしなぁみたいな、綿密に考えてたらちょっと飛び込めなかったかもしれないですね。
今、思えばですけど。
勢いみたいなのがあったのかもしれないですね。
黒沢:ライブの前、Apple Storeが最初のお披露目だったんですけど、正直言ってその前までは大丈夫なのかなとか自分はドキドキでしたね。自分がっていうより、お客さんが楽しんでもらえるのだろうかとか、そんなことを考えてすごく緊張してた気がします。
過去の経験があれば、大丈夫やったことがあるって思えるけれども、やったことがないわけじゃないですか。だから余計ドキドキしますよね。またApple Storeっていうのが斬新ですよね。
黒沢:最初がそこでお披露目で、入り切れないくらい人が来て頂いて(笑)、すごく嬉しかったんです。ほんとありがたかったですね。でもApple Storeでそこでやって・・・、今、話してても緊張しましたね(笑)。
でも本当にどれだけ待たれていたかっていうのが、お客さんの行動でわかる感じですよね。
黒沢:だから余計に自分のやってたことっていうのが、どういうことなのかっていう認識は、僕もまだわからないんですけども、ただ良い曲を書きたいな、良い歌を歌いたいなと思ってるっていう、ただシンプルな考えだったのが、そういうふうに気に入ってずっと聴いて頂いている方がいて、あれだけ待ってて下さるっていう事実を目の当たりにすると、やっぱり頑張らないとなと思いますね。
それってたぶんリスナーの方は黒沢さんの口から言ってほしい言葉なんじゃないかなって気がしますね。このライブをやって頂いて個人的にとても良かったと思いますよ。5年振りなのにすごいライブしちゃって、すごいライブアルバムも出してしまうわけですしね。
黒沢:今回のアルバムは何か考えてたとかっていうわけじゃなくて、いつもそうなんですけど、これはこうなんじゃないの?って飛び込んじゃって・・・。
意外とあまり考えないで行動しちゃったりするんですか?
黒沢:自分は逆に考えちゃうとちょっと動きが悪くなっちゃうというか、たぶん性格的なものなんでしょうけど。
アルバム制作で60曲の中からみたいなことを考えてた時もファンの人も含めてだけど、今、リスナーにどういうものが良いかって考えてしまって、だから自分のことになるとちょっとプロデューサー意識っていうのが入り込むタイプなんでしょうね。
他の方のプロデュースとかやってる時はテキパキと出来るんだと思うんですけど、自分のになっちゃうとそういうのが難しいのかな。
他の方だと客観的に判断が出来るからある程度のところで区切りを付けたりとか出来るのかもしれないですが、自分のことだと難しかったりしますよね。個人的には60曲のストックと聞いた時に毎月リリースで半年とかでも良いかなと思ったんですけどね(笑)。
黒沢:そう考えるとL⇔Rでデビューして最初の1年ってフルアルバム2枚にミニ・アルバム2枚、シングル2枚出してたんですよね。
すごいですね!(笑)
黒沢:(笑)、すごい出してたなぁ。そういうのもやろうと思って出来なくはないけど、でもそうなるとレコーディング以外は全く出来なくなるでしょうね。
それもやっぱり良し悪しだなと思うし、そういうのはなかなか難しいかな。
そうですよね(笑)、ではライブアルバムのお話に戻そうと思うんですけれども、このライブアルバムの聴きどころを敢えて語って頂くならばどんなところだと思いますか?
黒沢:自分としてはドキュメンタリー盤的な感じがありますね。
ライブ盤って1曲1曲、この曲はアレンジがこうでってやり方もあるんだろうけど、生の面白さ、良いも悪いも引っくるめて(笑)、そういうのが感じられる珍しいアルバムだと思いますので、ぜひ聴いて楽しんで頂けると良いなと思いますね、全部人間がやってる感じっていうか(笑)。
とても稀有なライブアルバムですよね。
黒沢:そうですね、それだけは自信を持って言える(笑)、稀有ですよ、こんなのないよみたいな。僕も相当音楽ファンとしていろんなCDも聴きますし、いろんなライブも見たりしてますけど、これはあんまりないな、出すべきだなとやっぱり思えた理由ですね。
ものすごいアルバムですよね。
黒沢:うん、ドキュメンタリーだし。
スリリングさもあって、そして決して振り返ってるわけじゃないところがすごく良いと思ったんですよね。もちろん過去の曲もやっているけれども、でもそれは新しい感じというか一歩進んだ上での昔の曲を新しくやっている感じがしましたね。
黒沢:でも確かに先程の新しいものっていうものの中で自分がそれで動いて来たので、新しいものというか新曲を書いたりとか作り出すっていうことで、音楽やって行くっていうのが中心だったんで、配信っていうので自分の前のカタログっていうのを聴き直したら、新鮮だったんですよね。
忘れてたわけではないんですけど(笑)、自分も新しい曲のように思ったし。
それをまた自分でやるっていうのは、ずっとやってた曲達ではないので、昔の曲達を引っ張り出して来たのは、ソロになって初めてやる曲も多いし、今まで歌ってない曲の方が多かったかな。
それではファンの方が絶対聴きたいだろうなぁということを敢えてお伺いさせて頂こうと思うんですけれども、今後の活動予定とかオリジナル・アルバムのこととかはいかがですか?
黒沢:はい、オリジナル・アルバムはすごく出したいですね。
どういう形で出すかとかはまだ悩んでるとか迷ってるとかじゃなくて、口でなかなか言えなくて申し訳ないんですけれども、配信をした時も、これアルバム・パッケージにすると、なんかバラついちゃうな、配信!やった!これで聴いてもらえる!みたいな、なんかそういうのって、パーン!みたいなのって、そうすると結構気も楽になるし、モチベーションも上がるしみたいな、そういうタイミングが、今ある曲をまた再構築してアルバムとしてみたいな、そういう道筋もあると思うんだけど、何か・・・、このライブ活動が終わった後にもう一度聴き直した時に自分がどう思うかも、きっと変わってると思うんですよね。
それをした時に今の自分を表現する際にこういう曲は良いのかなと思えるかもしれないし、でも日々、アルバム作りに関しては新曲のことも考えたりもしてますし、なにか作品にして人に届けたいなっていう気持ちは忘れたことはないので、具体的にどれぐらいってことは今はちょっと言えないですけど、4枚目のソロ・アルバムは必ず形にします。
楽しみにしていますね。それでは最後にみなさんに向けてのメッセージをお願いします。
黒沢:今回のライブアルバムはまさに自分で聴いてもなかなか稀有なライブ盤だと思っています。
ライブ盤なんだけど、オリジナルアルバム、黒沢のソロの新しい第一歩が今、詰まっているような作品だと思っているのでぜひ聴いて頂ければ嬉しいなと思っています。
ありがとうございました。
黒沢:ありがとうございました。
2008年5月初旬)
プロフィール
黒沢健一
1968年8月11日生/B型19歳、南野陽子、島田奈美などへ楽曲提供やCM曲提供など、作家としてデビュー。
1991年 弟 秀樹、木下裕晴と共にL⇔Rを結成。1995年オリコンNO.1シングル「Knockin' on your door」を初めとした純度の高いポップスを送り続ける。1997年活動休止までレギュラーラジオ番組・全国ツアー、など精力的に音楽活動を行う。
L⇔R活動休止以降、ソロ活動開始。
シングル、アルバムのリリース、ツアーを行い、3枚目のアルバムリリースとツアー終了後に、制作意欲が爆発。
2003年~2005年にかけて curve509、健'z、Science Ministry、MOTORWORKSと4つのバンド、ユニットで活動の幅を広げる。
また、森高千里・湯川潮音などへの楽曲提供、徳山秀典・hi*limitsなどのプロデュースなど活動は多岐にわたる。