アー写近影
Ox(ベース)、Kita(ドラム)、Mr. Lordi(ヴォーカル)、Amen(ギター)、Awa(キーボード)
all pix : Yuki Kuroyanagi

ヨーロッパ圏で実に50年以上の歴史を誇る由緒正しき音楽コンテスト『ユーロビジョン』で過去最高得点を獲得し見事優勝、栄冠を手に行った母国フィンランドでの凱旋ライヴには10万人ものファンを集めた超人気ハード・ロック怪獣軍団、ローディが、待望の初来日公演を実現させた。
この時点で日本では、目下の最新作「ハード・ロック黙示録」1枚しかリリースされていないといういささか寂しい状況だったにもかかわらず、東京公演の会場となったShibuya O-EASTはほとんど満員と言える盛況っぷり。しかも開演前のフロアからは自然に“ローディ・コール”が上がるほどの熱の入りようである。

そんなバリバリの歓待ムードに包まれて始まった注目の日本初公演は、いうなれば“ハード・ロック・ファンの、ハード・ロック・ファンによる、ハード・ロック・ファンのための極上のエンターテイメント・ショウ”であった。…いや、正直なところを言うと、演奏に関しては時々おぼつかない場面も見られたが(特にギターのAmenは!)、だからといって、ローディ流モンスター・ハード・ロックの醍醐味が殺がれてしまうなんてことはまったくなし。
観ている最中はむしろ、彼らの音楽にたんまりまぶしこまれた80年代ハード・ロック / ヘヴィ・メタルへの尽きることなき愛情の深さと、茶目っ気たっぷりのパフォーマンスに表される旺盛なサービス精神に感服させられっ放しだった。

中にはローディの出で立ちやシアトリカルなステージ運びを見て聖飢魔IIやGWARを思い出した人もいるかもしれないが、おそらく彼らの根っこはほとんど同じところにあるはず。ローディがKISSのファンクラブを介して結成された経緯はファンにはよく知られているところだし、いかにも怪獣っぽい大仰なアクション(戦隊ヒーロー物の悪役みたいな感じ)で客席を盛んに煽りつつダミ声とハイトーンを織り交ぜたパワフルなヴォーカルを轟かせていく首領Mr. Lordiの姿から、ウド・ダークシュナイダーやキング・ダイアモンド、ロブ・ハルフォードといった個性派シンガー達、あるいはロブ・ゾンビやアリス・クーパー、マリリン・マンソンをはじめとする邪悪なエンターテイナー達の息吹を感じ取ることは、そう難しいことではない。
というか、ライヴ終盤に用意されていたKitaのドラム・ソロ・タイムが、モトリー・クルーやアクセプト、スキッド・ロウ、ディープ・パープル、KISS等の名曲達をネタにした、ある意味ローディ自身による音楽的レシピ公開の意味合いを持ったものになっていたこと自体、醜悪なマスクの奥に潜む彼らの素顔が、今でも変わらず“ワクワクしたくてしょうがないハード・ロック・キッズ”のままであることをあからさまに表していたように思える。

ローディ流の宣戦布告と言うべき「ロックを取り戻せ」に幕を開け、早くも彼らの代表曲・ライヴ定番曲となりつつある「フーズ・ユア・ダディ?」「ただ死者と遊びたい」「デッダイト・ガールたちは大騒ぎ」などを旧曲と共にきっちりプレイ、二度のアンコールを挟んでのラスト「ハード・ロック・ハレルヤ」まで約80分間、各曲のコンセプトに則った仮面や衣装、斧や翼やガイコツ等の小道具類を駆使しつつ、ただひたむきに“恐くて楽しいモンスター・ワールド”を作り上げていったローディ。
見た目のグロテスクさに気圧されて、いまだ彼らの世界に入っていけないという人も結構たくさんいるに違いない。けれど、勇気を出して一歩を踏み出せば、彼らはいつでも最大級のサービス精神をもって、ポップでキャッチーでワクワクするようなハード・ロック普遍の魅力を存分に味わわせてくれる。その最初の一歩を踏み出すかどうかは、もちろんあなた次第だ…。
アー写

Set List@Shibuya O-East on April 9th 2007

  1. intro
  2. Bringing Back The Balls To Rock / ロックを取り戻せ
  3. Get Heavy / ゲット・ヘヴィ
  4. Who's Your Daddy? / フーズ・ユア・ダディ?
  5. Supermonsters (The Anthem Of The Phantoms) / スーパーモンスターズ(亡霊たちの聖歌)
  6. Pet The Destroyer
  7. The Kids Who Wanna Play With The Dead / ただ死者と遊びたい
  8. Blood Red Sandman
  9. Biomechanic Man / バイオメカニック・マン
  10. Good To Be Bad / 悪に染まれ
  11. It Snows In Hell / 地獄に降る雪
  12. drum solo
  13. The Deadite Girls Gone Wild / デッダイト・ガールたちは大騒ぎ
  14. Devil Is A Loser / 負け犬悪魔
----------1st encore----------
  1. They Only Come Out At Night / ヤツらは夜現れる
  2. Would You Love A Monsterman / モンスターマン
----------2nd encore----------
  1. Hard Rock Hallelujah / ハード・ロック・ハレルヤ
  2. outro