今宵の出席者


オーヌキ:今宵の司会・進行役。30代。夏がくれば思い出す、bloodthirsty butchersの「7月」とeastern youthの「夏の日の午後」。極東の夏は叙情的。
「ベイエリアな夏」と「デトロイトな夏」
――今回のお題は「○○な夏」。というわけで、お2人にはいつものとおり5枚ずつレコードをお持ちいただきましたが、ありきたりなセレクションになってしまってもつまらないので、今回はあえて1つ条件を設けさせていただきました。「サザンオールスターズやTUBE、エルヴィス・プレスリーやBEACH BOYSなどの“定番もの”は禁止」です。

――どこか『風と共に去りぬ』を思わせるというか・・・爽やかなジャケットですね。


IT'S A BEAUTIFUL DAYは、ヴァイオリンとヴォーカルを担当するデイヴィッド・ラフラムを中心に1967年に結成されたサンフランシスコのバンドで、彼の他に、女性ヴォーカル、鍵盤、ギター、ベース、ドラムがいる6人編成。ちなみに鍵盤を弾いてるのはリンダ・ラフラムという女性で、デイヴィッドの奥さん。
60年代末から70年代頭にかけて活動していた、いわゆるベイエリア・シーンの一翼を担ってたバンドだからさ、当然ながら地元のライヴハウス『Fillmore West』にもしょちゅう出てた。JEFFERSON AIRPLANEとか、GREATFUL DEADとか、SANTANAとか、ジャニス・ジョプリンがいたBIG BROTHER & THE HOLDING COMPANYとか、そのへんの人達とはよく一緒にライヴやってたらしい。だから後に音源化/映像化された『フィルモア:最後の日』にももちろん入ってる。
――すみません、初耳だったのですが、ベイエリア・シーンというのは・・・?



――なるほど。だからこそ“いかにも夏!”というのとは違う哀愁のある曲調なんですね。





――いやはや、これは驚きましたね。さすがに途中から展開は違ってきますが、イントロはまるっきりそのまんまじゃないですか。ビックリですよ。はてさて、対する東風平さんの「○○な夏」はいかがでしょうか?




――ほうほう、これは意外なセレクションですね。なぜに『Alive!』を俎上に?

まず、“地獄をもしのぐほどの猛暑”ということで「Hotter Than Hell」。それから、あの長嶋茂雄さんが女の子をナンパする時に言い放ったという殺し文句「Hey, she!」にちなんで「She」。あとこの季節、夜中に突然耳をつんざくロケット花火のキュイイイイイン・・・パンッ!って音は風物詩ですよね。(笑) おそらく近所の公園でオールナイトのパーティでもやっているんでしょう。つまり「Rock And Roll All Nite」と。
――・・・うん、全部コジツケですね。

ご存知のとおり、この『Alive!』はKISSの人気を決定付けた1975年発表のライヴ・アルバムで、アメリカだけで50万枚以上を売り上げています。つまりこのレコードが彼らにスターダムへとのしあがる最初のきっかけを与えたわけですが、ここで見逃せないのがデトロイトでの熱狂的な盛り上がりです。
そもそもKISSの人気はデトロイトから火がつきました。だから“ライヴ・アルバムを作ろう”という話が持ち上がった時に、デトロイトは真っ先にレコーディングの候補地になった。このレコードには他にもクリーブランドやダベンポートなどいくつかの公演の模様が収められていますが、裏ジャケがデトロイトの『Cobo Arena』で撮られた写真になっているのはそのためでもあるんですよ。
ちなみに、翌年発表された『Destroyer』の1曲目が「Detroit Rock City」なのも、そういう背景があってのことなんです。

――それは意外ですね。プログレ派のチャーリーさんがKISSをやってたなんて。

「行き過ぎてしまった夏」と「海の子供達の夏」
――それでは、実は高校生の頃、エース・フレーリーだったというチャーリーさん、2枚目のプレゼンをお願いします。

――僕の知っているTHE DOORSとはちょっと印象が異なるというか・・・





ロビー・クリーガーも変わったギターを弾く人なんだよね。たぶんピックを使わず、全部指弾きしてる。だからカッティングとかはあまり出て来なくて、歌やオルガン・ソロのバックでもなにかしらフレーズを弾いたり、アルペジオをやったりしてる。そこがおもしろいんだ。もともとスパニッシュ・ギターをやってた人らしいしね。




これは後から知ったことなんだけど、この前の2枚のアルバム、1stと2ndの収録曲って、デビュー前からストックとして持っていたものなんだって。だからスタジオで一から曲を作り始めたのはこのアルバムが最初だったらしい。・・・といっても、「Hello, I Love You」はもとからあった曲なんだけどさ。
ただ、そういうことを考えると「Summer's Almost Gone」も単純に“夏”のことを歌ってるのかもしれないと思いつつも、やっぱり「THE DOORSがやってるんだから何かあるんじゃないか?」と考えてしまうんだよね。


その昔に雑誌か何かで読んだんだけど、ある時、ジム・モリソンとジャニス・ジョプリンがバーで並んで飲んでたんだって。で、酔っ払ったジム・モリソンが、サザンカンフォートっていうお酒の瓶でジャニスの頭を殴ったらしいんだけど、それから俺もサザンカンフォートを飲むようになったもん。「お~、この瓶で殴ったのか~」とか言って。(笑)
――60年代のアメリカを代表するロック・アイコン2人が並んで飲んでいたというだけでもレアですが、ケンカまでしていたなんて凄い話ですね。(笑) それでは続いて、東風平さんの夏曲はいかがでしょう?


――・・・またもやコジツケ!

――ええ、その点は認めざるをえません。ただ、今の話でテーマの“夏”からはさらに遠ざかってしまいましたけどね。

――“夏”と言えば「フェス」、「フェス」と言えば「Ozzfest」くらい言ってもらえれば、もっとすんなり話を聞けたのですが。



前任のオジーとはまったく正反対と言っていい、力強い声で流れるようなメロディをきちんと歌いこなせる実力派のロニーが加わったことで、BLACK SABBATHはこの後、いわゆる様式美な方向へと進んでいくことになるわけですが、その原点と言えるのがこの曲、新体制で初めて作った曲と言われているこの「Children Of The Sea」なんです。


「真実の愛を探す夏」と「ぬかるみに足を取られる夏」
――なんとかきれいに話がまとまりましたね。では、3枚目と参りましょう。チャーリーさん、次のレコードをお願いします。

――このメンバー写真がまた、モノクロの宣材を雑に切り抜いて強引に貼り付けたような具合で・・・『ガキの使いやあらへんで!!』のDVDみたいなジャケですね。(笑)






――曲調はかなり哀愁を感じさせるものですね。英国風と言うべきなのでしょうが、こういうメロディは日本人の琴線にも触れるものだと思います。だからこそ日本でもすごく人気があったんでしょう。・・・さて、それでは場もしっとりといい感じに落ち着いたところで、東風平さん、お願いします。

――それってどういう・・・ああ、なるほど、これはだいぶ重いですね。ギターもかなりノイジーだし。(苦笑)


ざっくり基本データを紹介しておくと、この16はロサンゼルス出身のスラッジ・メタル・バンドで、これは1997年発表の3rdアルバム。今かかっているのは「Asian Heat」という曲なのですが・・・どうです? 湿度が高くてねっとり汗が滲み出してくるような、あまりの熱気に呼吸が浅くなってしまうような、アジアの猛暑っぽい感じがしません?
――言われてみれば、まあ・・・そういう感じもしないではないですね。

ただ、彼らはスラッジ勢の中でもなかなかユニークな存在で、当時からメタルやハードコアだけでなくオルタナティヴ・ロックの影響もかなり取り入れていた。例えば、HELMETとかUNSANEとかJESUS LIZARDとか、レーベルで言うと『Amphetamine Reptile』とか『Touch And Go』あたり。だからそっち方面から来たファンも結構多いんだ。
――なるほど。MELVINSっぽいところがあるのも、つまりそういうわけなんですね。

――質問したつもりはないですけどね。(笑) でもまあ、納得です。
「'68年の夏」と「“秒殺”な夏」
――それでは続いて4枚目、チャーリーさん、次のレコードをお願いします。

――さすがにこれは、僕でも知ってます。


ここで歌われてるのは「グルーピーの女の子と一晩過ごして、朝が来て、なんだか空しい日々だなと感じていて」みたいなことなんだけど、当時のPINK FLOYDといったら、それなりに人気も出てツアーもどんどん忙しくなり、という日々を送っていたはずだからさ。実際にそう感じていたんじゃないかな。
ただ、不思議なことに、リック・ライトってあまり目立たないんだよね。プログレ・バンドの中ではキーボードって花形のポジションなんだけど、彼はシンセだメロトロンだといろいろやってるわりには、バリバリのソロを弾いたりもしないし・・・。


――まさに言いえて妙、ですね。


でも、そのソロ・アルバムが出た1978年頃って、そろそろPINK FLOYDをクビになりかけてたあたりなんだよね。だからウォーターズにとってはもはや要らないメンバーだったのかもしれないけど、ファンとしては「いやいや、要るでしょうよ!」と。(苦笑)
――そういうことって、ままありますよね。いわゆる“大人の事情”なども実はあるのかもしれませんが。(苦笑) さておき東風平さん、この大名盤に何をぶつけますか?


――・・・まさか、これをBGMにしながら語るつもりじゃないでしょうね?

このAGORAPHOBIC NOSEBLEEDは、アメリカはマサチューセッツ州出身のグラインドコア・バンドで、かつてA.C.に在籍していたスコット・ハルを中心に結成されました。
――出た、A.C.!(笑)



だから発想としてはすぐ近くにあったんだけれども、それを本格的に取り入れてしっかりとした形にしてみせた点で、彼らは斬新だった。AGORAPHOBIC NOSEBLEEDが当時のアンダーグラウンド・シーンに与えたインパクトって、ものすごく大きかったんですよ。
――なるほど。それはそれで納得なのですが、そもそもなぜこのレコードを出されたのですか? テーマは「○○な夏」ですよ?

――まさに“秒殺”なんですね。(笑)
「あの人の若かりし頃の夏」と「この人の若かりし頃の夏」
――さて、それではいよいよ大詰め、最終戦と参りましょうか。チャーリーさん、トリを飾る5枚目のレコードをお願いします。

このアルバムは大瀧さんがまだはっぴいえんどをやってる時に作られたんだけど、本当はこの後に、細野晴臣さんと鈴木茂さんのソロも作られるはずだったんだ。だけどその前に、はっぴいえんどは解散してしまった。


ちょうど『風街ろまん』を録音してた時なんだけど、細野さんの曲には大瀧さんのパートがまったく入ってなかったから、大瀧さんは暇になっちゃった。で、スタジオでぶらぶらしてる時に、プロデューサーの三浦光輝さんに「ソロ作んない?」って言われたらしい。(笑) 実際はもうちょっと複雑な話がいろいろあるんだけど、とにかくまあそんな感じでこのアルバムは作られたんだ。
・・・この「♪つさのせ~い」ってコーラスがまたいいんだよね。このコーラスをやってるのはシンガーズ・スリーっていうグループで、どっちかと言うと歌謡界を中心に活動してるお姉さん達なんだけど、当時は引っ張りだこでさ。『11PM』とか『ルパン三世』のスキャットと言えばわかるかな?


――そう運命に導かれたんでしょうね。ちなみに、大瀧さんの音楽的なルーツというと、どのあたりになるんでしょうか? さきほどから聴いていて、サウンドにすごく洗練されたところと懐かしいところが同居しているような気がしていて・・・

上京して細野さん達と知り合ってからも、日曜日の午後にみんなで集まって、音楽研究会みたいなことをしてたらしいよ。細野さん宅でレコードをかけあったりしてさ。ある時、テーブルの上にたまたまYOUNGBLOODSのシングル盤を置いといたら、大瀧さんが部屋に入ってくるなり、「お、YOUNGBLOODSじゃん!」って言ったらしいんだけど、その時、細野さんは思ったんだって。「うん、こいつわかってるじゃん!」と。(笑)
――いい話ですね。(笑) さて、そろそろ東風平さんにも最後のレコードをお願いしましょうか。シメもやっぱり、試練ですか?


このSAM GOPALは、マレーシア生まれのタブラ奏者サム・ゴーパルを中心にロンドンで結成されたサイケデリック・ロック・バンドです。60年代後半のバンドなので、当時はPINK FLOYD、SAVOY BROWN、CRAZY WORLD OF ARTHUR BROWNなんかと一緒にライヴをやっていたそうです。
この『Escalator』は彼らが活動期間中にレコーディングした唯一のアルバムなのですが、ここでヴォーカル&ギターをやっているのがなんと、イアン・ウィリス・・・後のレミー・キルミスターなんです!
――おおーっ、これは驚きです!




――同感です。僕も最近、ようやくその奥深さに気付きました。まだまだ聴くべきバンドやアルバムがたくさんありますね。
というわけで、今回もまたいろいろと発見がありました。近々【第五夜】を開催したいと思いますので、ネタ探しはしておいてくださいね。それではまた次回お会いしましょう。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ!
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