銃撃されたトランプ前大統領の写真

2024年7月13日、米国ペンシルベニア州での選挙集会中にドナルド・トランプ前大統領が銃撃され、右耳を銃弾が貫通する事件が発生。

事件直後、星条旗を背景にSPに支えられながら拳を突き上げるトランプ氏を捉えた写真が、アメリカ政治の分断と緊張を背景としながらも、その星条旗を頂点とした三角構図の完璧さ、SPに女性が含まれていること、そして何よりトランプ氏の姿が「不屈の精神」を現わしているとして話題になりました。

この写真の撮影者であるEvan Vucci氏は、2021年にミネソタ州ミネアポリスで起きた、白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさん殺害事件に対する抗議活動の様子を収めた一連の写真でピューリッツァー賞を受賞。今回の写真でも受賞候補になるのではないかといわれています。

そこで今回は、過去にピューリッツァー賞を受賞した作品やアーティストの中から印象深い5つをご紹介したいと思います。

ピューリッツァー賞とは?

沢田教一

ベトナム戦争を取材中に撮影された、銃弾を避けながら川を渡る母子の写真『安全への逃避』でピューリッツァー賞を受賞。

戦争の悲惨さと民間人の苦しみが表現された一連の写真は、戦争報道写真の代表作として高く評価され、彼の名前は国際的なフォトジャーナリズムの分野で広く知られるようになりました。

なお、日本人の受賞は、日本社会党委員長・浅沼稲次郎の暗殺の瞬間を捉えた写真を撮影した長尾靖に次ぐ2人目でありました。

ジョージ・F・ケナン回顧録

冷戦期のアメリカで対ソ連「封じ込め」政策を提唱するなど外交において重要な役割を果たした外交官、ジョージ・F・ケナンによる回顧録がピューリッツァー賞を受賞しています。

彼の外交官としての経験と洞察を詳細に記録したものであり、特に冷戦期のアメリカ外交を理解するための重要な文献として全米図書賞も受賞しており、多くの読者や研究者にとって必読の書とされています。ケナンの外交論は、単なる政策提案にとどまらず、アメリカの対外政策の根本的な考え方を示すものであり、その影響力は現在でも評価されています。

スポットライト 世紀のスクープ

2003年にピューリッツァー賞を受賞したボストン・グローブ紙の調査報道チームの実話を基に2015年に映画化され、第88回アカデミー賞では作品賞と脚本賞を受賞。

カトリック教会の児童性的虐待スキャンダルを暴いた記者たちの奮闘を描き、ジャーナリズムの重要性と社会正義を訴える作品として高い評価を受けました。

マーヴィン・ハムリッシュ

トニー賞を9部門受賞するなど大ヒットを記録したブロードウェイミュージカル『コーラスライン』の作曲を担当したアメリカの著名な作曲家。劇中の「One」や「What I Did for Love」といった楽曲は、ミュージカルファンの間で広く知られています。

EGOT(エミー賞、グラミー賞、オスカー、トニー賞)に加えてピューリッツァー賞も獲得した「PEGOT」受賞者の一人であり、ゴールデングローブ賞をあわせると歴史上にはリチャード・ロジャースを加えた二人しか存在していないそうです。

ケンドリック・ラマー

2017年のアルバム『DAMN.』でピューリッツァー賞音楽部門を受賞した初のヒップホップアーティスト。

現代を生きるアフリカ系アメリカ人の複雑な生き様を描写し、文学的な影響力を持つ作品として高く評価されました。彼の受賞は、クラシックやジャズが主流だった同賞にポップミュージックが認められた画期的な出来事となり、音楽界に大きな衝撃を与えました。