ドキュメンタリーはエンタメだ

NHK『ドキュメント72時間』が好きでよく観ている。

なぜならば、とある場所に集う人々に密着インタビューすると、皆それぞれに仕事、人間関係、病気、家族、お金など人知れぬ思いを抱えており、そんな人間模様が交差する街のリアルがとても興味深いから。

ドキュメンタリー映画というジャンルがある。

歴史や社会制度の矛盾、国・組織の不都合な事実を白日の下にさらすような作品のみならず、ある人物にスポットを当て深堀りしていくことで見えてくる、人間の業のようなものに思いを馳せる時間を提供してくれる作品も多い。

これぞエンターテインメント。痛快アクションや恋愛モノだけがエンタメじゃないんですよね。

ゆきゆきて、神軍

昭和天皇パチンコ狙撃事件などで各方面からマークされていた奥崎謙三に、ドキュメンタリー界の鬼才・原一男が密着し翻弄される様をも収めた壮絶なドキュメンタリー。

知らぬ存ぜぬは許しません。第二次大戦中に自らが所属していた隊で起きた隊長による部下射殺事件の真相を追い求めるべく、時に暴力も辞さない執拗な姿勢で元隊員たちを追及する奥崎の強引な迫力に圧倒されるばかり。

エンディングノート

ステージ4の胃がんが発見された父親を娘である砂田麻美監督がカメラを通して見つめ続ける。「段取り命」のサラリーマン生活を駆け抜けた父親が人生の総括として「自らの死の段取り」を始め、家族もその姿を見守っていく。

夜間もやってる保育園

新宿歌舞伎町近くの24時間保育園が主な舞台。様々な事情により夜間に子どもを預けざるをえない親、保育士たちの奮闘、子どもたちの無垢な笑顔や寝顔から垣間見える知られざる社会のかたちとは。

FAKE 佐村河内守

2013年に「ゴーストライター騒動」で世間を騒がせた佐村河内守氏に『A』『A2』の森達也監督が対峙する。

佐村河内氏の日常に寄り添う前半、海外メディアの取材から実像をあぶりだす後半の展開から「衝撃のラスト12分間」パートへとなだれ込む。どこまでが嘘なのか、嘘とは一体何なのか。森達也監督は佐村河内氏を、視聴者を、世間やメディアを常にけしかけ続ける。

世界で一番美しい少年

巨匠ルキノ・ヴィスコンティの名作『ベニスに死す』に出演し、「世界で一番美しい少年」と称賛され一大センセーションを巻き起こした少年がいた。その名は、ビョルン・アンドレセン。

愛情の欠如した両親に見放され、セレブ志向の祖母により華やかな世界に導かれるも、待ち受けていたのはあまりの美貌を性的搾取の対象としか受け止めない世界であった。

2019年の衝撃作『ミッドサマー』に出演していた白髪と長い白髭の老人が、誰あろう、ビョルン・アンドレセンであったことは世界を少なからず動揺させたことだろう。