山下達郎=レコードコレクター


ミュージシャン・タツローさんといえばレコードコレクターとしても知られ、自宅に6万枚を超えるレコードを所有しているそうです。
さらにゴム付き軍手を付け、レコード屋さんで掘りまくっていた等の、レコードにまつわる数々の武勇伝(?)を持つ生粋の音楽マニア。

音楽の知識、嗜好も幅広く、「え!?この作品にも影響を受けていたの!?」と懐の深さに驚くものも多くあります。

今回はタツローさんお馴染みの作品から、意外なものまで、いくつかピックアップしました!

<目次>


ビーチ・ボーイズ/デラックス(オリジナル発売 1967年)


山下達郎といえば日本を代表するビーチ・ボーイズのマニアで有名です。

ビーチ・ボーイズの傑作「ペット・サウンズ」の国内再発CDでは、タツローさんがライナーノーツを担当した事もあります。

タツローさんが1984年に発表したOST「BIG WAVE」のB面はすべてビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソンに関連した楽曲のカバー。

また、タツローさんが学生時代の制作した「ADD SOME MUSIC TO YOUR DAY」では、A面が全部ビーチ・ボーイズ・カバー!どちらも作品もマニアらしく絶品カバーです。

(ちなみに「ADO SOME~」のオリジナルレコード盤は、オークションサイトで100万円を超えることも珍しくないトップレア盤です。)

今回チョイスした作品は67年に発売されたビーチ・ボーイズ日本独自編集のベスト盤です。
「サーフィンU.S.A.」から「グッド・ヴァイブレーション」「神のみぞ知る」など、初期から中期の名曲がまとめられています。

美しく楽し気なコーラスは、達郎さんの作品に色濃く影響を感じます。


 

ハーパース・ビザール/コンプリート・シングルズ・コレクション


続いては60年代の米国出身・ソフトロック名バンド、ハーパース・ビザール。

日本では90年代に渋谷系の流れで再評価されました。

彼らはバーバンク・サウンドで知られるワーナー・ブラザーズの凄腕プロデューサー、レニー・ワロンカーがプロデュースしていました。

バーバンクサウンドとは60年代に民族音楽やカントリー、R&Bなどの忘れ去られた50年代の音楽要素を取り込んだジャンルで、グッドタイム・ミュージックとも呼ばれます。

特にハーパース・ビザールは、バーバンク・サウンド直系の音を鳴らしており「古き良きアメリカ」を感じられるバンドです。

ソフトロック金字塔であり、ヴァン・ダイク・パークスや、レオン・ラッセルといった西海岸ミュージシャンの要人たちが多数かかわっております。

特にシュガーベイブの頃のサウンドに、大きく影響を与えています。

本盤はファン大歓喜なシングル名曲コンピ


 

ジェームス・ブラウン&フェイマス・フレイムズ/スーパー・バッド・ライブ!

タツローさんがフェイバリットに挙げるファンクの帝王・JBをここでピックアップしました。

ジェームス・ブラウンの80年代のライブから良テイク集めたコンピ盤。
円熟したジェームス・ブラウンによる、60年代の楽曲も含めた名演を収録。

なんといってもパワフルなパフォーマンスにタツローが大ファンであるのを実感します。

 

フィフス・アヴェニュー・バンド / フィフス・アヴェニュー・バンド(オリジナル発売1969)年


お待たせしました。タツローさんが三種の神器と称するピーター・ゴールウェイ関連のトップ盤!
Fifth Avenue Bandの69年唯一作にして、ソフトフォーク傑作。

シティポップ/ニューミュージックの元祖、はっぴいえんが影響を受けた事やマニアックであるが、独自の審美眼でベストセラーを生んだ伝説のレコード屋、パイドパイパーハウスでもお馴染みの一枚です。

世界的な知名度の低さとは裏腹に、日本ではUSROCK至宝、そしてその後の邦楽史に大きな影響を与えた作品です。
ジャズやリウムアンドブルースを吸収し、60年代後半のセンスでまとめたライト感覚の洒落た歌と演奏が素晴らしいです。

SSW~ソフトロックファン皆様に大推薦です!
特にシュガーベイブや、はっぴいえんどがお好きな方に。

 

ジャクソン・ブラウン/ジャクソン・ブラウン・ファースト(オリジナル発売1972)


これちらは少し意外?に思えました!最近も来日公演がありました、偉大なSSWジャクソン・ブラウンの72年発表ファーストアルバム。

名門アサイラムレーベルから発表された一枚で、デビッド・クロスビーやジェシ・ディヴィスといった名手が多数参加しております。
サウンドは、アコースティックでシンプルかつ洗練された、上質ウェストコーストミュージック。

今までに見たコンサートのトップスリーはホリーズ、フリー、ジャクソン・ブラウンを挙げています。

今日でも最高峰のライブパフォーマンスを披露するタツローさん。
ライブのクオリティーにも影響を受けているかも知れません。
ジャクソン・ブラウンもまだまだ現役でライブをされているので、見る機会がある方はぜひ。

軽くソウルフルな歌声など、影響感じる瞬間満載です。

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ヴァン・モリソン/ムーンダンス(オリジナル発売1970年)


達郎さんがコレクターであると知られるアイルランド出身、孤高のシンガー ヴァン・モリソンをピックアップ。
60年代にROCKバンドTHEMとしてデビューし、今日でも最高の歌唱と音楽性でROCKを貫くミュージシャンズミュージシャン

ヴァンモリソンは68年にソロ2ndにしてROCK史に残る傑作「アストラルウィーク」を発表しました。しかし現在の評価とは異なり当時セールスは振るわず、ゴールドディスクに認定されるまで33年もかかりました。

現在世界中でウォントのあるシュガーベイブも1975年当時のセールスは上がらず、多くの人に理解されるまで時間がかかりました。 そんなところにも親近感があったりするのかな。。。とか考えてます。

稀代のソウルシンガーの、ソロ3rd名盤をどうぞ。

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アイズレー・ブラザーズ/ブラザー・ブラザー・ブラザー(オリジナル発売1972年)


60年代から名作を多く残してきた米国が誇るバンド、アイズレー・ブラザーズからも多くの影響を受けています。

名盤多い彼らの作品から黄金期T-NECK時代、1972年の傑作「ブラザー・ブラザー・ブラザー」をセレクトしました。

ファンク/コンテンポラリーR&BといったROCKとブラックミュージックの混ざり合ったサウンド。

10分を超える名曲「It's Too Late」をはじめ、キャロル・キングからの提供曲を中心にポップな雰囲気と上質な楽曲が詰まった作品です。

ROCKとブラックミュージックとPOP度のバランス感がシュガーベイブ「songs」を思わせます。
特に「DOWN TOWN」はアイズレーを意識して制作されたそうです。

またタツローさんのアイズレーの中で特にお気に入りは「 HURRY UP ANDWAIT 」 だそうです。

80年代当たりの「BONBER」などディスコナンバーに強く影響を感じますね。

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ニック・デカロ/イタリアン・グラフィティ(オリジナル発売1974年)


続いては、AORの生みの親と称され、達郎さんが敬愛する名アレンジャー、ニック・デカロ。

先ほど取り上げたハーパース・ビザールといったバーバンクサウンドを代表に、ロジャー・ニコルズの1STアルバムなどソフトロックの名盤に多く 携わっております。

76年の達郎さんソロ1st「サーカスタウン」のアレンジャー候補にニック・デカロの名前もありましたが、連絡が取れず叶わなかったそうです。
それほどまでに達郎さんが信頼を置く名手、ニック・デカロ。

(このあたりの話は2001年4月号のレコードコレクターズ ・ニック・デカロ特集ページに書かれております。
この回にはニック・デカロ関連アルバム15選として、ライ・クーダーやマリア・マルダーの作品紹介15選など、面白いトピック満載でおすすめです。)

また、90年に発表されたニック・デカロの3作目「ラブストーム」はナント9曲中7曲が山下達郎楽曲のカバーで構成。
ソフト&メロウなアレンジで90年代を代表する名作です。

「ラブストーム」(スプリンクラー)や「Silent Night Lonely Night (クリスマスイブ」をはじめ絶品カバーを多数収録しております。
特に「 ONLY WITH YOU」の美しすぎるカバーは必聴です。

こちらは当店での取り扱いはございませんが、ファンの方にはぜひ聞いていただきたい作品です。

代名詞の美しすぎるすとストリングスアレンジをはじめ、音楽への職人的な姿勢も達郎さんが影響を受けているのを感じます。
代表作イタグラを是非。


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リッキーリー・ジョーンズ/浪漫(オリジナル発売1979年)


タツローさんが「名盤中の名盤」と絶賛する、リッキーリー・ジョーンズによる1979年女性SSW大名盤。

筆者も高校生の時にレコード屋でジャケ買いをして、何度も聴いた大好きな作品です。
しかしタツローさんがここまで絶賛しているのは意外なタイトルでした。

レニー・ワロンカーとラス・タイトルマンのプロデュースで、こちらもニック・デカロが参加しております。

トム・ウェイツのガールフレンドであったことも知られSSW。

デビュー時から「ジョニ・ミッチェルの再来」や、「ローラ・ニーロとトム・ウェイツの私生児であるかのよう」と評されておりました。

大ヒットした1曲目「恋するチャック」に代表される、少し幼くキュートで自由奔放な唯一無二のヴォーカルスタイル。

そして本作のバッキングはランディー・ニューマンやスティーブ・ガット、ドクター・ジョンといった名手が多数参加しており完璧な仕上がり。
大絶賛の評判に負けない、まさに西海岸AORの魅力が詰まった傑作です。

また当時発売されたレコードは音質に定評があり、現在でもオーディオのシステムチェックに使用されるなど折り紙付きです。

なんとなく自由な感じが「僕の中の少年(1988)」の歌い方に影響を感じます。
内容、ジャケット、音質とすべてが最高峰の1枚です。


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山下達郎 / ON THE STREET CORNER 1~3(オリジナル発売1980年、1986年、1999年)


タツローといえばドゥーワップ!

1980年当時衝撃を与えた、一人アカペラ、多重録音で収録された名作シリーズ。

山下達郎が好んでいるオールディーズ、特にドゥーワップの曲を取り上げたカバー・アルバム集。

後に山下は本作について「『RIDE ON TIME』が1位になったら、こういうことをやろうと、僕はずっと待っていた。売れたら好きなことが出来る、という典型のような作品。とにかくドゥーワップやりたくてやりたくて…。Wikipedia ON THE STREET CORNER解説

スタンダードな名曲の名カバー満載で、達郎さんを知るだけでなく、オールディーズ入門にもGOODなラインナップです。

「ユー・ビロング・トゥー・ミー」「クローズ・ユア・アイズ」など現在でもまれにライブで披露される楽曲も収録。

オンスト3には、タツローさんによる名カバー「スタンド・バイ・ミー」を収録。

ネクストステップにぜひ聞いていただきたい作品です!
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まとめ


タツローさんが好き、影響を受けたと明言していた作品を少しですがピックアップしてみました。
趣味に幅が広いのは勿論、どれも色あせない名作揃いでしたね。

ここでは取り上げていない、タツロー・フェイバリットな作品もまだまだございます。


本特集を機にさらにルーツを掘ったり、より山下達郎を楽しむ手助けになれていたら幸いです。

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