男はつらいよ(寅さん)とは?

『男はつらいよ』とは、山田洋次監督による松竹の映画シリーズで、昭和の喜劇役者(コメディアン)にして名優・渥美清演じる「車寅次郎(寅さん)」が主人公の国民的映画です。

1969年の第1作公開から1995年までに全48作が制作され「一人の俳優が演じたもっとも長い映画シリーズ」としてギネスブックにも認定されています。(渥美清死去後に特別編で2作品が制作され、合計で50作に)

基本のストーリーや見どころは、決まったお決まりの展開、マドンナとの恋と失恋、人情味あふれる人間関係の3つ。

お決まりの展開

寅さんが柴又の実家「とらや(途中からくるまや)」にひょっこり戻り、家族と大喧嘩してまた旅に出る。

マドンナとの恋

旅先や地元の柴又で美しい女性(マドンナ)に一目惚れする。1作ごとにマドンナ役としてゲストの女優が演じている。

失恋と旅立ち

マドンナの気を引くため一生懸命尽くすものの、最後は身を引くかフラれてしまい、失意の中でまたトランク一つを持って旅立ってゆく。

節分
お決まりの展開こそ寅さんの魅力

浅丘ルリ子

出演作

  • 第11作『寅次郎忘れな草』1973年
  • 第15作『寅次郎相合い傘』1975年
  • 第25作『寅次郎ハイビスカスの花』1980年
  • 第48作『寅次郎紅の花』1995年
  • 第49作『寅次郎ハイビスカスの花 特別篇』1997年
  • 第50作『お帰り 寅さん』2019年

寅さんのマドンナ役といえば、真っ先に思い浮かぶのは「リリー」役の浅丘ルリ子。

旅回りの歌手という不安定で孤独なリリーと、テキ屋稼業のフーテンの寅さん。お互い似た境遇の渡り鳥ゆえに本音で語り合える「寅さん唯一の対等な理解者」ですが、距離が近づきすぎると照れや意地から喧嘩になる始末。

唯一結婚の約束まで交わした特別な存在ながらも、ついに決定的な関係にはならない絶妙な関係性として描かれました。

吉永小百合

出演作

  • 第9作『柴又慕情』1972年
  • 第13作『寅次郎恋やつれ』1974年

シリーズでは初となる同じ役(歌子)として2作品に登場し、初期の「男はつらいよ」に華を添えました。

『柴又慕情』では結婚や人生に悩む文学的で清楚な女性を、『寅次郎恋やつれ』では前作で結婚した夫を病気で亡くし、父親との確執や人生の岐路に立つ未亡人を演じました。

そのあまりの可憐な美しさに寅さんはメロメロになり上機嫌。歌子がとらやを訪ね共に家族団らんを楽しむ姿は、微笑ましくも少し切なさを感じさせる名シーンと言われています。

松坂慶子

出演作

  • 第27作『浪花の恋の寅次郎』1981年
  • 第46作『寅次郎の縁談』1993年

その圧倒的な美しさと情感豊かな演技でファンや批評家から高い評価を受けているのが、松坂慶子。

特に芸者・ふみ役を演じた第27作『浪花の恋の寅次郎』で寅さんの膝にすがりついて号泣するシーンは、シリーズ屈指の名場面として多くのファンが声を揃えて絶賛しています。その後の新世界ホテル主人・芦屋雁之助とのやりとりまでセットで観たいところ。

当時は人気の絶頂期、松竹の看板女優でありながら出演には消極的であったものの、会社に説得されて出演を決意し大ヒットへとつながったエピソードも。

竹下景子

出演作

  • 第32作『口笛を吹く寅次郎』1983年
  • 第38作『知床慕情』1987年
  • 第41作『寅次郎心の旅路』1989年

浅丘ルリ子に次ぐ多さとなる3度の出演を果たし、いずれも異なる役柄(完全な別人)のマドンナを演じています。

『口笛を吹く寅次郎』では寺の娘として古風で純朴な日本女性の美しさを、『知床慕情』では三船敏郎の娘役として、北海道・知床を舞台に生活の厳しさと重なるリアリティのあるヒロイン像を、『寅次郎心の旅路』ではウィーンを舞台に、海外での生活のなかで、寅さんの突飛な優しさに救われる孤独な現代女性を演じました。

竹下景子が演じるマドンナは、寅さんの破天荒な言動や不器用な好意を真正面から否定せず、包み込むような優しさで受け止めます。1980年代後半、日本が物質的に豊かになる一方で、どこか心の拠り所を見失っていた時代を反映し、その知的で寂しげな透明感が、少しずつ哀愁を漂わせてきた晩期の寅さんの存在感にフィットしていったのかもしれません。

太地喜和子

出演作

  • 第17作『寅次郎夕焼け小焼け』1976年

シリーズ最高傑作との呼び声も高い第17作。宇野重吉演じる日本画の巨匠・青観と寅次郎の交流、そして太地喜和子演じる「ぼたん」という名の美しく気っ風のいい芸者との情に厚いドラマが展開されます。

ぼたんと寅さんは、どこかリリーにも通ずる「裏街道を歩く者どうし」として抜群の相性を見せます。

はかなげな従来の箱入り娘的マドンナとは異なり、大輪の真っ赤な牡丹の花に例えられるような、気のいい芸者としての日常の自然体な色気や生活感のある喜怒哀楽を、当時文学座で円熟期にあった太地喜和子が確かな演技力で体現しています。

主な登場人物

ほぼ毎回のように映画に登場する主な人物たちです。

車寅次郎(渥美清)

テキ屋をしながら日本全国を歩く「フーテンの寅」。お調子者で情が深い。

さくら(倍賞千恵子)

寅さんの優しい妹。いつも寅さんを心配している。

おじちゃん・おばちゃん(森川信→松村達雄→下條正巳、三崎千恵子)

柴又で団子屋「とらや(途中からくるまや)」を営み、寅さんを温かく、時に厳しく見守る家族。

諏訪博(前田吟)

さくらの夫。とらや裏手にある印刷工場で働く真面目なサラリーマン。

満男(吉岡秀隆)

博とさくらの息子。シリーズ後半では成長した彼の恋や悩みも描かれる。

御前様(笠智衆)

柴又帝釈天の住職。人格者であり、幼いころからの寅次郎の理解者。

まとめ

他にも、第10作『寅次郎夢枕』の八千草薫、第12作『私の寅さん』の岸惠子、第22作『噂の寅次郎』&第34作『真実一路』の大原麗子、第29作 『寅次郎あじさいの恋』のいしだあゆみなど、印象深いマドンナ役を演じた女優さんには枚挙に暇がありません。

「男はつらいよ(寅さん)」の魅力は、観る人によって様々。是非、マドンナ役という軸で全50作を見直していただいて、新たな寅さんの楽しみ方に触れてみてください!