芥川賞受賞作
「ブラックボックス」砂川文次
ずっと遠くに行きたかった。今も行きたいと思っている。自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。気鋭の実力派作家、新境地の傑作。直木賞受賞作 (2作)
「塞王の楯」今村翔吾
幼い頃、落城によって家族を喪った石工の匡介。彼は「絶対に破られない石垣」を造れば、世から戦を無くせると考えていた。一方、戦で父を喪った鉄砲職人の彦九郎は「どんな城も落とす砲」で人を殺し、その恐怖を天下に知らしめれば、戦をする者はいなくなると考えていた。秀吉が死に、戦乱の気配が近づく中、琵琶湖畔にある大津城の城主・京極高次は、匡介に石垣造りを頼む。攻め手の石田三成は、彦九郎に鉄砲作りを依頼した。大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、信念をかけた職人の対決が幕を開ける。ぶつかり合う、矛楯した想い。答えは戦火の果てに―。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、圧倒的戦国小説!
「黒牢城」米澤穂信
「おぬしならばこの曲事を解ける」本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。
第166回芥川賞候補作一覧(掲載誌)
砂川文次「ブラックボックス」(「群像 2021年8月号」)石田夏穂「我が友、スミス」(「すばる 2021年11月号」)
九段理江「Schoolgirl」(「文學界 2021年12月号」)
島口大樹「オン・ザ・プラネット」(「群像 2021年12月号」)
乗代雄介「皆のあらばしり」(「新潮 2021年10月号」)
第166回直木賞候補作一覧
今村翔吾「塞王の楯」米澤穂信「黒牢城」
逢坂冬馬「同志少女よ、敵を撃て」
彩瀬まる「新しい星」
柚月裕子「ミカエルの鼓動」