芥川賞受賞作(2作)
「この世の喜びよ」井戸川射子
幼い娘たちとよく一緒に過ごしたショッピングセンター。喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。かつての子育ての日々を思い出す女性―「この世の喜びよ」。ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦―「マイホーム」。父子連れのキャンプに叔父と参加した少年―「キャンプ」。「荒地の家族」佐藤厚志
元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点なのか―。あの災厄から十年余り、生活も仕事道具も攫われ、妻を喪った男はその地を彷徨い続けた。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。直木賞受賞作 (2作)
「地図と拳」小川哲
「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野...。奉天の東にある“李家鎮”へと呼び寄せられた男たち。「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。第13回山田風太郎賞受賞作。「しろがねの葉」千早茜
戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と秘められた鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は意気阻喪し、庇護者を失ったウメは、欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出された―。繰り返し訪れる愛する者との別れ、それでも彼女は運命に抗い続ける。第168回芥川賞候補作一覧
安堂ホセ「ジャクソンひとり」井戸川射子「この世の喜びよ」
グレゴリー・ケズナジャット「開墾地」
佐藤厚志「荒地の家族」
鈴木涼美「グレイスレス」
第168回直木賞候補作一覧
小川哲「地図と拳」千早茜「しろがねの葉」
一穂ミチ「光のとこにいてね」
凪良ゆう「汝、星のごとく」
雫井脩介「クロコダイル・ティアーズ」